「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第6部
蒼天剣・白色録 4
晴奈の話、第389話。
阿修羅姫の舞。
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4.
「あら、お母様?」
フローラはモールを見つめ、首を横に振った。
「……いいえ、違うようね。服装があの『旅の賢者』のものだし、オーラもまるで別物。
モール。あなた、お母様の体を奪ったのね」
「ああ」
モールがうなずいたその瞬間、彼の体は青白い光弾に弾かれた。
「ぐえ……っ」
「そう。じゃあ、殺してもいいわよね?」
「いきなり、か……っ」
どうやら、命中する直前に魔術で防御していたらしい。モールはヨロヨロと立ち上がり、フローラをにらみつけた。
「クリス母様も、ドミニクも、ドクターも、いなくなったのね。……じゃあ、わたしがこの組織の長と言うわけね。
それなら適切な行動をしなければ、みんなに示しが付かないわよね?」
フローラがまた刀を振り、青白い光弾を発射する。先程剣で戦っていた時よりも鋭く速い光弾によって、モールの作った魔術の壁が一瞬で崩れ去る。
「抹殺よ」
「ダメだ、コイツ……! 思考が滅茶苦茶になってるね」
「滅茶苦茶? いいえ、わたしは正常よ。極めて、冷静。あなたたちは敵、だから排除する。これのどこに、おかしい点があるのかしら?」
「笑いながらできるかってね、こんなコトが!」
モールはもう一度、壁を作る。だがこれも、フローラが放つ「九紋竜」で瓦解する。
「それも、ちゃんと理由があるわ。あなた、さっきから無駄にあがいて、あがいて……。無駄って分からないのかしら、そんな壁」
「……やっぱり異常だね。もう話なんか、できそうにない」
「する必要があるのかしら? 2分後には死体になる人たちと、話なんて」
もう一度、「九紋竜」が放たれる。光弾は先程よりはるかに速く、モールの壁は間に合わなかった。
「しまっ……」
九つの光弾が、モールたちに飛び込んでくる。
「ぐ、がっ」
モールはまともに食らい、ピクリとも動かなくなった。
「ぐあっ……」
バートの左足に当たり、太ももが抉り取られる。
「ひ……」
ジュリアの脇腹をかすり、血しぶきが弾ける。
「うぎゃ……」
フェリオが散弾銃で撃ち落とそうとしたが、無意味だった。
「……!」
エランは何とかかわしたが、代わりに彼の帽子が粉々になる。
「い、いや……っ」
そして光弾の一つが、フォルナの顔面目がけて飛んできた。
「フォルナさんっ!」
エランはがむしゃらに走り、フォルナを突き飛ばした。そして代わりに、彼の右肩の半分近くが血の塊になって、通路の端へ飛んでいった。
「うあ、ああああ……ッ!」
「え、エラン!」
一人無事だったフォルナはエランに駆け寄り、肩から噴き出す血を押さえようとする。
「ぶ、無事でしたか。良かった」
「良くありませんわ! ああ、血がこんなに……!」
「い、いいんです。あなたが、無事なら」
「ですから、っ、良く、ありません、わよ」
痛みで顔を歪めるエランを見ているうちに、フォルナはボタボタと涙を流し始めた。
「死んでは、ダメ、エラン……!」
「ふふ、ふふ……」
6人の様子を眺めていたフローラは、また笑う。
その笑いは残酷なほど、妖艶で美しかった。
「うざったいわ。死んで」
フローラは倒れた6人にとどめを刺そうと、刀を振り上げた。
その時だった。
「……!」
フローラは急に振り返り、挙げていた刀を振り下ろす。それと同時に、フローラの目の前で炎の筋が四散した。
「これは……」
「フローラ・ウエスト! この黄晴奈が相手だッ!」
フローラの前に、殺したはずの晴奈が立っていた。
「……あは、ははは。どう言うことかしらね、これは?」
フローラは刀を脇に構え、晴奈の姿を眺める。
「亡霊? それとも屍鬼?」
「紛れもなく、生きた人間だ。
お前を倒すため、皆を護るため、私は冥府の底から舞い戻ってきたぞ……ッ!」
「ああ、そう。……クスクス、『護る』ですって? 修羅のあなたが?」
「私はもう、修羅ではない。修羅の私は、お前に斬られて消え去った」
晴奈の言葉に、フローラはまた笑い出す。
「あははは……、何それ? じゃあ今のあなたは何なの?」
「今の私は修羅にあらず。ただ一念に、『守護』の念を持って戦うのみだッ!」
「あっそう。……ああ、うざいうざい。反吐が出るわね。殺し損ねたら、こんなうざったいキャラになるなんて」
フローラの笑顔が消える。その顔には、今まで笑顔の裏でほの見えていた悪感情――万物に対する憎悪が満ち満ちていた。
「じゃあもう一回、殺してあげるわ! もう一度冥府へ墜ちなさい、セイナ!」
「やってみるがいい、フローラ!」
晴奈も剣を構え、フローラに飛び掛った。
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阿修羅姫の舞。
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「あら、お母様?」
フローラはモールを見つめ、首を横に振った。
「……いいえ、違うようね。服装があの『旅の賢者』のものだし、オーラもまるで別物。
モール。あなた、お母様の体を奪ったのね」
「ああ」
モールがうなずいたその瞬間、彼の体は青白い光弾に弾かれた。
「ぐえ……っ」
「そう。じゃあ、殺してもいいわよね?」
「いきなり、か……っ」
どうやら、命中する直前に魔術で防御していたらしい。モールはヨロヨロと立ち上がり、フローラをにらみつけた。
「クリス母様も、ドミニクも、ドクターも、いなくなったのね。……じゃあ、わたしがこの組織の長と言うわけね。
それなら適切な行動をしなければ、みんなに示しが付かないわよね?」
フローラがまた刀を振り、青白い光弾を発射する。先程剣で戦っていた時よりも鋭く速い光弾によって、モールの作った魔術の壁が一瞬で崩れ去る。
「抹殺よ」
「ダメだ、コイツ……! 思考が滅茶苦茶になってるね」
「滅茶苦茶? いいえ、わたしは正常よ。極めて、冷静。あなたたちは敵、だから排除する。これのどこに、おかしい点があるのかしら?」
「笑いながらできるかってね、こんなコトが!」
モールはもう一度、壁を作る。だがこれも、フローラが放つ「九紋竜」で瓦解する。
「それも、ちゃんと理由があるわ。あなた、さっきから無駄にあがいて、あがいて……。無駄って分からないのかしら、そんな壁」
「……やっぱり異常だね。もう話なんか、できそうにない」
「する必要があるのかしら? 2分後には死体になる人たちと、話なんて」
もう一度、「九紋竜」が放たれる。光弾は先程よりはるかに速く、モールの壁は間に合わなかった。
「しまっ……」
九つの光弾が、モールたちに飛び込んでくる。
「ぐ、がっ」
モールはまともに食らい、ピクリとも動かなくなった。
「ぐあっ……」
バートの左足に当たり、太ももが抉り取られる。
「ひ……」
ジュリアの脇腹をかすり、血しぶきが弾ける。
「うぎゃ……」
フェリオが散弾銃で撃ち落とそうとしたが、無意味だった。
「……!」
エランは何とかかわしたが、代わりに彼の帽子が粉々になる。
「い、いや……っ」
そして光弾の一つが、フォルナの顔面目がけて飛んできた。
「フォルナさんっ!」
エランはがむしゃらに走り、フォルナを突き飛ばした。そして代わりに、彼の右肩の半分近くが血の塊になって、通路の端へ飛んでいった。
「うあ、ああああ……ッ!」
「え、エラン!」
一人無事だったフォルナはエランに駆け寄り、肩から噴き出す血を押さえようとする。
「ぶ、無事でしたか。良かった」
「良くありませんわ! ああ、血がこんなに……!」
「い、いいんです。あなたが、無事なら」
「ですから、っ、良く、ありません、わよ」
痛みで顔を歪めるエランを見ているうちに、フォルナはボタボタと涙を流し始めた。
「死んでは、ダメ、エラン……!」
「ふふ、ふふ……」
6人の様子を眺めていたフローラは、また笑う。
その笑いは残酷なほど、妖艶で美しかった。
「うざったいわ。死んで」
フローラは倒れた6人にとどめを刺そうと、刀を振り上げた。
その時だった。
「……!」
フローラは急に振り返り、挙げていた刀を振り下ろす。それと同時に、フローラの目の前で炎の筋が四散した。
「これは……」
「フローラ・ウエスト! この黄晴奈が相手だッ!」
フローラの前に、殺したはずの晴奈が立っていた。
「……あは、ははは。どう言うことかしらね、これは?」
フローラは刀を脇に構え、晴奈の姿を眺める。
「亡霊? それとも屍鬼?」
「紛れもなく、生きた人間だ。
お前を倒すため、皆を護るため、私は冥府の底から舞い戻ってきたぞ……ッ!」
「ああ、そう。……クスクス、『護る』ですって? 修羅のあなたが?」
「私はもう、修羅ではない。修羅の私は、お前に斬られて消え去った」
晴奈の言葉に、フローラはまた笑い出す。
「あははは……、何それ? じゃあ今のあなたは何なの?」
「今の私は修羅にあらず。ただ一念に、『守護』の念を持って戦うのみだッ!」
「あっそう。……ああ、うざいうざい。反吐が出るわね。殺し損ねたら、こんなうざったいキャラになるなんて」
フローラの笑顔が消える。その顔には、今まで笑顔の裏でほの見えていた悪感情――万物に対する憎悪が満ち満ちていた。
「じゃあもう一回、殺してあげるわ! もう一度冥府へ墜ちなさい、セイナ!」
「やってみるがいい、フローラ!」
晴奈も剣を構え、フローラに飛び掛った。



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今日の旅岡さん

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ようやく間に合いましたね。
「いやあ、実は数分前からいたんですけど、入るタイミングをみていたんですよ・・・。」・・・なんて悠長なことを言っている場合ではないぐらい緊迫してますね。昔ジャンプ漫画でありましたけど。
「いやあ、実は数分前からいたんですけど、入るタイミングをみていたんですよ・・・。」・・・なんて悠長なことを言っている場合ではないぐらい緊迫してますね。昔ジャンプ漫画でありましたけど。
- #1577 LandM
- URL
- 2013.03/17 09:00
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ここから熱くなっていきます。お楽しみに。