「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第6部
蒼天剣・通信録 4
晴奈の話、第396話。
二人の新生活。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
4.
「……ふむぅ」
朱海が持ってきた、真っ二つに割れた「大蛇」を見て、ミツオは深くうなった。
「まさか、俺の神器を折っちまう奴がいるとはな」
「悪いな、本当……」
「いや、姐さんが謝ることじゃない。悪いのは、俺が手塩にかけたこいつを折っちまった奴だよ。
一体どんな戦い方したら、『神器』を割れるんだ」
「大蛇」を前に、ミツオは腕を組んで重々しくうなった。
「何でも半分人形で、半分人間って言うのと戦ったらしい」
「何だそりゃ……?」
ミツオは生返事気味に応え、そのまま「大蛇」に視線を向けている。
「……アンタんとこ、確か定食屋だって言ってたな」
「ああ、そうだけど」
「折れちまったもんはしゃあねえし、包丁にでも打ち直してやるよ」
「え、……いいのかい?」
「このまんま捨てちまうにゃ惜しい逸品だ。もう一花咲かせてやらにゃあ」
「……それが、こちらですか」
「ああ」
二振りの包丁になった「大蛇」を、フォルナが手に取る。
「元が刀だから、切れ味は抜群だ」
「では、試しに……」
フォルナは側にあった大根を手に取り、刃を当ててみる。するとほとんど抵抗を感じることも無く、大根はさくりと切れた。
「まあ……」
「腐っても鯛、折れても刀、……ってか」
あまりにも気持ちよく食材が切れるので、二人は他にも肉や魚などを切って、切れ味を楽しんでいた。
と、そこへ――。
「こんちゃーっす」
「あら?」
旅の間良く聞いた声が、フォルナの耳に響いてくる。
「おう、いらっしゃいシリン」
「どもー。……あの、アケミさーん」
シリンは入口でもじもじしながら、朱海とフォルナをチラチラと見ている。
「何だよ、もったいぶって。ソコ邪魔になるし、もっと中に入りな」
「あ、はーい」
シリンはカウンターの前まで歩み寄るが、座ろうとしない。
「どした? 座れよ」
「えっと、あの、実は……」
「なんだよ、はっきり言えって」
「もっかい、こっちで働かせてもらえませんか?」
「えっ?」
シリンの意外な願いに、朱海はきょとんとする。
「何でまた?」
「そのー……、ウチ、前に働いてた時はあんまり厨房に入ってなくて」
「あー、そうだったな。お前ぶきっちょだもんな」
「そんで、その……、手料理食べさせよう思ても、何も作れへんかって、もう一回勉強、したいなー、って」
「ほうほう、なるほどなー」
もじもじするシリンを見て、朱海はニヤニヤ笑っている。
「未来の旦那様のために、花嫁修業ってワケか」
「……うん」
「いいぜ。ただし、給料は安めだぞ」
「全然だいじょぶです、お願いします」
「よっしゃ、そんじゃ早速こっち来い」
シリンはニコニコはにかみながら、厨房に回った。
「ほな、よろしくお願いします。アケミさん、フォルナ」
「……あ、えっと」
ところが、フォルナの表情が堅い。
「どないしたん?」
「実は、わたくし……」
フォルナは小さく頭を下げ、ポケットから手紙を出した。
「フォルナ・ファイアテイル様へ
あなたの才能と器量を、是非我々金火公安に役立てていただけないでしょうか?
総帥共々、あなたの参入をお願い申し上げます。
付きましては、後日詳しくお話をさせていただきたく存じますが、ご予定はいかがでしょうか?」
手紙を読んだシリン(厳密には、朱海が読み聞かせた)は、満面の笑顔になる。
「おぉー、すごいやんかフォルナ」
「ええ……」
フォルナの顔も、ようやくほころんだ。
「もう既に、お話もいたしまして」
「ヘレンさんと?」
「はい。それで、総帥はわたくしのことを、いたく気に入っていらっしゃいまして。すぐに話もまとまりました。
それで、朱海さんのお店の方は……」
「そーかー……。ちょっと残念やけど、ま、大出世やん。おめでとー、フォルナ」
「……はい」
フォルナは顔を赤くして、にっこりと笑った。
@au_ringさんをフォロー
二人の新生活。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
4.
「……ふむぅ」
朱海が持ってきた、真っ二つに割れた「大蛇」を見て、ミツオは深くうなった。
「まさか、俺の神器を折っちまう奴がいるとはな」
「悪いな、本当……」
「いや、姐さんが謝ることじゃない。悪いのは、俺が手塩にかけたこいつを折っちまった奴だよ。
一体どんな戦い方したら、『神器』を割れるんだ」
「大蛇」を前に、ミツオは腕を組んで重々しくうなった。
「何でも半分人形で、半分人間って言うのと戦ったらしい」
「何だそりゃ……?」
ミツオは生返事気味に応え、そのまま「大蛇」に視線を向けている。
「……アンタんとこ、確か定食屋だって言ってたな」
「ああ、そうだけど」
「折れちまったもんはしゃあねえし、包丁にでも打ち直してやるよ」
「え、……いいのかい?」
「このまんま捨てちまうにゃ惜しい逸品だ。もう一花咲かせてやらにゃあ」
「……それが、こちらですか」
「ああ」
二振りの包丁になった「大蛇」を、フォルナが手に取る。
「元が刀だから、切れ味は抜群だ」
「では、試しに……」
フォルナは側にあった大根を手に取り、刃を当ててみる。するとほとんど抵抗を感じることも無く、大根はさくりと切れた。
「まあ……」
「腐っても鯛、折れても刀、……ってか」
あまりにも気持ちよく食材が切れるので、二人は他にも肉や魚などを切って、切れ味を楽しんでいた。
と、そこへ――。
「こんちゃーっす」
「あら?」
旅の間良く聞いた声が、フォルナの耳に響いてくる。
「おう、いらっしゃいシリン」
「どもー。……あの、アケミさーん」
シリンは入口でもじもじしながら、朱海とフォルナをチラチラと見ている。
「何だよ、もったいぶって。ソコ邪魔になるし、もっと中に入りな」
「あ、はーい」
シリンはカウンターの前まで歩み寄るが、座ろうとしない。
「どした? 座れよ」
「えっと、あの、実は……」
「なんだよ、はっきり言えって」
「もっかい、こっちで働かせてもらえませんか?」
「えっ?」
シリンの意外な願いに、朱海はきょとんとする。
「何でまた?」
「そのー……、ウチ、前に働いてた時はあんまり厨房に入ってなくて」
「あー、そうだったな。お前ぶきっちょだもんな」
「そんで、その……、手料理食べさせよう思ても、何も作れへんかって、もう一回勉強、したいなー、って」
「ほうほう、なるほどなー」
もじもじするシリンを見て、朱海はニヤニヤ笑っている。
「未来の旦那様のために、花嫁修業ってワケか」
「……うん」
「いいぜ。ただし、給料は安めだぞ」
「全然だいじょぶです、お願いします」
「よっしゃ、そんじゃ早速こっち来い」
シリンはニコニコはにかみながら、厨房に回った。
「ほな、よろしくお願いします。アケミさん、フォルナ」
「……あ、えっと」
ところが、フォルナの表情が堅い。
「どないしたん?」
「実は、わたくし……」
フォルナは小さく頭を下げ、ポケットから手紙を出した。
「フォルナ・ファイアテイル様へ
あなたの才能と器量を、是非我々金火公安に役立てていただけないでしょうか?
総帥共々、あなたの参入をお願い申し上げます。
付きましては、後日詳しくお話をさせていただきたく存じますが、ご予定はいかがでしょうか?」
手紙を読んだシリン(厳密には、朱海が読み聞かせた)は、満面の笑顔になる。
「おぉー、すごいやんかフォルナ」
「ええ……」
フォルナの顔も、ようやくほころんだ。
「もう既に、お話もいたしまして」
「ヘレンさんと?」
「はい。それで、総帥はわたくしのことを、いたく気に入っていらっしゃいまして。すぐに話もまとまりました。
それで、朱海さんのお店の方は……」
「そーかー……。ちょっと残念やけど、ま、大出世やん。おめでとー、フォルナ」
「……はい」
フォルナは顔を赤くして、にっこりと笑った。



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~