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    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    黒エルフの騎士団 3

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    スピンオフ、3話目。
    ペルシェの出自。




    3.
     ヘックスたちはミューズの「テレポート」により、ペルシェの治める村、ペルシェビレッジを訪れた。
    「わあー」
     到着して早速、ペルシェはミューズの腕をぺたぺたと触ってきた。
    「本当にー、人間になったんだねー」
    「う、うん」
     腕をむにむにと触られ、ミューズは困った顔をしている。
    「それで、ペルシェ。あなたの記憶を戻して、何がそんなに怖かったのか、解明しようと思うのだけど、……いい加減に、私の腕から離れてほしい」
    「あー、ゴメンねー」
     二人から少し離れたところで、シグマ兄妹はウェルスが抱えているペルシェとの子供、シャロンを見せてもらっていた。
    「可愛いわね」
    「ホンマ、ちっこくてかわええなぁ」
     子供をべた褒めされ、ウェルスもニコニコしている。
    「……お前たち」
     ミューズは呆れ、ため息をついた。

     場が落ち着いたところで、ミューズは本題を切り出した。
    「それで、ミューズ。夕べは、夢を見たの?」
    「うん……」
     ミューズの質問に、ペルシェは憂鬱そうな表情になった。
    「それなら、丁度いいわ。今なら記憶を呼び起こすのも、難しくは無いわ」
     ミューズはペルシェを椅子に座らせ、頭に手を置いた。
    「少し痛む、わよ」
    「はいー」
     ミューズは精神を集中させ、両手に魔力を込める。
    「……いち、にの、……さん」
    「ひ、ゃ……」
     ペルシェの口から、短く悲鳴がこぼれる。そのまま、ペルシェはかくんと頭を垂れて気を失った。
    「ぺ、ペルシェ!?」
    「心配ない。頭を落ち着かせるため、眠ってもらっている。目を覚まし次第、記憶について聞きましょう」
    「わ、分かった」
     それでもウェルスは心配そうに、ペルシェの様子を眺めている。
    「……子供を預かっておくから、毛布でも持って来て、かけてあげて」
    「あ、……じゃあ、頼んだ」
     ウェルスはミューズにシャロンを抱かせ、バタバタと部屋を出て行った。
    「まったく、そんなに慌てなくてもいいのに。……ふむ」
     預かったシャロンの顔を眺め、ミューズはつぶやいた。
    「なるほど、可愛い」
    「……ぷっ」
     その様子を見ていたヘックスが吹き出した。
    「どうした?」
    「いや、……なんや『なるほど』て、って思て」
    「何かおかしかったか?」
    「普通に可愛いって言うたらええやんか、……くく」
     ヘックスはそう言って、ミューズの頭をぽんぽんと撫でる。ミューズは首をかしげながら、恥ずかしそうにつぶやいた。
    「そう言ったつもりだが……、うーん。まだ私の話し方は、一般的ではないよう、ね」
    「ま、いいじゃない。……あら?」
     と、キリアがペルシェの様子に気付いた。
    「ペルシェ、泣いてる……?」
     うつむいたままのペルシェが、ポタポタと涙をこぼしている。そこに丁度、ウェルスも戻ってきた。
    「……これは、一体?」
    「分からない。……待つしか」



     1時間後、ペルシェは目を覚ました。
    「ふ、あ……」
    「お、目ぇ覚ました。どや、気分は?」
     ヘックスが声をかけたが、ペルシェはきょとんとしている。と、顔に段々と赤みが差し、興奮しだした。
    「……***? ***!」
    「へ?」
     何かしゃべっているが、ヘックスにもキリアにも、ウェルスにも、ペルシェが何を言っているのか分からない。
    「**、***~?」
    「な、何語?」
    「さあ……?」
     と、様子を見ていたミューズが口を開いた。
    「**。****。***?」
     それを聞いて、ペルシェが嬉しそうに笑って応じた。
    「*! *! **、****~!」
    「ミューズ?」
    「南海諸島の言葉だな。聞いた感じでは、西部訛りがある。
     ……***、**?」
    「*! **、カマラ!」
     二言三言交わしたところで、ミューズが皆の方に顔を向けた。
    「本名はカマラだそうだ。名前からして、やはり南海の出らしい」
    「……わかりまへん」
     呆然とする皆を代表して、ヘックスはそうつぶやいた。

     数分後、ようやく落ち着いたペルシェは(央北語で)説明してくれた。
    「あたしの本名はー、カマラ・ペルシャーナって言うのー。ミューズの言う通り、南海で生まれたのー」
    「へー」
    「そうなんだ」
     南海のことなどさっぱり分からないシグマ兄妹は、ただぼんやりとうなずくしかない。
    「のんきにうなずいている場合では無いぞ」
     対照的に、ペルシェから南海語で説明を受けていたミューズは眉間にしわを寄せている。
    「間違いない、か?」
    「うん」
    「……先生もまったく、恐れを知らなすぎる」
    「どないしたん?」
     ヘックスが尋ねると、ミューズは頭に手を当てながら、憂鬱そうに説明した。
    「南海西部にペルラ島と言う、南海でも割と大きい部類に入る島がある」
    「ふーん」
    「二人は知っているかどうか分からないが、南海には十数ほどの王家が存在する。大体、一つの家が一つか二つ、大きい島を所有して、それを国としている。
     そのペルラ島と周辺の小島数点も、ある王家が所有しているのだ。一般には、それはペルラ王国と呼ばれている。……ここまで聞いて、ピンと来てほしいのだが」
    「へ?」「何?」
     鈍い兄妹に辟易した表情を浮かべつつ、ミューズは結論を述べた。
    「ペルラ王国の主権を握っている王家の名は、ペルシャーナ家と言うのだ」
    「へー、同じ名前やな。……え、もしかして」
    「ようやく気付いてくれたか……」
     ミューズは椅子に沈み込むようにもたれ、ヘックスたちの鈍さに呆れ返った。
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