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    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第7部

    蒼天剣・風師録 2

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    晴奈の話、第430話。
    L'sチームの誕生。

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    2.
     エルスとエドの前に立たされたその2名は、始終エルスたちをにらみつけていた。
    「こんにちは、リストちゃん。それからはじめまして、ヒノカミ君」
    「……」「……」
     エルスが会釈したが、依然二人はにらみ続けている。
    「これからこの3名で、チームを組んで行動してもらう。何か質問はあるか?」
     エドの言葉に、まずリストが手を挙げた。
    「帰っていい?」
    「ダメじゃ」
    「帰るわ」
    「ダメじゃと言うとろうが!」
     怒るエドに対し、リストはぷい、と顔を背ける。
    「何でアタシが、こんなヘラヘラした奴の下に就かなきゃいけないのよ」
    「お前さんが家で癇癪起こして、お母さんを殴ったからじゃろうが」
    「だって、あれはあの女が……」「自分の肉親を『あの女』呼ばわりするでない!」「……フン」
     リストは非常に反抗的な態度ばかりで、話を聞こうとしない。
     そしてもう一人、フーもずっとエルスをにらみ続けている。
    「……」
    「どうしたのかな?」
    「アンタ、エルス・グラッドっつったよな。聞いた通りのアホ面だな」
    「うん、そうだね」
     エルスはニコニコしたまま、フーに尋ねる。
    「君のうわさも聞いたよ。訓練中、同僚4名を殴り倒したんだってね」
    「ヘッ」
     フーも斜に構え、エルスとまともに話をしようとしない。
    「んー」
     エルスはエドに向き直り、質問した。
    「最初の任務って、何ですか?」
    「あ、いや。まずはチームに慣れてもらって……」
     エドが説明しかけた、次の瞬間。
    「うっ……?」「げっ……!」
     リストとフーが、突然倒れた。
    「お、おい? いきなり何をするんじゃリロ、……エルス?」
     リストたちを気絶させたのは、エルスだった。
    「慣れるって言うことなら、ともかく任務に就かせた方が早いんじゃないですか? これじゃ話もできそうにないし」
    「……うーむ」



    「ん……」「う……」
     リストとフーは、同時に目を覚ました。
    「え、……あれ? ここ、ドコよ」
    「知るかよ。……ん?」
     辺りを見回すと、そこは雪の無い林の中だった。明らかに王国の首都でも、首都周辺の山間部でもない。
    「暖かい……。ここって、沿岸部?」
    「知るかって」
     二人から少し離れたところで、エルスが単眼鏡を覗いている。エルスは覗きながら、二人に声をかけた。
    「やあ、おはよう」
    「おはよう、……じゃないわよ、何なのよアンタ!?」
    「ここ、どこだよ! いきなり何しやがるんだ、クソ野郎!」
    「……クスっ」
     依然単眼鏡を覗きながら、エルスは苦笑する。
    「何がおかしいんだよ、おい!」
    「ヒノカミ君……、フーって呼ばせてもらうけど、フー。『いきなり何しやがるんだ』ってその台詞、戦場の真っ只中でも言えると思う?」
    「あ?」
    「ここが戦場で、あっちこっちで斬り合い、撃ち合いになってたら、そんなのんきなこと言ってられないと思うよ。そんな悠長な台詞吐いてたら、あっと言う間に蜂の巣になっちゃうよ」
     エルスの言を、リストが鼻で笑う。
    「何それ? 屁理屈こねないでよね、バカっぽい顔のクセして。で、ここはドコなのよ?」
    「それからリストちゃん、君もだよ。現状を自分で把握しようともしないで、誰彼構わず『ここドコなのよ、教えなさいよタコ』みたいなことばっかり言ってちゃ、生き残れないよ」
    「……バカっぽいんじゃなくて、バカなのねアンタ。会話が成り立たないわ」
    「君が話を聞こうとしないんだろう? 聞きたければ教えるけれど、それで満足するとは思えないなぁ」
     つかみどころの無いエルスの話に、二人は次第にイラつき始めた。
    「いいから教えろよ、ボケが!」「言えって言ってんのよ、耳ついてんでしょ!?」
    「それからもう一つ。軍隊において団体行動は基本中の基本、第一に守るべきルールだ。部下は上官に従ってもらう。これが鉄則だよ」
    「偉そうにしてんじゃねーよ!」「何が団体行動よ、やってらんないわ!」
     ここでようやく、エルスは単眼鏡から目を離した。
    「もっかい気絶したいの? 今度気を失ったら多分、君たちは人間辞めちゃうことになるけど」
    「……は?」「何つった?」
     エルスは二人に手招きし、単眼鏡を渡した。
    「これで、あっちの方を見てごらん」
    「……?」
     二人は何を言いたいのかといぶかしがりながらも、エルスの示した方向を覗いてみた。
    「……何? あれ」
    「コンテナ」
    「それは分かってるわよ。……何を、詰めてるの?」
    「いい質問だね」
     エルスはにっこりと笑い、答えを述べた。
    「人間が積み込まれてるんだ。
     君たちが気絶したままここに放っておかれたら、目が覚めた時にはきっと袋詰めにされて、あのコンテナに乗ってると思うよ」
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