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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第6部

    蒼天剣・藍色録 1

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    晴奈の話、第330話。
    偽者は誰でしょう?

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
    「偽者がいる、と?」
    「ええ。少なくとも今、上に1名偽者が紛れ込んでいらっしゃいますわ」
     フォルナの言葉に、晴奈たちは目を丸くした。
    「だ、誰だ?」
    「それを言う前に、……皆さん。フェリオさんとナラサキさん、バートさんが本物かどうか、確認していただきたいのですけれど」
    「エランは? 聞かへんの?」
     まだ事態が呑みこめていないシリンに、フォルナはにっこりと笑って首を振る。
    「わたくしが既に確認していますわ」
    「そっかー。……んじゃ、えーと、どないして聞いたらええんかな?」
    「そうですわね、二人の間でしか知りえないことを質問してくだされば」
    「あいあい」
     シリンはコクコクとうなずき、立ち上がろうとする。
    「待って、シリン」
    「ん?」
    「今聞いてはいけませんわ。偽者がいる、と言ったでしょう?」
    「うん」
    「偽者にそんな質問をしていることを知られたら、警戒させてしまいますわ。
     変に警戒され、行動でも起こされてしまえば、一緒にいらっしゃるフェリオさんにもご迷惑がかかってしまいますわ」
     フォルナに優しく説明され、シリンは素直にうなずいた。
    「あー、そーやんなー。そんならやー、後で二人っきりになった時とかの方がええんかな」
    「ええ、その時に」
     ジュリアは時計を見て、席を立ち上がる。
    「そろそろ休憩も終わりね。……気を付けて会議に臨むとしましょう」
    「ええ」
     会議の場に戻ると、横になっていたバートがゆっくりと身を起こした。
    「お……、戻ってきた」
    「ええ。さあ、会議の続きよ。
     敵の狙いらしきものは見えてきた。でも私たちはまだ、肝心なものを見つけていない」
    「敵の本拠地、だね?」
     楢崎の答えに、ジュリアはコクリとうなずく。
    「ええ、その通りよ。まだ私たちは、敵がどこから来ているのかも、どこで待ち構えているのかも分かっていない。これでは到底、敵を倒すのは不可能だわ。
     最優先事項は『敵の本拠地を探すこと』、この一点よ」
     その後も細々とした意見調整を行い、今回の会議は終わった。



     その夜、女性陣はもう一度食堂に集まった。
    「確認できたわ。バートは本物よ」
    「あたしと晴奈も確認してきたわ。瞬二さんも確かに本物だった」
    「フェリオも本物やったでー」
     それぞれの返答を聞き、フォルナを除く全員がけげんな顔をした。
    「……え?」
    「全員、本物?」
    「どう言うことかしら、フォルナさん?」
     口々に尋ねてくる四人に、フォルナはにっこりと笑って場を静めさせた。
    「落ち着いて、皆さん。……わたくしも、三人は本物だと思っておりましたもの」
    「……?」
     四人が静かになったところで、フォルナは説明を始めた。
    「まず、ジュリアさんの報告を聞いた時、皆さんもこう考えたことでしょう――『なぜジュリア班にだけ、敵が2部隊も現れたのか?』と」
    「ああ、それは確かに」
    「実のところ、わたくしたちとバート班にも、もう1部隊来ていたのでしょう」
    「え……?」
     フォルナは紙に、「フォルナ」「バート」「ジュリア」と名前を書き、丸で囲んだ。
    「わたくしが敵の司令官ならば、こう考えますわ。『相手は公安と、闘技場の闘士たちだ。半端な対処では、返り討ちもありうる』と」
     丸で囲んだ名前に、それぞれ長い矢印と短い矢印を書き込む。
    「ですから、始めから全ての班に2部隊ずつ送っていたのではないでしょうか? もし1部隊が打撃を受け、窮地に陥っても、もう1部隊が何らかのフォローをする。これならば、1部隊ずつ送るよりももっと、確実性が増しますわ」
    「そりゃま、確かにそーよね。でも他の班はいないって……」
     小鈴の指摘に、フォルナは短い矢印を消し、長い矢印と向かい合うように矢印を書き直した。
    「一方は本隊、もう一方は支援部隊と考えれば、説明が付けられますわ。
     ジュリア班の場合は本隊が窮地に陥ったので、やむなく支援部隊が姿を見せた。そしてバート班は、本隊からバートさんを逃がす形で、支援部隊が配置されていたのでは無いでしょうか?」
    「どう言うことかしら?」
     ジュリアの問いに、フォルナはノートの絵を描きながら答える。
    「あの情報――バートさんが老人から得たと言うノートが、敵に用意されたものだとは考えられませんかしら?」
    「……確かに、できすぎた話だとは思ったわね。敵から逃げるうちに転がり込んだ家で、敵の情報が手に入るなんて」
    「でしょう? その老人が、支援なのではないかと」
    「じゃあ、あの情報は偽物ってコト?」
     小鈴の考えを、ジュリアが否定する。
    「それは……、考えられなくは無い。でも、ノートの内容と過去に起こった事件の詳細を比較して考えれば、非常に信憑性があると思うわ。まるっきり偽物とは、言い切れないわね」
    「わたくしも本物だと思っておりますわ。……でなければ」
     次に出たフォルナの言葉に、ジュリアの背筋に冷たいものが走った。
    「罠に誘い込めませんでしょう? 『エサ』が本物だからこそ、魚が釣れると言うものですわ」
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    偽物を偽物と判別するには、本物の存在が不可欠ですね。
    悪魔の証明にしても、比較できる対象が存在しないために、
    その証明・立証を困難にしているところがありますし。

    それに比べれば、今回の偽者探しはかなり簡単かも。
    フォルナは以前の経験から、本物との違いが分かっているわけで。

    NoTitle 

    かの名作家、シェークスピアも複数いたという逸話もありますけどね。どうなんでしょうね。一人と見せかけて、実は複数の集合体・・・というのは良くある話ですよね。偽者か本物かの区別はつきにくいときもありますよね。
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