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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第8部

    蒼天剣・蒼天録 1

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    晴奈の話、第476話。
    薄暗い霧の中で。

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    1.
     霧深い、岩山の中。
    「……『F5』……防衛……」
    「……侵入者……排除……」
     岩の塊たちは、ゴトゴトと音を立ててその場を離れていった。
    「……何じゃ、今のは?」
     離れたところで様子を伺っていた晴奈とジーナが、そっと姿を現した。
    「分からぬ。……岩の塊が、しゃべっていたように見えたが」
    「岩の、塊?」
    「ああ。私の背丈の、3倍、4倍はあろうかと言う身の丈の岩が、何かをしゃべっていた。
     一体何だろうか、『F5』とは……?」



    「ど、ドコ行っちゃったの、セイナとジーナさんは!?」
     突然目の前から消えた晴奈たちに、リストは目を白黒させている。小鈴と明奈も同様に、慌てふためいている。
    「一体、何が……?」
    「もしかして、この魔法陣が原因?」
     小鈴は自分のかばんから魔術書と手帳を引っ張り出し、魔法陣を解析する。
    「……で……ココに魔力が集積されて……うん……やっぱり、コレは『テレポート』っぽい……、えっ? ……コレじゃ、……逆じゃん」
    「何か分かったんですか?」
    「やっぱり、基本は『テレポート』の魔法陣じゃないかな、と思うんだけど……」
     小鈴は頭を抱え、短くうなる。
    「あたしなんかじゃさっぱり分かんないくらい、無茶苦茶レベル高い術式で構成されてんのよ。晴奈たちがドコに行ったのか、全然分かんないわ……」
    「わたしにも何が、どう、書かれているのか」
     明奈もぺたりと猫耳を伏せ、困った顔をする。
    「あと、魔術の心得がある人と言えば……」
    「エルスも魔術使えるけど、……分かるかしら」
     と、その本人が騒ぎを聞きつけ、ひょいと顔を出した。
    「何か騒がしいけど、どうかしたの?」
    「あ、エルスさん」
     エルスの横には、トマスもいる。
    「あれ、セイナは?」
    「それが……」
     小鈴たちは晴奈とジーナが、大火から送られた手紙を手にした途端、目の前から消えてしまったことを説明した。
    「それじゃ、どこに行ったか分からないの?」
     トマスは驚いた顔で、残った黒い封筒を手に取る。
    「……大丈夫かな、セイナ」
     その表情からは、非常に不安がっている様子が見て取れる。それを見た小鈴は、ぷっと噴き出した。
    「ぷ、ふふ、んふふふ……」
    「ど、どうして笑うの?」
    「いや、……そーいやあたしたち、晴奈がドコ行ったのかってコトばっかり考えて、晴奈の身の心配してなかったって思って、んふふ……」
    「心配じゃないの?」
     信じられないと言う顔をしたトマスに、小鈴はぴらぴらと手を振って答える。
    「んー、そもそもそんなに心配するコトもないんじゃないかなーって。だって、晴奈だし」
    「まあ……、そうですね。お姉さまでしたら、大丈夫でしょうね」
    「そんな言い方……」
     トマスの顔がこわばったままなので、小鈴はやんわりと説明した。
    「ん、だってさ、あの子は何でもできる子だもん。あたしらの心配なんか、いらないって」
    「……」
     憮然とした顔で座り込んだトマスをよそに、エルスの方は、魔法陣が描かれた便箋を眺めている。
    「それで、これがその魔法陣?」
    「ええ」
    「僕にも詳しいことは良く分からないけど、相当高度な術式をふんだんに使ってる。流石、『黒い悪魔』が描いただけはある。
     興味が出てきたな、そのカツミが遺したと言う刀に」



     晴奈はジーナの手を引き、恐る恐る霧の中を進んでいた。
    (せめて刀があれば……)
     突然のことだったので、晴奈は刀を佩いていなかったし、ジーナも杖を置いてきてしまった。二人は心細い気分で、岩山の中を闇雲に歩いていた。
    「……出口は、あるんじゃろうか」
    「どうだろうな……」
     武器も補助具も無い、丸腰の二人にとってこの状況は、吹雪の中を歩くよりも厳しいものだった。
     そして運の悪いことに――。
    「……っ」
     霧の向こうから、あの岩の塊――ゴーレムがやってきた。
    「……動的物体……発見……」
     晴奈たちを正面に捉えたゴーレムは、ボソボソと何かをつぶやく。
    「動的、物体?」
    「わしらのことではないか?」
     晴奈とジーナが話している間にも、ゴーレムはボソボソと独り言を続ける。
    「データ照合……」
    「うっ……?」
     ゴーレムの胸の辺りがぱくりと開き、晴奈とジーナの顔に赤く、鋭い光が照射される。
    「何じゃ? 何かぼんやり、明るいものが……」
     晴奈には眩しく感じるこの光も、ジーナには蛍程度にしか感じていないらしい。
     その間に、ゴーレムは作業を終えたようだ。
    「……動的物体1……データ無し……2……データ無し……」
     ゴーレムの胸がぱたんと閉じ、続いて頭から筒のようなものが飛び出した。
    「侵入者……侵入者……」
     ゴーレムはワンワンと言う鈍い音を発し始める。どうやら、警笛か何かのようだ。
    「まずいぞ、これは……!」
     晴奈はジーナを背負い、その場から走り出した。

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    2016.10.30 修正
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    交換できないのですが、……って断言できるんですね。
    テレポート使えるんですか?

    NoTitle 

    そういえば、某超能力者マンガでアポートとテレポートが明確に違っていましたね。基本的には等価値でしか、交換できないのですが。・・・・まあ、物質において、ものの価値は時代で変わりますからね。結構、テレポートを使用する場面のときは気をつかいますね。
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