「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第6部
蒼天剣・白色録 3
晴奈の話、第388話。
イメチェン?
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
「サイズがちょっと合わないかもしれないけど、我慢してね」
「ああ。ありがとう、助かった」
晴奈が目を覚まして、数分後。道着が衣服の用を足さなくなってしまったため、晴奈はキリアの部屋に行き、服を借りることにした。
「も、もうええか?」
キリアの部屋の前で待っていたヘックスが、申し訳なさそうな声をかけてきた。
「いいわよ」
「そ、そんじゃ、お邪魔するで」
顔を真っ赤にしたヘックスが、おずおずと入ってきた。晴奈も顔を赤くしつつ、尋ねてみる。
「……さっきの、見たか?」
「う、ううううん。み、見てへんよ、全然、うん」
「見たでしょ……。動揺しすぎよ」
「……ホンマ、すんません」
あまりにもおどおどとしたヘックスの態度に、晴奈はため息をついた。
「……いいさ、過ぎたことだ」
「それにしても、コウ」
キリアは洋服姿の晴奈を見て、感心したような声を上げる。
「似合ってるわね」
「そ、そうか?」
率直にほめられ、晴奈は気恥ずかしくなる。ほめた本人も、恥ずかしそうに口元をコリコリとかく。
「……まあ、こんな話をしている場合じゃなかったわね。
えっと……、私が持ってる武器、もう剣しかないんだけど、それでいい?」
「ああ、上等だ」
晴奈はキリアから剣を受け取り、装備する。
「大体の使い方は同じだろう?」
「ええ、まあ。ただ、刀に比べるとどうしても肉厚だから、切れ味は劣るわ。その分、打突に優れてはいるけれど」
「そうか。それだけ聞けば、十分」
晴奈は腰に提げた鞘から剣を抜き、軽く素振りしてみる。
「ふむ……。確かに少し、重心が違う。だが、……問題なし」
「……敵方のあなたにこんなお願いをするなんて、本当にみっともないけど」
キリアは深々と、晴奈に頭を下げる。
「フローラを、倒して。もう私たちは、あいつに付いて行こうなんて思えない」
「オレからも頼むわ。……今までオレたちは、正義のために頑張ってきたつもりやった。あんなヤツのために、頑張ってきたんちゃうんや」
「……相分かった。では、行って参る」
晴奈は兄妹に一礼し、部屋を出た。
一方、モールたちとバートたちは無事合流し、情報を交換していた。
「そっか、首領は倒したのか。……アンタが体、奪って」
「そーゆーコトだね」
「……すごく、違和感がありますわね」
「言うねぇ、帽子っ娘」
モールはクリスの体でクスクス笑いながら、バートたちが持ってきた情報を確認する。
「んで、あの筋肉と派手頭と小鈴が、別行動か。……良くないかも知れないね」
「え?」
「さっきから、嫌な気配が漂ってるんだよね。何と言うか、眠っていた怪物を起こしたような」
モールは帽子のつばを下げ、重々しい口調で語る。
「もしかしたらね。私らがこの場所に踏み込み、戦ったせいで、フローラは覚醒したのかも知れないね。
最初は少し、ヤバげな雰囲気しか出してなかった。正直、小物だとしか思ってなかったんだよね。
でもさっき、急に気配が濃くなったね。まるで何かを食い物にし、増長したように、そのヤバい空気が強まったんだ。そしてついさっきだけどね、もう一段階、ブワっと気配が膨らんだ。どうやら戦うごとに、急激に強くなっているらしいね。
まるでホワイトホール――無限にエネルギーを放出する、異空間からの穴のようだね。戦えば戦うほどその穴は広がり、加速度的にヤバさを増していく。
下手に交戦すれば、手に負えない怪物と化すかも知れないね。早いところ小鈴たちと合流しなきゃ、全滅も有り得るね」
「マジでか……」
バートがごくりとのどを鳴らす一方で、フォルナは本気にしていない。
「また、ご冗談を。わたくしたちには力強い仲間が、大勢いらっしゃいますでしょう?」
「その、仲間だけどね」
モールは帽子のつばを上げ、フォルナを見据える。
「晴奈と別行動を取った後、そのヤバい気配が強まったんだよ?」
「……どう言うことでしょう?」
「分かんないかね。もし晴奈が勝ったってんなら、気配は消えてるはずだね。だが現実は逆。気配が強まったってコトは、晴奈は恐らく……」
モールはそこまで述べたところで、突然言葉を切った。
「……ヤバいよ、ヤバい」
「え?」
モールの視線の先に、微笑を浮かべるフローラが立っていた。
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イメチェン?
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3.
「サイズがちょっと合わないかもしれないけど、我慢してね」
「ああ。ありがとう、助かった」
晴奈が目を覚まして、数分後。道着が衣服の用を足さなくなってしまったため、晴奈はキリアの部屋に行き、服を借りることにした。
「も、もうええか?」
キリアの部屋の前で待っていたヘックスが、申し訳なさそうな声をかけてきた。
「いいわよ」
「そ、そんじゃ、お邪魔するで」
顔を真っ赤にしたヘックスが、おずおずと入ってきた。晴奈も顔を赤くしつつ、尋ねてみる。
「……さっきの、見たか?」
「う、ううううん。み、見てへんよ、全然、うん」
「見たでしょ……。動揺しすぎよ」
「……ホンマ、すんません」
あまりにもおどおどとしたヘックスの態度に、晴奈はため息をついた。
「……いいさ、過ぎたことだ」
「それにしても、コウ」
キリアは洋服姿の晴奈を見て、感心したような声を上げる。
「似合ってるわね」
「そ、そうか?」
率直にほめられ、晴奈は気恥ずかしくなる。ほめた本人も、恥ずかしそうに口元をコリコリとかく。
「……まあ、こんな話をしている場合じゃなかったわね。
えっと……、私が持ってる武器、もう剣しかないんだけど、それでいい?」
「ああ、上等だ」
晴奈はキリアから剣を受け取り、装備する。
「大体の使い方は同じだろう?」
「ええ、まあ。ただ、刀に比べるとどうしても肉厚だから、切れ味は劣るわ。その分、打突に優れてはいるけれど」
「そうか。それだけ聞けば、十分」
晴奈は腰に提げた鞘から剣を抜き、軽く素振りしてみる。
「ふむ……。確かに少し、重心が違う。だが、……問題なし」
「……敵方のあなたにこんなお願いをするなんて、本当にみっともないけど」
キリアは深々と、晴奈に頭を下げる。
「フローラを、倒して。もう私たちは、あいつに付いて行こうなんて思えない」
「オレからも頼むわ。……今までオレたちは、正義のために頑張ってきたつもりやった。あんなヤツのために、頑張ってきたんちゃうんや」
「……相分かった。では、行って参る」
晴奈は兄妹に一礼し、部屋を出た。
一方、モールたちとバートたちは無事合流し、情報を交換していた。
「そっか、首領は倒したのか。……アンタが体、奪って」
「そーゆーコトだね」
「……すごく、違和感がありますわね」
「言うねぇ、帽子っ娘」
モールはクリスの体でクスクス笑いながら、バートたちが持ってきた情報を確認する。
「んで、あの筋肉と派手頭と小鈴が、別行動か。……良くないかも知れないね」
「え?」
「さっきから、嫌な気配が漂ってるんだよね。何と言うか、眠っていた怪物を起こしたような」
モールは帽子のつばを下げ、重々しい口調で語る。
「もしかしたらね。私らがこの場所に踏み込み、戦ったせいで、フローラは覚醒したのかも知れないね。
最初は少し、ヤバげな雰囲気しか出してなかった。正直、小物だとしか思ってなかったんだよね。
でもさっき、急に気配が濃くなったね。まるで何かを食い物にし、増長したように、そのヤバい空気が強まったんだ。そしてついさっきだけどね、もう一段階、ブワっと気配が膨らんだ。どうやら戦うごとに、急激に強くなっているらしいね。
まるでホワイトホール――無限にエネルギーを放出する、異空間からの穴のようだね。戦えば戦うほどその穴は広がり、加速度的にヤバさを増していく。
下手に交戦すれば、手に負えない怪物と化すかも知れないね。早いところ小鈴たちと合流しなきゃ、全滅も有り得るね」
「マジでか……」
バートがごくりとのどを鳴らす一方で、フォルナは本気にしていない。
「また、ご冗談を。わたくしたちには力強い仲間が、大勢いらっしゃいますでしょう?」
「その、仲間だけどね」
モールは帽子のつばを上げ、フォルナを見据える。
「晴奈と別行動を取った後、そのヤバい気配が強まったんだよ?」
「……どう言うことでしょう?」
「分かんないかね。もし晴奈が勝ったってんなら、気配は消えてるはずだね。だが現実は逆。気配が強まったってコトは、晴奈は恐らく……」
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「……ヤバいよ、ヤバい」
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モールの視線の先に、微笑を浮かべるフローラが立っていた。
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NoTitle
イメチェン!!
そういえば、今度ユキノを登場させるときは、完全戦闘用の服と私服洋服版を用意しようかな~~と思っています。・・・かなり先の話になりそうですが。色々諸々ありまして。。。
そういえば、今度ユキノを登場させるときは、完全戦闘用の服と私服洋服版を用意しようかな~~と思っています。・・・かなり先の話になりそうですが。色々諸々ありまして。。。
- #1571 LandM
- URL
- 2013.03/09 20:29
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楽しみにしています。