「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第6部
蒼天剣・想起録 6
晴奈の話、第371話。
援軍と、卑怯者の末路。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
6.
その時だった。
「みんな、通路の端に! しゃがんで!」
「え……!?」
「早く!」
言われるがまま、五人は体勢を低くする。
それと同時にバズ、バズッと言う重たい破裂音が、五人の背後から聞こえてきた。
「今の音……、散弾銃!?」
「遅くなっちまいましたっス、すみません先輩!」
「え? な、その声、まさか……!?」
バートが振り返ると、そこにはヨロヨロとふらつきながら散弾銃を構えるフェリオと、それを支えるフォルナが立っていた。
「グボ、ゴボアアアア!」
フェリオが放った大量の散弾は、目の前にいた元クラウンの胸に大穴を開けた。元クラウンは血ヘドの混じった叫び声を上げ、うずくまる。
そして奥からも、同様の叫びがこだましてきた。どうやら弾は元クラウンの体を貫通し、背後のモンスターにもダメージを与えたようだ。
「先輩、これどうぞっス!」
柵越しに、フェリオが散弾銃を渡してくる。
「……ありがとよ、フェリオ、それからフォルナ!」
「礼には及びませんわ。……それからエラン、あなたにも」
「あ、ありがとうございます」
「ですから今は礼など……、あら?」
「は、はい……?」
フォルナはまじまじとエランの顔を見つめ、クスクスと笑い出す。
「随分お顔が精悍になったようですわね。帰ったらそのおヒゲ、整えてらしてはいかがかしら?」
「え、……ええ、そうしてみます」
「お勧めいたしますわ。……さあ、反撃いたしましょう!」
フォルナは杖を構え、元クラウンに向かって石つぶてを放つ。
「『ストーンボール』!」
「ゴホ、ゴア、ゴッ」
フェリオ、バート、エラン、そしてフォルナによる散弾と土の術のラッシュで、ついに元クラウンが倒れる。
そして背後にいたモンスターたち、そしてそれらを率いていたネイビーにも、ダメージが及び始めたらしい。
「う……っ」
明らかにモンスターのものではない、人間の叫び声が聞こえてきたからだ。
「あそこか!」
バートは散弾銃から拳銃に持ち替え、わずかに残っていた徹甲弾を込めて、悲鳴のした方向にきっちり、照準を合わせる。
「クソみてーなことしやがって……! ブッ飛べッ!」
バートはいまいましげに言い放ちながら、引き金を絞る。
放った徹甲弾は正確にネイビーの胸を捉え、通路の奥深くに弾き飛ばした。
「柵のロックは、こっちのボタンで、解除できたっぽいっス。ただ、上げるボタン押しても、全然動かなくて」
柵越しに申し訳なさそうな顔で説明するフェリオに、小鈴がこう返す。
「瞬二さんが力任せにガチャガチャやってたせいじゃない?」
「ははは……、面目無い。でもロックが外れてるんなら、後は何とかできるかな」
楢崎は苦笑しつつ、柵を持ち上げる。
「ふぬっ、ぬおおお……ッ!」
柵が上まで上がったところで、ガチャ、と音を立て、柵は元通りに天井へ納まる。
「助かった、ロードセラーくん。……それから、ファイアテイルくんにも」
「そう言ってただけて光栄ですわ、ナラサキさん」
楢崎とフォルナは互いに複雑な表情を浮かべつつも、ガッチリ握手した。
「フェリオ、お前大丈夫なのか? こんなところまで来て……」
バートが座り込んだフェリオに尋ねると、フェリオは青い顔をしながらもニヤリと笑った。
「そりゃ、辛いっスけど、……先輩たちに任せて、自分はのんびりなんて、そっちの方が気分的に辛いっスからね」
「……ったく」
バートはフェリオの前にしゃがみ込み、腕を取る。
「さっき、ドクター・オッドから解毒剤を手に入れた。これを注射すれば……」
「……ありがとうございます、先輩。何度も、助けてもらって」
「後輩助けなくて、先輩面できっかよ、はは……」
薬を打たれてからしばらくして、フェリオの顔色が若干良くなってきた。
「あー……、何か、体が軽くなったような気がします」
「つっても、今まで衰弱してたんだ。……あんまり無茶すんなよ?」
「了解っス」
小休止するうちに、全員の士気もふたたび上がってきた。
「さあ、危険も去ったことだし、黄くんたちに合流しよう」
「ええ、そーね。バートの話じゃ今、大混乱してるって言うし、急いで攻めましょ」
フェリオ、フォルナを加えた七名は、晴奈たちの向かった先へと足を向けた。
小鈴たちが離れてから、数分後。
「……ぐ……はっ……」
閉ざされた通路の奥から、うめき声が聞こえてきた。
「くそ……」
ゆっくりと起き上がったネイビーは、胸を探る。
「……う、がっ!」
胸の奥から、ポトリと徹甲弾が落ちた。
「ふ、ふっふ……、分かってない、みたいだ。……僕は、人形なんだと、何度言えば」
ネイビーはヨロヨロと立ち上がり、柵へと歩き出す。
「一度だけじゃなく、二度も僕を虚仮にしやがって……! 今度こそ、皆殺しに……」
だが、何かに足首をつかまれ、ネイビーは前のめりに倒れる。
「うわっ!? ……な、なんだ?」
「……グ……ゴ……」
死んだと思っていたモンスターたちが、ネイビーの周囲に群がり始めた。それを見たネイビーは、ふたたび笑い出す。
「あ、ああ! まだ生きていたのか! ……ふふ、ふふふふ。よし、これなら確実にあいつらを……」
だが、喜びかけたところで、ゴリッと言う音が聞こえてきた。
「え……?」
ネイビーが音のした方を見ると、血まみれになったモンスターが自分の足首を食いちぎっていた。
「なっ、何をする!?」
「……ガ……グゥ」
毒のあるネイビーの体を、左膝のところまで食いちぎったモンスターは、どさりと倒れ、動かなくなる。
「や、やめろ! 動けなくなるじゃないか!」
だが、モンスターたちは止まらない。ネイビーの左脚が食われ、右脚にも食いつかれる。
「おい、よせ! 僕は、僕は餌じゃ……!」
「……グ、……ゴフ」
ネイビーの体を食ったモンスターたちは、次々に倒れていく。続いてネイビーの両手も食われ、胴にかじりつかれる。
「やめろ……! やめ……」
バキ、と音を立てて、ネイビーの頭が噛み砕かれた。
蒼天剣・想起録 終
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その時だった。
「みんな、通路の端に! しゃがんで!」
「え……!?」
「早く!」
言われるがまま、五人は体勢を低くする。
それと同時にバズ、バズッと言う重たい破裂音が、五人の背後から聞こえてきた。
「今の音……、散弾銃!?」
「遅くなっちまいましたっス、すみません先輩!」
「え? な、その声、まさか……!?」
バートが振り返ると、そこにはヨロヨロとふらつきながら散弾銃を構えるフェリオと、それを支えるフォルナが立っていた。
「グボ、ゴボアアアア!」
フェリオが放った大量の散弾は、目の前にいた元クラウンの胸に大穴を開けた。元クラウンは血ヘドの混じった叫び声を上げ、うずくまる。
そして奥からも、同様の叫びがこだましてきた。どうやら弾は元クラウンの体を貫通し、背後のモンスターにもダメージを与えたようだ。
「先輩、これどうぞっス!」
柵越しに、フェリオが散弾銃を渡してくる。
「……ありがとよ、フェリオ、それからフォルナ!」
「礼には及びませんわ。……それからエラン、あなたにも」
「あ、ありがとうございます」
「ですから今は礼など……、あら?」
「は、はい……?」
フォルナはまじまじとエランの顔を見つめ、クスクスと笑い出す。
「随分お顔が精悍になったようですわね。帰ったらそのおヒゲ、整えてらしてはいかがかしら?」
「え、……ええ、そうしてみます」
「お勧めいたしますわ。……さあ、反撃いたしましょう!」
フォルナは杖を構え、元クラウンに向かって石つぶてを放つ。
「『ストーンボール』!」
「ゴホ、ゴア、ゴッ」
フェリオ、バート、エラン、そしてフォルナによる散弾と土の術のラッシュで、ついに元クラウンが倒れる。
そして背後にいたモンスターたち、そしてそれらを率いていたネイビーにも、ダメージが及び始めたらしい。
「う……っ」
明らかにモンスターのものではない、人間の叫び声が聞こえてきたからだ。
「あそこか!」
バートは散弾銃から拳銃に持ち替え、わずかに残っていた徹甲弾を込めて、悲鳴のした方向にきっちり、照準を合わせる。
「クソみてーなことしやがって……! ブッ飛べッ!」
バートはいまいましげに言い放ちながら、引き金を絞る。
放った徹甲弾は正確にネイビーの胸を捉え、通路の奥深くに弾き飛ばした。
「柵のロックは、こっちのボタンで、解除できたっぽいっス。ただ、上げるボタン押しても、全然動かなくて」
柵越しに申し訳なさそうな顔で説明するフェリオに、小鈴がこう返す。
「瞬二さんが力任せにガチャガチャやってたせいじゃない?」
「ははは……、面目無い。でもロックが外れてるんなら、後は何とかできるかな」
楢崎は苦笑しつつ、柵を持ち上げる。
「ふぬっ、ぬおおお……ッ!」
柵が上まで上がったところで、ガチャ、と音を立て、柵は元通りに天井へ納まる。
「助かった、ロードセラーくん。……それから、ファイアテイルくんにも」
「そう言ってただけて光栄ですわ、ナラサキさん」
楢崎とフォルナは互いに複雑な表情を浮かべつつも、ガッチリ握手した。
「フェリオ、お前大丈夫なのか? こんなところまで来て……」
バートが座り込んだフェリオに尋ねると、フェリオは青い顔をしながらもニヤリと笑った。
「そりゃ、辛いっスけど、……先輩たちに任せて、自分はのんびりなんて、そっちの方が気分的に辛いっスからね」
「……ったく」
バートはフェリオの前にしゃがみ込み、腕を取る。
「さっき、ドクター・オッドから解毒剤を手に入れた。これを注射すれば……」
「……ありがとうございます、先輩。何度も、助けてもらって」
「後輩助けなくて、先輩面できっかよ、はは……」
薬を打たれてからしばらくして、フェリオの顔色が若干良くなってきた。
「あー……、何か、体が軽くなったような気がします」
「つっても、今まで衰弱してたんだ。……あんまり無茶すんなよ?」
「了解っス」
小休止するうちに、全員の士気もふたたび上がってきた。
「さあ、危険も去ったことだし、黄くんたちに合流しよう」
「ええ、そーね。バートの話じゃ今、大混乱してるって言うし、急いで攻めましょ」
フェリオ、フォルナを加えた七名は、晴奈たちの向かった先へと足を向けた。
小鈴たちが離れてから、数分後。
「……ぐ……はっ……」
閉ざされた通路の奥から、うめき声が聞こえてきた。
「くそ……」
ゆっくりと起き上がったネイビーは、胸を探る。
「……う、がっ!」
胸の奥から、ポトリと徹甲弾が落ちた。
「ふ、ふっふ……、分かってない、みたいだ。……僕は、人形なんだと、何度言えば」
ネイビーはヨロヨロと立ち上がり、柵へと歩き出す。
「一度だけじゃなく、二度も僕を虚仮にしやがって……! 今度こそ、皆殺しに……」
だが、何かに足首をつかまれ、ネイビーは前のめりに倒れる。
「うわっ!? ……な、なんだ?」
「……グ……ゴ……」
死んだと思っていたモンスターたちが、ネイビーの周囲に群がり始めた。それを見たネイビーは、ふたたび笑い出す。
「あ、ああ! まだ生きていたのか! ……ふふ、ふふふふ。よし、これなら確実にあいつらを……」
だが、喜びかけたところで、ゴリッと言う音が聞こえてきた。
「え……?」
ネイビーが音のした方を見ると、血まみれになったモンスターが自分の足首を食いちぎっていた。
「なっ、何をする!?」
「……ガ……グゥ」
毒のあるネイビーの体を、左膝のところまで食いちぎったモンスターは、どさりと倒れ、動かなくなる。
「や、やめろ! 動けなくなるじゃないか!」
だが、モンスターたちは止まらない。ネイビーの左脚が食われ、右脚にも食いつかれる。
「おい、よせ! 僕は、僕は餌じゃ……!」
「……グ、……ゴフ」
ネイビーの体を食ったモンスターたちは、次々に倒れていく。続いてネイビーの両手も食われ、胴にかじりつかれる。
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双月千年世界 目次 / あらすじ

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短編・掌編

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雑記

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今日の旅岡さん

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Re: NoTitle
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
いつも応援ありがとうございます。
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- #1500 黄輪
- URL
- 2013.01/06 01:21
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NoTitle
3部などでも似たようなことを書いてましたが、
悪役には悪役に、外道には外道にふさわしい死に方がある、
と言うことで。
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
悪役には悪役に、外道には外道にふさわしい死に方がある、
と言うことで。
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
NoTitle
意外に・・・・。いや、実際問題は死に際はかっこ悪いものというか、残酷というか・・・。まあ、こういう死に方するのもある意味華なのかもしれません。戦争の。闘争の。
こういう死に方はやはりドラマの中では必要なのかもしれませんね。
明けましてよろしくお願いします。
今年もよろしくお願いします。
こういう死に方はやはりドラマの中では必要なのかもしれませんね。
明けましてよろしくお願いします。
今年もよろしくお願いします。
- #1497 LandM
- URL
- 2013.01/03 22:05
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