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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第2部

    蒼天剣・逢妖録 1

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    晴奈の話、36話目。
    妖怪話と、現代っ子の反応。

    1.
     双月暦512年、暮れ。
     央南中部ではある「化物」のうわさが広まっていた。姿は白い大狐で人語を解し、魔術を操り、人里離れた人家や旅人を狙うと言うのだ。



    「へぇ」
     柊が手紙を読み終わり、驚いたような声を漏らした。
    「晴奈、良太。ちょっとこれ、見てみて」
    「はい、何でしょうか?」
     精神修練の一環として、共に写本をしていた晴奈たちは、師匠の差し出す手紙を手に取り、読んでみた。
    「……え? 狐の、……妖怪、ですか?」
    「冒頭からまた、胡散臭い話ですね」
     晴奈も良太も、けげんな顔で柊に応えた。
    「あの、良く読んでみるとこれ、先生のご友人からの手紙ですよね。助けて欲しい、と書かれているのですが……」
     良太の質問に、柊は困ったような顔でうなずいた。
    「そうなの。何でも、彼がいる街でも被害が出たらしくって。彼が率いている自警団でその妖怪を探して捕まえよう、って言うことになったらしいの。
     それで腕の立つ人が欲しいから、来てくれないかって言うんだけど」
    「はあ……」
     話を聞いた晴奈は写本に戻りながら、率直な意見を述べた。
    「胡散臭いにも、程がありますね」
    「そうですか?」
     意外そうな顔をした良太を見て、晴奈は少し呆れる。
    「そう思わないか? 確かに、困ったことが起きたから手を貸してくれ、と言うこと自体は特に不審でもない。
     私が胡散臭いと言っているのは、妖怪などと言う表現だ」
    「表現? どう言う意味かしら」
     今度は柊が尋ねる。
    「妖怪などいるわけがありません。何しろ私はこれまで一度も、そんな奇怪で非現実的なものを見たことが無いですし」
    「でもほら、黒炎教団の神様とか。300年生きてるって言うし」
     良太の意見も、晴奈はにべも無く否定する。
    「だからそんなもの、私は見たこと無い。知り合いが見たとは言っているが、私自身が確かめたわけでは無いしな」
    「ああ、なるほどね。……うーん」
     晴奈の言い分を聞いて、柊は腕を組む。
     間を置いた後、ゆっくりとした口調で、晴奈と良太に説明し始めた。
    「えーと、ね。晴奈、誤解してると思うんだけど、……いるのよ、実際」
    「え?」
    「神話の時代から、数多の化物がそこら中に存在したと言われているわ。
     天帝教の英雄たちが竜や巨大な狼に襲われ、討伐したと言うおとぎ話を初めとして、その手の話は枚挙に暇が無い。
     でも文明が進むにつれて、そう言った話は少なくなっていった。これは人間が住む地域、生活圏が、そう言った化物の棲む地域に入り込み、侵食したせい。
     だから結果として、その場所にいた化物は討伐、淘汰されて、とっくの昔に消滅しているわ」
    「まあ、そう言う話であればまだ、うなずけます。
     しかしその話を前提にしたとしても、どっちにせよ、既にそんなものはこの世からいなくなった。そう考えられますよね?」
     晴奈の反論に、柊は首を振った。
    「いいえ、まだ世界全域に人間の手が入ったわけじゃないもの。
     この央南に限っても、屏風山脈は峠道から外れれば異世界も同然だし、あちこちの森や近海にも、人間が入り込めない場所はたくさんあるわ。
     だから、まだ駆逐されていない化物、妖怪は、確実にいるのよ。そう見えないのは、そんなところに踏み行ったことが無いからよ。
     これまでの旅も、なるべく安全なところを選んだわけだし」
    「そんなもの、……ですか」
     そう説明されても、まだ晴奈は腑に落ちない。それを察したらしく、柊がすっと立ち上がった。
    「じゃ、証拠を見せてあげる」
    「証拠?」
     柊はいきなり、上着を脱ぎ始めた。良太が素っ頓狂な声を出し、飛び上がる。
    「え、ちょっ、先生!?」
    「ちゃんと下は着てるから。……ほら」
     上着を脱ぎ、肌着をへその上までめくった柊を見て、晴奈たちは絶句した。
    「……!」「その、傷は」
    「刀傷には見えないでしょ?」
     どう見ても、大型獣の爪痕――それが腰から鳩尾の下にかけて、柊の右半身に付いていた。
    「10年くらい前、友人と旅をしてた時に付けられたんだけどね。あの屏風山脈を越える時に、うっかり峠道から外れてしまって。で、襲われたの。
     わたしは大ケガを負うし、魔術師だった友人も杖を折られちゃうし。下手をすれば死んでたところだったわ」
    「……」
     良太は食い入るように、柊の傷痕に見入っている。晴奈は恐る恐る尋ねてみた。
    「その、化物とは」「あら、聞きたいの? 嘘だって言ってたくせに」
     柊は服を着直しながら、珍しく恐ろしげな笑みを浮かべて尋ね返す。
    「……いえ、やめておきます」
     その笑い方があまりにも怖かったので、晴奈は口をつぐんだ。

     ちなみに良太は柊を見つめたまま、放心していた。よほど柊の肌着姿が強烈だったらしい。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2008.10.08 転載
    2016.02.11 修正
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    NoTitle 

    そんなこと言ってると斬られますよw

    NoTitle 

    v-402もう一押しだ
    師匠!まだ妖怪が信じられません
    もっと脱いでください

    NoTitle 

    DE・波瑠間さま
    近日中に「火紅狐 第6部」の執筆が終わりそうなので、もう少ししたら取り掛かれそうです。
    お楽しみに!

    番外編に期待!! 

    黄輪さま    『番外編』を執筆なさる!? 素晴らしい―― 柊お姐さまと新しいキャラの活躍に期待します!
    ―― はよう、読みたい!!

    NoTitle 

    DE・波瑠間さま
    たまりませんねぇ、強くてかっこいい女の子。
    良太くんには刺激が強すぎたみたいですが。

    ちなみに現在構想中の番外編、ここで触れた話を元にしようかなーとか考えている最中です。
    執筆中の「火紅狐 第6部」が終了次第、書いて行こうかな、と。

    ああっ!たまらない!! 

    黄輪さま  つ、遂に柊さんの脱衣シーンが登場!そりゃ、良太が卒倒しそうになるのも頷けますよ。
    勝手に妄想してコーフンしてます!(変態!!)

     これだから、強くて美しい女性の登場する小説はたまらない!!
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