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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第6部

    蒼天剣・九悩録 3

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    晴奈の話、第323話。
    ドミニクの「九」悩。

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    3.
     バート班、フォルナ班が到着した次の日に、ジュリア班も無事到着した。
    「みんな無事なようで、安心したわ」
     他2班が先に到着していたことを知り、ジュリアは1日前倒しで情報交換と作戦会議を行うことにした。
    「お元気そうで何よりですわ」
    「だな」
     ジュリアの労いに、フォルナとバートが応える。
    「休まれなくて良かったのですか?」
    「ええ、先にみんなと会っておきたかったから。……実は私たちの班、襲撃されたのよ」
    「えっ!?」
    「お前もか、ジュリア」
     フォルナの反応とバートの言葉に、ジュリアは小さくうなずいた。
    「やっぱりみんな襲われたようね。それが気になっていたから。ちなみに敵は、どんな構成だった?」
    「リーダー格が1名に、兵士が8名だった」
    「わたくしのところも同じでした。全員何かしら、強化されていたようですわ」
    「ふむ。……私のところはリーダー格が2名、恐らく兵士の数は16名と言うところね」
    「ジュリアのところだけ、2部隊が投入されてたのか?」
    「いえ、もしかしたら……」
     言いかけたジュリアは、フォルナの視線に気付いた。
    「……」
     その眼差しはまるで、これから言おうとしていたことを止めさせようとしているようだった。
    「……もしかしたら、何だ?」
    「……いえ。そうね、恐らくこの9名を総括している私のところだけ、重点的に攻めてきたのかも知れないわ。
     それで、何か情報は手に入った?」
     そう言って、ジュリアはソロンクリフで手に入れた小瓶をテーブルに置いた。
    「私たちは敵と接触した際に、この薬を手に入れたわ。何の薬かまでは分からないけれど」
    「わたくしのところは残念ながら、特に収穫なしですわ」
    「俺はかなりすごいものを手に入れたぜ」
     そう言ってバートは、得意げにノートをテーブルに置いた。
    「それは?」
     ジュリアが尋ねると、バートはニヤリと笑った。
    「殺刹峰の幹部と、出資者の情報だ」
     バートはノートを広げ、全員に見るよう促した。
    「RS作戦って聞いたことあるか?」
    「RS? いえ、存じ上げませんわ」
     フォルナは首を横に振る。ジュリアも知らないらしく、小首をかしげている。ここでシリンが、自信たっぷりに手を挙げた。
    「フェリオの名字? ほら、ロードセラーやし、RSって、ならへん、……かなー、なんて」
     あまりに的外れすぎたため全員に無視されてしまい、シリンはしょんぼりと肩を落とした。
     と、話題に挙げられたその当人が、ポンと手を挙げる。
    「聞いたことがあるような……。中央政府軍が昔、カツミを暗殺しようとしたとかしなかったとか、そんなうわさを聞いた覚えがあるっス。その時の作戦名の一つが、RSとか何とか」
    「そうだ。カラスのように真っ黒な悪魔、カツミを仕留める作戦――それがRaven Shoot、通称『RS作戦』だった」



     双月暦499年、秋。
    「ま、参った!」
     二人の男が、とある演習場で剣術の試合を行っていた。一方は、長髪を後ろで束ねた央南人。もう一人は央北人。口ヒゲと四角い顔が印象的な、筋骨隆々とした青年だった。
    「ふふふ……」
     勝負に負けたのは央南人の方だった。両手に一振りずつ持っていた刀を弾かれ、相手の剣が首に当てられており、そこからの逆転はもはや不可能だった。
    「勝負あったな、シマ」
    「参った、参った。……強すぎるぞ、ドミニク」
     ドミニクと呼ばれた口ヒゲの男は剣を納め、シマと呼んだ央南人に手を差し伸べた。
    「これで9戦9勝、私の圧勝だな」
    「……残念だ。これでおしまいとは」
     シマはドミニクの手を借り立ち上がりながら、小さくため息をついた。
    「おしまい?」
    「……実は俺、軍を抜けるつもりなんだ。故郷に戻って、剣術道場でもしようかと思う」
    「そうか。……9の呪いだな」
     ぼそっとつぶやいたドミニクに、シマは首をかしげる。
    「え? 何だ、9の呪いって」
    「私の宿命と言うか、何と言うか」
     ドミニクは地面に足で、「9」と書く。
    「私の生まれた日は9月9日。9歳の時に母が亡くなり、19歳の時に父も亡くなった。共に戦った者とは、十度相見えることが無い。そして君との対決も、9回目で幕切れだ」
    「それで9の呪い、か」
    「私は9が付くものに、呪われているのだろうな」
    「……じゃあ29歳の今年は、何かあったのか?」
     恐らくシマは、「もう年末も近い。何も起きなかったと言うことは、呪いなどなかったのだ」とでも言って、元気付けようとしたのだろう。だが、ドミニクはコクリとうなずいた。
    「……ある非公式チームに参加することになった。『黒い悪魔』を討つのだそうだ」
     それを聞いて、シマの顔がこわばった。
    「……そうか。……呪い、か」
     うつむいたシマに、ドミニクは「そうだ」とだけ返した。
     シマが落胆するのも無理はなかった。その任務は「冥府の土を集めてこい」と命令されるのと、何ら変わりないものだったからである。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    欧米における「13」や、東アジア圏における「4」など、
    数字に厄や不運が潜んでいるという考え、
    通称「忌み数」は世界中で最も一般的、日常的な信仰の一つ。
    大企業、国家クラスでさえ避けようとしているくらいですから、
    個人の運命を丸ごと決定付けてしまう、
    と信じ込む人が居ても不思議ではないかな、と。

    NoTitle 

    呪いが存在するかどうかは知りませんけどね。
    厄とかそういうのは日本人は結構信じますよね。
    あの織田信長も伊勢神宮に参拝していたらしいですからね。
    時の運も大切。
    それがあるのかもしれませんね。
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