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    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第7部

    蒼天剣・風師録 1

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    晴奈の話、第429話。
    コードネーム、L。

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    1.
    「名前には、意味がある」
     ジーン王立大学の学長室。黒板と書物に囲まれたその部屋の中央に、3人の人間が座っていた。
    「例えば古代、ジーン第一王朝以前の、豪族割拠の時代。有力な人間の名前には、数字が用いられることがあった。
     第一王朝、唯一の王であったレン・ジーンの名前、『レン』も、現代の言葉では『0』を意味する。つまり世界で唯一の王であり神である、自分以外の王の存在は無い、0であると言いたかったのだろう」
     弁舌を振るっているのは兎獣人の大学教授、ラルフ・ホーランド。眼鏡をかけた老エルフと、銀髪の短耳とを前にして、黒板に自分の説を書き連ねている。
    「彼は古代神話における『御子』をも名乗っていた。その名残が、その後現れた『猫姫』こと、イール・サンドラ氏にも現れている。
     彼女の『イール』と言う名もまた、古代語で『1』を表しており、また、彼女も死ぬ1年ほど前から、自分のことを『御子』と名乗っていた」
    「御子と言えば、その後にも2度、出現したと言われておるな」
     手を挙げ黒板を指差したのは、わずかに白髪の残った眼鏡のエルフ。「知多星」と呼ばれた大学者、エドムント・ナイジェル博士だ。
    「330年の屏風山脈騒乱にも、リューク・ドワイトと言う中央軍の兵士がそう名乗っておったそうじゃ」
    「それと460年頃にも、南海にあったと言われているトライン教団の教祖が名乗っていたらしいですね」
     残る一人も手を挙げる。
    「そう、その通り。実はその2名の名前――『リューク』と『ゼルー』も、それぞれ『2』『3』を表しているんだ。
     この共通点から、この4名は正当な御子たちの系譜であると言う説が有力だ。そして恐らく、次に現れるであろう御子は、こう名乗るだろうと予測できる」
     ラルフは黒板に、「4番目=Fuet」と書いた。
    「どう読むんですか?」
    「『フェット』か、『フューエ』、もしくはもっと簡単に、『フー』だな」
    「ふむ」
    「と……。話は若干それたが、ともかく、名前には何らかの意味がある。
     君のコードネームを考える上でも、単純に番号を振り当てるだけでは、何の意味も成さない。ひいては存在理由など、哲学的意味においても……」「いいんじゃて、そんな細かいことは」
     ラルフの話を、ずっと苦い顔をしていたエドがさえぎった。
    「わしらはお前さんの長ったらしい講義を聞きに来たわけではない。シンプルかつ諜報員に似つかわしいコードネームを付ける上で、お前さんの意見を聞きに来ただけじゃ」
    「分かってる、分かってる。……コホン」
     ラルフも苦虫を噛み潰したような顔で、エドをにらむ。
    「それでリロイ君、君の名前は何て言ったっけな」
    「はい。リロイ・リキテン・グラッドです」
     その名前を聞きながら、ラルフは黒板に書き付ける。
    「リキテンって、スペルはLichtenかな?」
    「いえ、Liquitenです」
    「ふーん、『流体(Liquid)』からかな」
    「あと、リロイも違います。Leroyじゃなくて、Lliroyです」
    「Lばっかりだなぁ。……ふーん、Lか。じゃ、Lばっかりと言うことで、L‘sと言うのはどうだろう?」
    「エル、ス?」
    「そう。単純に番号を振り当てられるよりは、はるかに名前の体を成していると思わないか?」
    「なるほど。悪くは無い。よし、それではリロイ、お前さんのコードネームは『エルス』じゃ」
    「エルス……。はい、分かりました」
     リロイ――エルスは素直にうなずき、その名前を受け入れた。



    「へぇ……。ドールのおじいさんって、大学教授だったのね」
    「え、感心したトコそこぉ?」
     苦笑するドールを見て、巴景も口元を緩ませる。
    「ああ、いえ、ちょっと意外だなって。……それじゃ中佐がエルスに会ったのは、その後なのね」
    「ええ。結構、すぐだったんじゃないかしら」



    「さて、リロイ改め、エルス少尉。いきなりじゃが、チームを組んでもらいたい」
    「チーム、ですか」
     エドは黒板に2枚の写真を貼り付ける。
    「あれ? こっちの青い髪の女の子、リストちゃんじゃないですか」
    「そうじゃ。今年で16になるんじゃが、跳ねっ返りでのー」
    「それで、博士のお膝元で、ってことですか」
    「そう言うことじゃ」
     続いてエドは、もう一枚の写真を指差す。
    「そしてこちらは、新兵のフー・ヒノカミ。央南系の3世で、虎獣人の子じゃが……」
    「何だかワルそうな顔してますねー」
    「うむ。素行が悪く、これまでに何度も問題を起こしておる。軍の人事部は即刻辞めさせるべきじゃと言うとるが、戦闘能力はそれなりにある。15歳とまだ若く可能性はあるし、団体行動を学ばせれば使い物になる人材だと、わしは見ておる」
     二人の評価を聞き、エルスは腕を組んだ。
    「……つまり、人格的に問題のある人間2名を僕の下に就かせて、監視及び矯正させようと」
    「そうなる。ま、他に理由を挙げるとすれば、お前さん以外に適任がおらんのじゃ。他の候補者は皆、自分勝手でプライドの高い奴か、考え無しで粗暴なアホばかりじゃからのう」
    「なるほど、そう言われれば僕だけかも知れませんね」

     これが513年のことである。
     ここから2年後の515年まで、エルスはその2名とチームを組むことになった。

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    実は「蒼天剣」、ずっと前に書いた別の小説のリメイクなんです。
    その時の主人公は、晴奈ではなくエルス。
    話の量も、今現在の「蒼天剣」の5分の1くらいでした。

    折角なので、その一部をまとめ直して、次のスピンオフに出そうかな、と。
    乞うご期待。

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    2016.10.02 修正
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