「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第8部
蒼天剣・回北録 7
晴奈の話、第459話。
レトロファッション?
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7.
しばらくすると、小鈴とネロが晴奈たちのところに戻ってきた。
「コスズさんのおかげで、色々と分かったよ。……と、彼女はまだ目を覚まさないみたいだね」
「ああ。眠ってはいるが、顔色はあまり良くない。食糧も持ってきているし、目を覚まし次第食べさせた方がいいだろう」
「ありがとう、助かるよ」
ネロが頭を下げたところで、「う……ん」とうめき声が聞こえてきた。
「あ、起きたかな」
ネロは女性の元に近寄り、声をかける。
「大丈夫かい?」
「……」
何かボソボソとしゃべっているが、良く聞き取れない。ネロは晴奈たちに向き直り、もう一度頭を下げた。
「すまないけれど、ちょっと二人きりにしてもらってもいいかい?」
「ああ、構わぬが……」
顔色の悪いその女性を見て、晴奈は不安になる。
「ひどく衰弱しているようだ。医者に診せるなりゆっくり休ませるなり、処置を受けた方がいいのでは?」
「そうだね。……あー、と。この山道、実は進んでいくと、山間部に出られるようになっているんだ。彼女をどうにかして上まで運んで、そこで診察してもらおう」
「えっ」
トマスが驚き、尋ね返す。
「山間部って言うと、フェルタイルに?」
「ああ。……いいかな、二人きりにしてもらっても」
「あ、うん」
晴奈たちはネロと女性を置いて、洞穴を出た。
「大当たり、ね」
洞穴から離れたところで、五人は輪になってネロの話を吟味する。
「そうみたいだね。……いや、まさか本当にあるなんて」
「コレで軍閥の件、何とかなりそうですねぇ」
「そうだな。……それにしても、あのネロと言う男」
晴奈は腕を組み、ネロの素性を怪しんでいる。
「着ているものも、話し方も、そして何故こんなところにいるのか、も。何から何まで、怪しい点ばかりだ。
一体、何者なのだろうか」
「さあ……、分からないな。だけど多分、悪い人間ではないと思うよ。警戒している様子は無かったし、誰かに追われている感じでは無さそうだった」
「それは確かに。……となると、ここに隠棲していたのだろうか」
「お名前も『ハーミット(隠者、隠れ住む者の意)』さんでしたしねぇ」
「それにしては、洞穴に家具も何も無かった。まるで、いきなりどこかから強制的に運び込まれたかのように、何も持っていなかった。
僕のプロファイリング(行動や所持品などの手がかりから、人物の素性を洗い出す推理法)を以ってしても、彼が何者なのかさっぱり分からないよ」
トマスは空を仰ぎ、両手を上げた。
「お待たせ」
と、ネロが歩いてくる。
「ごめんね、何度も待たせちゃって。今、君たちのことを彼女に説明していたんだ。すまないけれど、またこっちに来てくれるかな?」
「ああ、構わぬ」
五人はネロを先頭にして、もう一度洞穴に向かった。
「コホン、……ジーナ、戻ってきたよ」
「ん……」
先程まで横たわっていた女性が上半身を起こす。
だが、なぜか晴奈たちの方に顔を向けようとしない。と言うよりも、皆がどこにいるのか分かっていないような様子である。
「もしかして、目が?」
「そのようじゃ……」
ジーナと呼ばれた女性も、ネロに会った時と同じように老人のようなしゃべり方をしている。
「皆さん、すまぬがまだ、脚に力が入りきらんので、失礼じゃがこのままの状態で、挨拶させてくだされ。
わしの名は、ジーナ・ルーカス、と言う。その……、気が付いたらこの場所におったんじゃ。そちらにおるネロも、同様に連れ去られてきたと」
「ふむ」
トマスは興味を惹かれ、ジーナをまじまじと見つめる。
「目は、前から悪かったの?」
「いや……、目が覚めた時から、じゃな」
「と言うことは、失明は体の衰弱から来ているのかも知れないね。早めに治療を受けた方がいい。……バリー、頼めるかな?」
「ああ、分かった」
バリーはジーナの体を助け起こして背負い、これ以上疲労しないように布でしっかりと固定した。
「少し辛いかも知れないけど、我慢してね」
「うむ……」
バリーが背負おうとしている間にも、トマスはジーナを観察していた。
(見た感じ、20台半ばくらいだな。顔は一般的な北方系だし、言葉も――大分古いけれど――北方語の雰囲気がある。間違いなく、北方人だろうな。
それにしても気になるのは、その『古さ』だ。一体、なぜこんなにも、古臭い服装や言葉遣いをしているんだろう? まるで、100年も200年も昔からタイムスリップしたような……)
「よし、準備は整った。すぐ向かおう」
「あ、うん」
途中でネロにさえぎられ、トマスは観察をやめた。
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7.
しばらくすると、小鈴とネロが晴奈たちのところに戻ってきた。
「コスズさんのおかげで、色々と分かったよ。……と、彼女はまだ目を覚まさないみたいだね」
「ああ。眠ってはいるが、顔色はあまり良くない。食糧も持ってきているし、目を覚まし次第食べさせた方がいいだろう」
「ありがとう、助かるよ」
ネロが頭を下げたところで、「う……ん」とうめき声が聞こえてきた。
「あ、起きたかな」
ネロは女性の元に近寄り、声をかける。
「大丈夫かい?」
「……」
何かボソボソとしゃべっているが、良く聞き取れない。ネロは晴奈たちに向き直り、もう一度頭を下げた。
「すまないけれど、ちょっと二人きりにしてもらってもいいかい?」
「ああ、構わぬが……」
顔色の悪いその女性を見て、晴奈は不安になる。
「ひどく衰弱しているようだ。医者に診せるなりゆっくり休ませるなり、処置を受けた方がいいのでは?」
「そうだね。……あー、と。この山道、実は進んでいくと、山間部に出られるようになっているんだ。彼女をどうにかして上まで運んで、そこで診察してもらおう」
「えっ」
トマスが驚き、尋ね返す。
「山間部って言うと、フェルタイルに?」
「ああ。……いいかな、二人きりにしてもらっても」
「あ、うん」
晴奈たちはネロと女性を置いて、洞穴を出た。
「大当たり、ね」
洞穴から離れたところで、五人は輪になってネロの話を吟味する。
「そうみたいだね。……いや、まさか本当にあるなんて」
「コレで軍閥の件、何とかなりそうですねぇ」
「そうだな。……それにしても、あのネロと言う男」
晴奈は腕を組み、ネロの素性を怪しんでいる。
「着ているものも、話し方も、そして何故こんなところにいるのか、も。何から何まで、怪しい点ばかりだ。
一体、何者なのだろうか」
「さあ……、分からないな。だけど多分、悪い人間ではないと思うよ。警戒している様子は無かったし、誰かに追われている感じでは無さそうだった」
「それは確かに。……となると、ここに隠棲していたのだろうか」
「お名前も『ハーミット(隠者、隠れ住む者の意)』さんでしたしねぇ」
「それにしては、洞穴に家具も何も無かった。まるで、いきなりどこかから強制的に運び込まれたかのように、何も持っていなかった。
僕のプロファイリング(行動や所持品などの手がかりから、人物の素性を洗い出す推理法)を以ってしても、彼が何者なのかさっぱり分からないよ」
トマスは空を仰ぎ、両手を上げた。
「お待たせ」
と、ネロが歩いてくる。
「ごめんね、何度も待たせちゃって。今、君たちのことを彼女に説明していたんだ。すまないけれど、またこっちに来てくれるかな?」
「ああ、構わぬ」
五人はネロを先頭にして、もう一度洞穴に向かった。
「コホン、……ジーナ、戻ってきたよ」
「ん……」
先程まで横たわっていた女性が上半身を起こす。
だが、なぜか晴奈たちの方に顔を向けようとしない。と言うよりも、皆がどこにいるのか分かっていないような様子である。
「もしかして、目が?」
「そのようじゃ……」
ジーナと呼ばれた女性も、ネロに会った時と同じように老人のようなしゃべり方をしている。
「皆さん、すまぬがまだ、脚に力が入りきらんので、失礼じゃがこのままの状態で、挨拶させてくだされ。
わしの名は、ジーナ・ルーカス、と言う。その……、気が付いたらこの場所におったんじゃ。そちらにおるネロも、同様に連れ去られてきたと」
「ふむ」
トマスは興味を惹かれ、ジーナをまじまじと見つめる。
「目は、前から悪かったの?」
「いや……、目が覚めた時から、じゃな」
「と言うことは、失明は体の衰弱から来ているのかも知れないね。早めに治療を受けた方がいい。……バリー、頼めるかな?」
「ああ、分かった」
バリーはジーナの体を助け起こして背負い、これ以上疲労しないように布でしっかりと固定した。
「少し辛いかも知れないけど、我慢してね」
「うむ……」
バリーが背負おうとしている間にも、トマスはジーナを観察していた。
(見た感じ、20台半ばくらいだな。顔は一般的な北方系だし、言葉も――大分古いけれど――北方語の雰囲気がある。間違いなく、北方人だろうな。
それにしても気になるのは、その『古さ』だ。一体、なぜこんなにも、古臭い服装や言葉遣いをしているんだろう? まるで、100年も200年も昔からタイムスリップしたような……)
「よし、準備は整った。すぐ向かおう」
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