「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
双月千年世界 短編・掌編
黒エルフの騎士団 6
スピンオフ、6話目。
砂漠の城。
ほしいです、ストール。
自画像みたいに巻いてみたい。
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砂漠の城。
ほしいです、ストール。
自画像みたいに巻いてみたい。
6.
ペルラ島の東半分、全体の4分の3程度は人が住める肥沃な地帯となっており、市街地や農林が広がっている。
だが、西側4分の1はファリザン砂漠と呼ばれる熱砂地帯が広がっており、その規模は年々拡大している。砂漠化の原因ははっきりしていないが、既に旧王城などは砂の領域に飲み込まれてしまい、到底住める状態ではなくなっているそうだ。
「ストールを買っておいて、正解だったわね」
砂漠に入った一行を出迎えたのは、強い日差しと砂混じりの強風だった。
「ホンマやなぁ。顔さらしとったら、干からびそうやわ」
全員、頭と顔に布を巻き、暑さと砂を防いでいる。
それでも直射日光の強さは生半可なものではなく、シグマ兄妹とペルシェの尻尾からはポタポタと汗が滴り落ちている。
なお、赤ん坊のシャロンを連れて歩くのは危険と考え、ウェルスと共に宿で休ませている。
「シャロンを連れて来なくて、ホントに良かったー……」
「ほんで、城っちゅうのはどこら辺なん?」
「地図によれば、市街地から1時間ほど進んだところにあるそうだ。元々は、城と市街地はつながっていたそうだが」
「……? 城が動いたん?」
ミューズは呆れた目を向けつつ応える。
「砂の侵食で市街地だったところが、砂に埋もれてしまったのだ。とは言え王城は堅固・堅牢にするのが通常。そう簡単に埋もれたりしないだろうし、やたらに居を移す必要は無い。
その結果、市街地との距離が離れたのだろう」
「ああ、そう言うことか」
しばらく歩いたところで、一行はようやく目的の場所に辿り着いた。
「これ、か?」
「……うん」
辿り着いた城は砂と強風にさらされ続けたせいか、城壁はボロボロになっており、周りには砂が積もっている。城門も半ば砂に埋もれており、開けるのは容易ではなかった。
「んっ……、くっ……、おら……っ」
力自慢のヘックスがグイグイと押しても、ビクともしない。
「ちょっと離れてー」
土の魔術師だったペルシェが呪文を唱え、砂をどける。
「……はいー、これで開くかもー」
「……ん?」
と、ヘックスの目にが妙なものが映った。
「閂が、外に付いとる」
「きっと城を捨てた時に、封印したのね」
「アホくさ……。砂に埋もれとったから、分からへんかったわ」
砂の中から現れた閂を外し、一行は門を抜けた。
抜けてすぐ、城の姿が確認できた。それを見て、ペルシェがぽつりとつぶやく。
「うん、……ここが、あたしの住んでたお城」
ペルシェはストールを顔からはがし、目をこする。
「間違いないよー……。ここが、ホントのペルシャーナ城。あたしの、生まれたところ」
「……お帰りさん」
ヘックスのかけた言葉に、ペルシェがグスグスと鼻を鳴らしながら応える。
「ありがとー、ヘックス」
「水を差すようで悪いが……」
ミューズもストールを取り、ペルシェの横に並ぶ。
「今はどうだ? 恐怖を感じているのか?」
「……んー、と」
ペルシェは胸に手を当て、考え込む様子を見せる。
「……ううんー、懐かしさしか感じないー」
「ふむ」
ミューズは腕を組んで考え込む。
(城自体が恐怖の象徴では無い、と言うことか。となると、他に考えられるのは城に関係した何か、となるな。
……もっと情報を集めなければ、何とも言えそうに無いな)
ミューズはペルシェの肩を叩き、中に入るよう促した。
「探索してみよう。ここまで来て、何が怖かったのか分からないままでは、来た意味もない」
「そーだねー、入ろ入ろー」
一行はそっと、城の中へと入った。
「うっ……?」
入った途端、妙に粘っこく鼻を突く臭いが漂ってきた。
「何やこの、えげつない臭い……」
「……っ……」
ペルシェが立ち止まり、うずくまる。
「どうしたの、ペルシェ?」
キリアが尋ねるが、ペルシェは震えるばかりで答えない。
一方、ミューズは自分の記憶を手繰り寄せ、この刺激臭の正体を探っていた。
(これに近い臭いを、どこかで嗅いだことがある。……いや、どこかではないな。こんな薬品臭は、ほとんど同じ場所でしか嗅いだことはない。即ち、ドクターの医務室。
そうだ、思い出してきた。これはあの薬の……)
「……茶系だ」
「へ?」
「この臭い……、ドクターが作った薬物に良く似た臭いだ」
「どう言うこと?」
ミューズは周囲を調べながら、説明する。
「殺刹峰は人身売買や海賊行為、非合法魔術頒布などの犯罪によって収益を得ていた。同様に、兵士たちの肉体強化剤を製造するため、いくつかの薬品研究も行い、その研究成果の一部もどこかに販売していたらしい。
主に研究されたのは、血管・筋肉強化の『青系』や神経に作用する『緑系』、魔力増幅効果のある『紫系』、そして向精神作用を持つ『茶系』。
その中でも茶系は、特に需要があったそうだ。即ち、麻薬としての、な」
「確かにうちの組織、麻薬密造・密売もしてたっちゅう話は聞いたことあるな」
「このアルコールの混じった粘つく臭いは、その茶系特有の刺激臭だ」
「……!」
その説明を裏付けるものが床に落ちているのを、ミューズは発見した。
「……やはり」
床に転がっていたのは、親指大の茶色の塊――大麻樹脂だった。
ペルラ島の東半分、全体の4分の3程度は人が住める肥沃な地帯となっており、市街地や農林が広がっている。
だが、西側4分の1はファリザン砂漠と呼ばれる熱砂地帯が広がっており、その規模は年々拡大している。砂漠化の原因ははっきりしていないが、既に旧王城などは砂の領域に飲み込まれてしまい、到底住める状態ではなくなっているそうだ。
「ストールを買っておいて、正解だったわね」
砂漠に入った一行を出迎えたのは、強い日差しと砂混じりの強風だった。
「ホンマやなぁ。顔さらしとったら、干からびそうやわ」
全員、頭と顔に布を巻き、暑さと砂を防いでいる。
それでも直射日光の強さは生半可なものではなく、シグマ兄妹とペルシェの尻尾からはポタポタと汗が滴り落ちている。
なお、赤ん坊のシャロンを連れて歩くのは危険と考え、ウェルスと共に宿で休ませている。
「シャロンを連れて来なくて、ホントに良かったー……」
「ほんで、城っちゅうのはどこら辺なん?」
「地図によれば、市街地から1時間ほど進んだところにあるそうだ。元々は、城と市街地はつながっていたそうだが」
「……? 城が動いたん?」
ミューズは呆れた目を向けつつ応える。
「砂の侵食で市街地だったところが、砂に埋もれてしまったのだ。とは言え王城は堅固・堅牢にするのが通常。そう簡単に埋もれたりしないだろうし、やたらに居を移す必要は無い。
その結果、市街地との距離が離れたのだろう」
「ああ、そう言うことか」
しばらく歩いたところで、一行はようやく目的の場所に辿り着いた。
「これ、か?」
「……うん」
辿り着いた城は砂と強風にさらされ続けたせいか、城壁はボロボロになっており、周りには砂が積もっている。城門も半ば砂に埋もれており、開けるのは容易ではなかった。
「んっ……、くっ……、おら……っ」
力自慢のヘックスがグイグイと押しても、ビクともしない。
「ちょっと離れてー」
土の魔術師だったペルシェが呪文を唱え、砂をどける。
「……はいー、これで開くかもー」
「……ん?」
と、ヘックスの目にが妙なものが映った。
「閂が、外に付いとる」
「きっと城を捨てた時に、封印したのね」
「アホくさ……。砂に埋もれとったから、分からへんかったわ」
砂の中から現れた閂を外し、一行は門を抜けた。
抜けてすぐ、城の姿が確認できた。それを見て、ペルシェがぽつりとつぶやく。
「うん、……ここが、あたしの住んでたお城」
ペルシェはストールを顔からはがし、目をこする。
「間違いないよー……。ここが、ホントのペルシャーナ城。あたしの、生まれたところ」
「……お帰りさん」
ヘックスのかけた言葉に、ペルシェがグスグスと鼻を鳴らしながら応える。
「ありがとー、ヘックス」
「水を差すようで悪いが……」
ミューズもストールを取り、ペルシェの横に並ぶ。
「今はどうだ? 恐怖を感じているのか?」
「……んー、と」
ペルシェは胸に手を当て、考え込む様子を見せる。
「……ううんー、懐かしさしか感じないー」
「ふむ」
ミューズは腕を組んで考え込む。
(城自体が恐怖の象徴では無い、と言うことか。となると、他に考えられるのは城に関係した何か、となるな。
……もっと情報を集めなければ、何とも言えそうに無いな)
ミューズはペルシェの肩を叩き、中に入るよう促した。
「探索してみよう。ここまで来て、何が怖かったのか分からないままでは、来た意味もない」
「そーだねー、入ろ入ろー」
一行はそっと、城の中へと入った。
「うっ……?」
入った途端、妙に粘っこく鼻を突く臭いが漂ってきた。
「何やこの、えげつない臭い……」
「……っ……」
ペルシェが立ち止まり、うずくまる。
「どうしたの、ペルシェ?」
キリアが尋ねるが、ペルシェは震えるばかりで答えない。
一方、ミューズは自分の記憶を手繰り寄せ、この刺激臭の正体を探っていた。
(これに近い臭いを、どこかで嗅いだことがある。……いや、どこかではないな。こんな薬品臭は、ほとんど同じ場所でしか嗅いだことはない。即ち、ドクターの医務室。
そうだ、思い出してきた。これはあの薬の……)
「……茶系だ」
「へ?」
「この臭い……、ドクターが作った薬物に良く似た臭いだ」
「どう言うこと?」
ミューズは周囲を調べながら、説明する。
「殺刹峰は人身売買や海賊行為、非合法魔術頒布などの犯罪によって収益を得ていた。同様に、兵士たちの肉体強化剤を製造するため、いくつかの薬品研究も行い、その研究成果の一部もどこかに販売していたらしい。
主に研究されたのは、血管・筋肉強化の『青系』や神経に作用する『緑系』、魔力増幅効果のある『紫系』、そして向精神作用を持つ『茶系』。
その中でも茶系は、特に需要があったそうだ。即ち、麻薬としての、な」
「確かにうちの組織、麻薬密造・密売もしてたっちゅう話は聞いたことあるな」
「このアルコールの混じった粘つく臭いは、その茶系特有の刺激臭だ」
「……!」
その説明を裏付けるものが床に落ちているのを、ミューズは発見した。
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