「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第8部
蒼天剣・回北録 2
晴奈の話、第454話。
小鈴とミラの共通点。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
2.
グリーンプールに戻ってすぐ、晴奈たちは山間部へ向かうための準備を始めた。
「具体的にはどのように進むのだ?」
「ルートは2つある。一つは主に軍が使っている、グリーンプールの東から首都付近へと直結しているキルシュ峠。だけど勿論、こちらはヒノカミ軍閥によって管理・封鎖されている。このルートは、僕らには使えない。
そこでもう一つの、一般的に使われているルートを進むことにする」
トマスは地図を広げ、グリーンプール北東にある峠道を指し示した。
「それがこの、ノルド峠。こちらは軍が管理しているわけじゃないから、恐らくすんなりと進める。さらにその先、山間部と沿岸部の中間に広がる平野を抜け、もう一度峠道を進む。
そこを越えれば山間部、首都フェルタイルに到着する」
「なるほど」
「だけど、整備されているとは言え昔からの難所だから、しっかり準備しないといけない。今日一日使って、装備を整えよう」
晴奈たち五人は街へと繰り出し、食糧と登山用品を探しに出た。
五人の中で最もかしましいのは小鈴とミラである。
「ねー、コレ何? この、真っ白い塊」
「あー、コレはですねぇ、お魚とかの塩漬けですねぇ。このまま焼いてぇ、周りの塩を砕いて中身を食べるんですよぉ」
食糧品店を回りながら、楽しそうに騒いでいる。
「へー、変わった食べ物ねぇ。中央じゃ、見たコトないわ」
「そうなんですかぁ? こっちの方だと、割と良くある食べ物ですよぉ」
「一回食べてみたいわね、コレ」
「あ、じゃあ中身を取り出したの、買ってみますぅ? あっちに並べてありましたよぉ」
「うん、食べる食べるっ」
二人の様子を後ろで見ていたトマスがボソッとつぶやく。
「仲いいなぁ、あの二人」
「そうだな……」
「……それにしても、まあ、その」
なぜか口ごもるトマスをいぶかしみ、晴奈はトマスに目を向けた。
「どうした?」
「その、なんだ、……似ているよね、あの二人」
「ふむ」
そう言われて眺めてみると、小鈴とミラは確かに良く似ている。
髪の色や肌の色合いは違うが、身長も近く、声の質も似ている。央南人離れした小鈴の目鼻立ちも、北方では良くなじんでおり、ミラの顔に似ていると言えば、そう見える。
それに体型の方も――。
「……ああ」
「ん?」
「お主もそう言う口か」
「え? 何が?」
晴奈は少し口を尖らせ、自分の胸を指で叩く。
「お主も胸が大きい女の方が好みなのだな」
「あ、いや。そうじゃなくて、いや、否定はしないけど」
「まったく……」
晴奈は呆れ、ため息をつく。
晴奈としては「これも男の性と言うものか」と内心笑っていたのだが、慌てるトマスがうっかり放った一言が、彼女の逆鱗に触れてしまった。
「いや、そのね、別に胸が大きいとか小さいとか、そんな点で女性を見たりしないよ、僕は、うん。セイナも魅力的だって、その、体型は別にして」
「……何だと?」
魚の塩包み焼きをほおばり、小鈴は幸せそうな笑顔を浮かべている。
「あんなに塩でゴテゴテ固めてたから塩辛いかなーとか思ってたけど、いーい感じに味が馴染んで、……ちょー美味しーぃ」
ミラも両手で塩焼きをつかみ、チビチビと食べながらニコニコしている。
「えへへー……、喜んでもらえたみたいで嬉しいですぅ」
北方料理を堪能しつつ、小鈴とミラは晴奈たちのところに戻った。
と、晴奈が顔を真っ赤にし、トマスに怒鳴りつけているのが見える。
「……あれぇ?」
「何かあったのかしら?」
二人の横でおろおろしていたバリーに話を聞いてみると、彼は顔を赤くして「なんか、その、……いや、……えっと」と、要領を得ない答えを返してきた。
「……何が何だか」
小鈴とミラは、首をかしげながら晴奈を眺めていた。
「この、大馬鹿めッ!」
晴奈はトマスをにらみ、なおまくしたてる。
「いや、ごめん。ほめたつもり……」
「どこがだッ!」
そこで、晴奈が刀に手をかけた。
「え」
「ちょ、晴奈!?」
やりすぎだと慌て、小鈴たちが止めに入ろうとした。が――。
「……それはそうと!」
晴奈は横から飛び込んできた何者かを牽制すべく、刀を抜いて彼らに顔を向けた。
「取り込み中だと言うのが見て分からぬか、雑兵!」
@au_ringさんをフォロー
小鈴とミラの共通点。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
2.
グリーンプールに戻ってすぐ、晴奈たちは山間部へ向かうための準備を始めた。
「具体的にはどのように進むのだ?」
「ルートは2つある。一つは主に軍が使っている、グリーンプールの東から首都付近へと直結しているキルシュ峠。だけど勿論、こちらはヒノカミ軍閥によって管理・封鎖されている。このルートは、僕らには使えない。
そこでもう一つの、一般的に使われているルートを進むことにする」
トマスは地図を広げ、グリーンプール北東にある峠道を指し示した。
「それがこの、ノルド峠。こちらは軍が管理しているわけじゃないから、恐らくすんなりと進める。さらにその先、山間部と沿岸部の中間に広がる平野を抜け、もう一度峠道を進む。
そこを越えれば山間部、首都フェルタイルに到着する」
「なるほど」
「だけど、整備されているとは言え昔からの難所だから、しっかり準備しないといけない。今日一日使って、装備を整えよう」
晴奈たち五人は街へと繰り出し、食糧と登山用品を探しに出た。
五人の中で最もかしましいのは小鈴とミラである。
「ねー、コレ何? この、真っ白い塊」
「あー、コレはですねぇ、お魚とかの塩漬けですねぇ。このまま焼いてぇ、周りの塩を砕いて中身を食べるんですよぉ」
食糧品店を回りながら、楽しそうに騒いでいる。
「へー、変わった食べ物ねぇ。中央じゃ、見たコトないわ」
「そうなんですかぁ? こっちの方だと、割と良くある食べ物ですよぉ」
「一回食べてみたいわね、コレ」
「あ、じゃあ中身を取り出したの、買ってみますぅ? あっちに並べてありましたよぉ」
「うん、食べる食べるっ」
二人の様子を後ろで見ていたトマスがボソッとつぶやく。
「仲いいなぁ、あの二人」
「そうだな……」
「……それにしても、まあ、その」
なぜか口ごもるトマスをいぶかしみ、晴奈はトマスに目を向けた。
「どうした?」
「その、なんだ、……似ているよね、あの二人」
「ふむ」
そう言われて眺めてみると、小鈴とミラは確かに良く似ている。
髪の色や肌の色合いは違うが、身長も近く、声の質も似ている。央南人離れした小鈴の目鼻立ちも、北方では良くなじんでおり、ミラの顔に似ていると言えば、そう見える。
それに体型の方も――。
「……ああ」
「ん?」
「お主もそう言う口か」
「え? 何が?」
晴奈は少し口を尖らせ、自分の胸を指で叩く。
「お主も胸が大きい女の方が好みなのだな」
「あ、いや。そうじゃなくて、いや、否定はしないけど」
「まったく……」
晴奈は呆れ、ため息をつく。
晴奈としては「これも男の性と言うものか」と内心笑っていたのだが、慌てるトマスがうっかり放った一言が、彼女の逆鱗に触れてしまった。
「いや、そのね、別に胸が大きいとか小さいとか、そんな点で女性を見たりしないよ、僕は、うん。セイナも魅力的だって、その、体型は別にして」
「……何だと?」
魚の塩包み焼きをほおばり、小鈴は幸せそうな笑顔を浮かべている。
「あんなに塩でゴテゴテ固めてたから塩辛いかなーとか思ってたけど、いーい感じに味が馴染んで、……ちょー美味しーぃ」
ミラも両手で塩焼きをつかみ、チビチビと食べながらニコニコしている。
「えへへー……、喜んでもらえたみたいで嬉しいですぅ」
北方料理を堪能しつつ、小鈴とミラは晴奈たちのところに戻った。
と、晴奈が顔を真っ赤にし、トマスに怒鳴りつけているのが見える。
「……あれぇ?」
「何かあったのかしら?」
二人の横でおろおろしていたバリーに話を聞いてみると、彼は顔を赤くして「なんか、その、……いや、……えっと」と、要領を得ない答えを返してきた。
「……何が何だか」
小鈴とミラは、首をかしげながら晴奈を眺めていた。
「この、大馬鹿めッ!」
晴奈はトマスをにらみ、なおまくしたてる。
「いや、ごめん。ほめたつもり……」
「どこがだッ!」
そこで、晴奈が刀に手をかけた。
「え」
「ちょ、晴奈!?」
やりすぎだと慌て、小鈴たちが止めに入ろうとした。が――。
「……それはそうと!」
晴奈は横から飛び込んできた何者かを牽制すべく、刀を抜いて彼らに顔を向けた。
「取り込み中だと言うのが見て分からぬか、雑兵!」
- 関連記事



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~