FC2ブログ

黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第2部

    蒼天剣・逢妖録 2

     ←蒼天剣・逢妖録 1 →蒼天剣・逢妖録 3
    晴奈の話、37話目。
    三人旅。

    2.
     ともかく柊は友人からの願いを受け、手伝いのために晴奈を、そして後学のために良太を連れ、友人のいる央南中部の村、英岡(えいこう)を訪ねた。
    「やあ、良く来てくれたな雪乃」
     街に着くなり、あごひげを生やした道着姿の、短耳の男が出迎える。道着の家紋とたすきのかけ方からして、確かに同門であるらしい。
    「久しぶりね、謙」
     謙と呼ばれた男は晴奈たちを見て、軽く会釈した。
    「君たちが雪乃のお弟子さんかい? 俺は樫原謙と言う者だ。雪乃とは10年以上前に、一緒に稽古していた」
     晴奈はつられて挨拶を返す。
    「黄晴奈です。お初にお目にかかります、樫原殿」
    「ほう、今どき珍しい、堅い挨拶だな。よろしくお願い申す、黄殿、と」
     良太も晴奈に続き、挨拶をする。
    「桐村良太と言います。始めまして、樫原さん」
    「よろしく、桐村くん。……はは、やっぱり堅っ苦しいのはかなわん。黄くんも楽にしてくれていいからな」
    「さてと、謙。挨拶も済んだことだし、そろそろ例のこと、説明してもらっていい?」
     柊に問われた謙は「おう」と応え、街の方に向かって歩き出す。
    「ま、立ち話もなんだから。俺の家で話そう。飯も出すぜ」

     立ち話も、と言った割には、謙は家までの道中、しゃべり倒した。よほど旧友に会ったのが嬉しかったのだろう。
    「しっかし、雪乃は変わんないな。やっぱり、エルフだからかな」
    「ふふ、そうね。謙はどうなの? ヒゲが生えてるくらいで、見た目はそんなに変わってないけれど」
    「いや、やっぱり34ともなるとどこかしら、おじさん臭くなっちまうみたいだな。嫁さんにもよく、からかわれてるよ」
    「ああ、そう言えば結婚したのよね。奥さん、元気なの?」
     謙は嬉しそうに声をあげる。
    「おお、元気元気。もう4年経つけど、いまだに熱々だよ」
    「あら、のろけちゃって」
     柊は口に手を添え、クスクスと笑う。
    「雪乃はどうなんだ? そろそろ、いい相手はできたか?」
    「ぅへ?」
     謙に尋ねられた柊から、妙な声が出る。
    「はは、まだいないみたいだな。っつーか、オクテなところ、まだ治ってないんだな」
    「い、いいじゃない、わたしのことは」
     柊は顔を赤らめ、パタパタと手を振ってごまかした。
    「あ、そこを右だ」
     謙が指し示した方向に、小ぢんまりとした家が立っている。
    「あ、嫁さんに雪乃たちのこと、言ってくるから。ちょっと待っててくれ」
     謙は一足先に家へ入っていった。晴奈たち三人はその間、謙について話す。
    「大分、気さくな方ですね」
    「ええ、とっても話しやすい人よ。腕も立つし、塞では人気者だったわ」
    「そうなんですか……」
     なぜか、それを聞いた良太の顔が曇る。
    「やっぱり、その、先生も強い方を好まれますか?」
    「え? うーん、まあ、どっちかって言えば、だけど。何でそんなことを?」
    「あ、いえ」
     そうこうするうちに謙が、「狐」の女性を伴って戻ってきた。
    「待たせたな、みんな。彼女が俺の嫁さんだ」
     紹介された狐獣人の女性は、柊たちにぺこりと頭を下げた。
    「はじめまして、棗(なつめ)と申します。主人がお世話になっております」
     こんな田舎には多少場違いにも思える恭しい挨拶に、柊たちも同じように頭を下げ、挨拶を返す。お互いの紹介が済んだところで、謙がその場を締めた。
    「じゃ、そろそろ家で話をしよう。飯は、その後で」

     家に入ってすぐ、棗が台所の方に向かう。
    「ご飯の用意をいたしますから、その間……」
    「おう。見とくわ」
     謙がひらひらと手を振り、何かを了承する。謙は柊たちを居間に案内した後、「ちょっと待っててくれ」と言ってどこかに消えた。
    「見とく、って何でしょう?」
     晴奈の問いに、柊はクス、と笑う。
    「そりゃ新婚さんで、奥さんが忙しい間見るものって言ったら」
    「あ、なるほど」
     そこで晴奈も良太も、答えに行き当たる。
     間も無く柊たちの予想通りに、謙が「狐」の幼児を抱きかかえながら戻ってきた。
    「いや、すまんすまん。待たせたな」
    「いえいえ。……わあ、可愛い」
     柊は子供の顔を覗き込み、その頭を優しく撫でる。自分の子をほめられた謙は、気恥ずかしそうに笑う。
    「へへ……」
    「『狐』だけど、顔は謙に似てるわね。名前は?」
    「桃って言うんだ。ほら、耳と尻尾がちょっと桃色だろ?」
    「なるほどねー」



     余談になるが、この世界にはいわゆる「ハーフ」が存在しない。
     例えば長耳と短耳が結婚し、その子供が生まれたとしても、その子供の耳が足して2で割った大きさ、と言うことは無い。
     顔つきや体格など若干の遺伝は生じるが、その子供は短耳か、長耳のどちらかにしかならない。これは他の種族に対しても、同様である。
     短耳の謙と狐獣人の棗の子である桃も、顔立ちは父親似だが、耳や尻尾と言った身体的特徴は、母親のそれである。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2008.10.08 転載
    2016.02.11 修正
    関連記事


    ブログランキング・にほんブログ村へ





    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    総もくじ 3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    もくじ  3kaku_s_L.png DETECTIVE WESTERN
    もくじ  3kaku_s_L.png 短編・掌編
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png 携帯待受
    もくじ  3kaku_s_L.png 今日の旅岡さん
    総もくじ  3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    • 【蒼天剣・逢妖録 1】へ
    • 【蒼天剣・逢妖録 3】へ

    ~ Comment ~

    NoTitle 

    桃ちゃんはストライクゾーンからめっちゃ外れてるかな。
    良太くんは年上属性ありますし。

    NoTitle 

    桃ちゃんを見て良太がまた妄想の世界に入るぞv-398
    管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    トラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【蒼天剣・逢妖録 1】へ
    • 【蒼天剣・逢妖録 3】へ