黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    黒エルフの騎士団 2

     ←黒エルフの騎士団 1 →黒エルフの騎士団 3
    スピンオフ、2話目。
    仲間の見た夢。




    2.
    「どなたさん?」
     トン、トンと遠慮がちに聞こえてきたノックの音に向かって、ヘックスが尋ねる。が、返事は無い。
    「……?」
     不審に思い、ヘックスはもう一度尋ねつつ、玄関へと向かう。
    「どなたさんでっか?」
    「……あの、『カーキ』様、でしょうか」
    「……!」
     とうの昔に捨てた自分のコードネームを耳にし、ヘックスは警戒した。
    「……誰や」
    「その、……ペルシェビレッジの、者です」
    「ペルシェビレッジ、……やて?」
     かつての仲間の名を冠したその街の名を聞き、ヘックスは恐る恐るドアを開けた。
    「……お久しぶりです、『カーキ』様」

     尋ねてきた短耳の男は、ウェルス・リモードと名乗った。
    「リモード? 何でまた、ペルシェの名字を?」
    「えっと……、去年、彼女と結婚しまして」
    「あー、なるほどなー。おめでとさん」
    「ありがとうございます」
     恐縮しているウェルスを見て、ヘックスが優しく声をかけた。
    「あー、そんな、敬語とかいらへんよ。組織もとうの昔に無くなっとるし、上も下もあらへん」
    「あ、はい」
    「少し聞きたいのだ、けど」
     ミューズが手を挙げる。
    「どうやって、私たちの居場所を?」
    「少し前、サウストレードの方で村の収穫品を売りに行った際、『ブラック』、……ミューズさんらしき人を見かけて。
     それで調べてみたら、この村で働いていることが分かったんだ」
    「ああ、そう言えば本を買いに行ったことがあった、わね。
     ……それで、ウェルス、だったか。何故今頃、私たちのところに?」
     尋ねた途端、ウェルスは複雑な表情を浮かべた。嬉しそうとも、困っているとも取れる目で、ウェルスは報告した。
    「えっと、その、……まず、そもそもの話、だけど。
     さっきも言った通り、僕はペルシェと結婚したんだ。それで、子供も今年の初めに生まれて」
    「へぇ……、あのペルシェに、もう子供が?」
     キリアは意外そうな顔をした。
    「まあ……、確かにオレらん中のペルシェのイメージっちゅうたら、コドモな感じやけど。そんでももう、22か23やったはずやし」
    「そっか、そうよね」
    「聞いた感じでは順風満帆なようだが、何か困ったことがあるのか、しら?」
    「ええ……。彼女が、こんなことを言っていたんだ」



    「夢をね、見るのー」
     生まれたばかりの、彼女に良く似た「猫」の赤ん坊を抱えたペルシェは、唐突にそうつぶやいた。
    「夢?」
    「周りは砂だらけで、どこを見ても砂、砂。そんな夢なのー」
    「ふうん……」
     ウェルスは生返事でそう返したが、ペルシェは真剣味を帯びた顔で話を続ける。
    「それでねー、その砂ばっかりのトコにー、でっかい城が建ってるのー。やっぱりそこも、砂まみれでー」
    「ふん、ふん」
    「……それ見てあたし、何だか良く分からないけどー、怖くなったのー……」
    「怖く?」
     ペルシェはコクリとうなずき、子供の頭をちょいちょいと撫でる。
    「うん……。飛び起きて、泣き出すくらい怖かったのー……」
    「ああ……」
     ウェルスは確かに昨夜、ペルシェがそんな様子を見せていたことを思い出した。
    「でもなんで、たったそれだけのことが、怖く思えたんだろう?」
    「分からないのー……」



    「……その後も度々、ペルシェが夜中に目を覚まし、息を荒くしていることがあった。
     最近はもう、あんまり満足に眠れてないみたいで、村長としての仕事にも影響が出てるんだ」
    「そっかー……、大変やなぁ」
     話を聞いたヘックスは、キリアとミューズに顔を向ける。
    「でも、夢をどうこうしよう思ても、できるもんでもあらへんよなぁ……」
    「ヘックス。以前に私が、夢の解釈をしたことがあったろう?」
     ミューズはやれやれと言った顔をする。
    「夢と言うのは、見る人間の古い記憶から、無意識的に産み出されたものなのだ。
     例え洗脳などの人為的理由で記憶喪失の状態にあっても、洗脳の支配下にない無意識は、封じられた記憶をも掘り起こしていく。
     ウェルス。まだペルシェは、記憶を取り戻していないのだろう?」
    「うん。僕も含めて、村のみんなは昔のことを覚えていないんだ」
    「私の力があれば、その記憶を掘り起こすことができる。早速、村へ行ってペルシェの記憶を戻してみよう。
     記憶が戻れば、夢の中で何を怖いと思っていたのか、解明の糸口になるだろう」
    「本当に? ありがとう、ミューズ」
     ウェルスは顔をほころばせ、ミューズに頭を下げた。
    「いやいや、礼など」
     と、ここでキリアがミューズの背中をちょいちょいとつつく。
    「えい」
    「ひゃん!? ……な、何をする!?」
    「言葉遣い、戻ってるわよ」
    「……あ、すまな、ええ、うん、……ごめん」
     ミューズは顔を赤らめ、ばつの悪そうな顔になった。
    関連記事


    ブログランキング・にほんブログ村へ





    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    もくじ  3kaku_s_L.png DETECTIVE WESTERN
    もくじ  3kaku_s_L.png 短編・掌編
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png 携帯待受
    • 【黒エルフの騎士団 1】へ
    • 【黒エルフの騎士団 3】へ

    ~ Comment ~

    管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    トラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【黒エルフの騎士団 1】へ
    • 【黒エルフの騎士団 3】へ