「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
双月千年世界 短編・掌編
黒エルフの騎士団 16
スピンオフ、最終話。
騎士団の結成。
さて、スピンオフも終わり、いよいよ明日から蒼天剣第7部の開始です。
でも、晴奈は出てきません。
顔に疵のある子が、しばらく主人公になります。
@au_ringさんをフォロー
騎士団の結成。
さて、スピンオフも終わり、いよいよ明日から蒼天剣第7部の開始です。
でも、晴奈は出てきません。
顔に疵のある子が、しばらく主人公になります。
16.
「どう、とは?」
抽象的な質問をされて、ミューズは首をかしげる。
「どう、って、いや、オレ、お前にどう言う風に見られとるかなーて」
「率直に言えば、ヘタレだな」
「ちょ」
悲しそうな顔をするヘックスを見て、ミューズは噴き出した。
「……く、くくっ」
「う?」
「くく、ふふふ……。そうだな、ヘタレで、バカで、鈍い奴。それが偽らざる、私の感想だ」
「ひっど」
「……だけど」
ミューズはにっこりと、ヘックスに微笑む。その笑顔は、殺刹峰にいた時には絶対に見られなかった、歳相応の愛らしい笑顔だった。
「優しくて、温かい男だ。変に小賢しい奴、ただただ野蛮で粗暴な奴なんかより、断然好ましいよ」
「……好き、っちゅうこと?」
「まあ、そう言っても語弊はない、な」
それを聞いて、ヘックスは顔を赤らめた。それを見て、ミューズは戸惑う。
「あ、……待て、そんな意味じゃない」
「ちゃうん?」
途端にころっと、ヘックスの狼耳が垂れる。
「いや、そう言うことでもなくて、……ああ、面倒くさい奴だっ!」
ミューズはたまらず、ヘックスに抱きついた。
「お、おぉ?」
「分かったよ、好きと言えばいいのだろう!? ああ、好きだよ、大好きだとも!」
「……へへ、そっか。やっぱりそうやったんか。ちょっと、安心したわ」
「……鈍い。とことんまで鈍い奴だな、お前は」
ミューズは抱きついたまま、ヘックスに尋ねる。
「言っておくが、私は恋人にするには大分、可愛げが無いぞ」
「あるある、めっちゃある」
「ない」
「あるって。オレ、お前のこと今、めっちゃ抱きしめたいし」
「だからお前はヘタレだと言うのだ。……抱きしめればいいだろう? 私もそうされたい」
「……うん」
ヘックスはそっとミューズの背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめた。
引越しが終わった、次の日。
「まだ、根は残っているのだ」
ミューズは集めてきた資料を机の上にドン、と積んだ。
「殺刹峰は大陸中心に長年活動してきたし、他の地域にも手を出していた。以前の金火公安による捜査でその大部分が明るみに出て、処分されてはいる。
しかし今回のように、殺刹峰の遺産を元に悪事を働く不埒者が、まだいるかも知れない。……いや、いるのだ。それを調べたのが、この資料だ」
「……全部?」
目を点にするシグマ兄妹に、ミューズは小さくうなずいた。
「限りなく怪しいものから、わずかに可能性があるものまで。ざっと見て、30件、40件はある。……お前たちに問う。これを見過ごすか?」
「なワケないやん」
「右に同じ」
シグマ兄妹の反応に、ミューズはニヤリと笑った。
「この村ならソフィエランドのように、こそこそと過ごさなくてもいいから、訓練も情報収集も好きなようにできる。村人たちも以前は兵士だったのだし、協力も得られる。私たち三人だけではなく、皆がいるのだ。
この村を基地にして、大掃除をしよう。この黒く汚れた組織の根は絶対に、後世に残してはならない」
「せやな。……ほんなら、いっちょ頑張ろか!」
「ええ!」
ヘックスが机に手を置き、キリアがそれに自分の手を重ねる。ミューズも同じように、手を乗せた。
「結成、だな」
後年、中央大陸の各地域において、今まで明るみに出なかった重犯罪・組織犯罪を暴く秘密結社のうわさが広まった。
リーダーと思われる人物が全身真っ黒なエルフであると言ううわさから、その組織は自然に「ダークエルフ騎士団」と呼ばれるようになった。
しかしその組織がどこにあるのか、黒エルフが誰なのか、そして何のために犯罪を暴くのか――その全容は、誰も知らない。
黒エルフの騎士団 終
「どう、とは?」
抽象的な質問をされて、ミューズは首をかしげる。
「どう、って、いや、オレ、お前にどう言う風に見られとるかなーて」
「率直に言えば、ヘタレだな」
「ちょ」
悲しそうな顔をするヘックスを見て、ミューズは噴き出した。
「……く、くくっ」
「う?」
「くく、ふふふ……。そうだな、ヘタレで、バカで、鈍い奴。それが偽らざる、私の感想だ」
「ひっど」
「……だけど」
ミューズはにっこりと、ヘックスに微笑む。その笑顔は、殺刹峰にいた時には絶対に見られなかった、歳相応の愛らしい笑顔だった。
「優しくて、温かい男だ。変に小賢しい奴、ただただ野蛮で粗暴な奴なんかより、断然好ましいよ」
「……好き、っちゅうこと?」
「まあ、そう言っても語弊はない、な」
それを聞いて、ヘックスは顔を赤らめた。それを見て、ミューズは戸惑う。
「あ、……待て、そんな意味じゃない」
「ちゃうん?」
途端にころっと、ヘックスの狼耳が垂れる。
「いや、そう言うことでもなくて、……ああ、面倒くさい奴だっ!」
ミューズはたまらず、ヘックスに抱きついた。
「お、おぉ?」
「分かったよ、好きと言えばいいのだろう!? ああ、好きだよ、大好きだとも!」
「……へへ、そっか。やっぱりそうやったんか。ちょっと、安心したわ」
「……鈍い。とことんまで鈍い奴だな、お前は」
ミューズは抱きついたまま、ヘックスに尋ねる。
「言っておくが、私は恋人にするには大分、可愛げが無いぞ」
「あるある、めっちゃある」
「ない」
「あるって。オレ、お前のこと今、めっちゃ抱きしめたいし」
「だからお前はヘタレだと言うのだ。……抱きしめればいいだろう? 私もそうされたい」
「……うん」
ヘックスはそっとミューズの背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめた。
引越しが終わった、次の日。
「まだ、根は残っているのだ」
ミューズは集めてきた資料を机の上にドン、と積んだ。
「殺刹峰は大陸中心に長年活動してきたし、他の地域にも手を出していた。以前の金火公安による捜査でその大部分が明るみに出て、処分されてはいる。
しかし今回のように、殺刹峰の遺産を元に悪事を働く不埒者が、まだいるかも知れない。……いや、いるのだ。それを調べたのが、この資料だ」
「……全部?」
目を点にするシグマ兄妹に、ミューズは小さくうなずいた。
「限りなく怪しいものから、わずかに可能性があるものまで。ざっと見て、30件、40件はある。……お前たちに問う。これを見過ごすか?」
「なワケないやん」
「右に同じ」
シグマ兄妹の反応に、ミューズはニヤリと笑った。
「この村ならソフィエランドのように、こそこそと過ごさなくてもいいから、訓練も情報収集も好きなようにできる。村人たちも以前は兵士だったのだし、協力も得られる。私たち三人だけではなく、皆がいるのだ。
この村を基地にして、大掃除をしよう。この黒く汚れた組織の根は絶対に、後世に残してはならない」
「せやな。……ほんなら、いっちょ頑張ろか!」
「ええ!」
ヘックスが机に手を置き、キリアがそれに自分の手を重ねる。ミューズも同じように、手を乗せた。
「結成、だな」
後年、中央大陸の各地域において、今まで明るみに出なかった重犯罪・組織犯罪を暴く秘密結社のうわさが広まった。
リーダーと思われる人物が全身真っ黒なエルフであると言ううわさから、その組織は自然に「ダークエルフ騎士団」と呼ばれるようになった。
しかしその組織がどこにあるのか、黒エルフが誰なのか、そして何のために犯罪を暴くのか――その全容は、誰も知らない。
黒エルフの騎士団 終
- 関連記事
-
-
ミッション515 2 2009/12/15
-
ミッション515 1 2009/12/14
-
黒エルフの騎士団 16 2009/10/27
-
黒エルフの騎士団 15 2009/10/26
-
黒エルフの騎士団 14 2009/10/25
-



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~