「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第8部
蒼天剣・狐騒録 4
晴奈の話、第488話。
ミイラ取りがミイラに。
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4.
「何か……、さっきから」
トラムから話を聞いたものの、ジュリアたちは特に手がかりとなるような話を聞けなかった。そこで住民に聞き込みをしようとラーガ邸を離れたところで、エランが口を開いた。
「耳の奥がザワザワしてるんですよね」
「風邪か?」
「いえ、そんな感じじゃないんですけど」
「おいおい勘弁してくれよ、エラン」
フェリオがニヤニヤしながら、エランの背中を叩く。
「異変調査に来た公安が倒れたなんて、笑い話にもなりゃしないぜ?」
「そ、そうですね」
エランは苦笑いしながら、狐耳をポンポンとはたいた。
「んじゃ、二手に分かれて聞き込みに回るぞ。俺とジュリアのチーム、フェリオとエランとフォルナのチームで」
「了解」
聞き込みを始めてから、一週間ほどが経った。
その日もフォルナたちは島民たちに聞き込みを行っていたが、一向に有力な情報は得られていなかった。
「……これで、この地区は全滅ですわね」
「あーあ……」
フォルナとフェリオは公園の椅子に座り込み、うなだれていた。
「エランも休憩したらどうだ? んなトコ突っ立ってないで……」
フェリオが声をかけたが、エランは反応しない。
「おーい、どうし……」「しっ」
もう一度声をかけようとしたフェリオの口を、フォルナがふさいだ。
「むぐ……?」
「先程からエラン、何か様子がおかしいですわ」
「ん?」
フォルナとフェリオは、エランの様子をじっと探る。そのうちに、エランがフラフラと歩き出した。
「……後を追ってみましょう」
「おう」
エランはゆるい紐に引っ張られているように、覚束ない足取りで道を進んでいく。
「ラーガ邸か……?」
フェリオの予想通り、エランはラーガ邸に入っていった。
「おや、……えーと、エランさんでしたかな」
途中でトラムに会ったが、エランは無言で通り過ぎる。
「あ、あれ?」
その後を追ってきたフェリオたちが、トラムに頭を下げる。
「すみませんっス! どうもあいつ、様子が変で……」
「様子が? ……まさか彼も、神経を?」
トラムも加え、三人はエランの後をつける。
やがてエランは、タイル張りの壁の前で立ち止まった。
「エラン、どうしたんだ?」
フェリオが尋ねるが、エランは依然応えようとしない。その代わりに、エランは壁をそっと押した。
「……!?」
タイルの一つが音も無く壁の中に沈み、その下のタイル数枚がまとめて傾いた。
「隠し扉……?」
「……フェリオさん! トラムさん! エランを止めて!」
そこでフォルナが、慌ててエランの体を羽交い絞めにした。
「え? えっ?」
二人は戸惑ったが、フォルナの言う通りにする。
「……つ……ね……」
エランの目はうつろになっており、ぶつぶつと何かをつぶやいている。
「エラン! 目を覚ましなさい、エラン!」
「おい、しっかりしろッ!」
フェリオがエランの顔を殴りつけ、無理矢理に動きを止めさせた。
「……きつ……ねが……」
エランはそれだけ言って、そのまま気を失った。
エランが倒れたため、公安チームは病院に集合した。
「エラン君も昏倒してしまうなんて……」
報告を受けたジュリアは、額を押さえて呆れ返っていた。
「にしても、ラーガ邸に隠し扉なんてなぁ」
ベッドに横たわったエランを眺めながら、バートがうなる。
「中は見たのか?」
「はい。どうも、地下に続く階段みたいっス」
「そうか。あの屋敷の下って言うと、丘の内部部分だよな」
「恐らく、そうでしょうね」
成り行きで付いてきていたトラムは、目を白黒させている。
「聞いたことがありません、屋敷の地下に何かがあると言うのは……」
「……あ」
そこで、フォルナが昔この島で聞いた話を思い出した。
「そう言えば、ホーランド教授と言う方がこの島の丘は、人工的に造られたものだと仰っておりましたわね。もっとも、中に何か埋めたとは聞いておりませんけれども」
「ホーランド教授? ……あれ?」
トラムもその名前を聞き、何かを思い出したらしい。
「昔、屋敷内に不法侵入した兎獣人の老人が、そう名乗っていたような……。いや、待てよ」
トラムは病室を抜け出し、しばらくしてから戻ってきた。
「その方、最初に昏倒した方でもありますね。まだ、入院されていました」
「ホーランド教授が、この病院に?」
思いもよらない話に、フォルナは目を丸くした。
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ミイラ取りがミイラに。
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「何か……、さっきから」
トラムから話を聞いたものの、ジュリアたちは特に手がかりとなるような話を聞けなかった。そこで住民に聞き込みをしようとラーガ邸を離れたところで、エランが口を開いた。
「耳の奥がザワザワしてるんですよね」
「風邪か?」
「いえ、そんな感じじゃないんですけど」
「おいおい勘弁してくれよ、エラン」
フェリオがニヤニヤしながら、エランの背中を叩く。
「異変調査に来た公安が倒れたなんて、笑い話にもなりゃしないぜ?」
「そ、そうですね」
エランは苦笑いしながら、狐耳をポンポンとはたいた。
「んじゃ、二手に分かれて聞き込みに回るぞ。俺とジュリアのチーム、フェリオとエランとフォルナのチームで」
「了解」
聞き込みを始めてから、一週間ほどが経った。
その日もフォルナたちは島民たちに聞き込みを行っていたが、一向に有力な情報は得られていなかった。
「……これで、この地区は全滅ですわね」
「あーあ……」
フォルナとフェリオは公園の椅子に座り込み、うなだれていた。
「エランも休憩したらどうだ? んなトコ突っ立ってないで……」
フェリオが声をかけたが、エランは反応しない。
「おーい、どうし……」「しっ」
もう一度声をかけようとしたフェリオの口を、フォルナがふさいだ。
「むぐ……?」
「先程からエラン、何か様子がおかしいですわ」
「ん?」
フォルナとフェリオは、エランの様子をじっと探る。そのうちに、エランがフラフラと歩き出した。
「……後を追ってみましょう」
「おう」
エランはゆるい紐に引っ張られているように、覚束ない足取りで道を進んでいく。
「ラーガ邸か……?」
フェリオの予想通り、エランはラーガ邸に入っていった。
「おや、……えーと、エランさんでしたかな」
途中でトラムに会ったが、エランは無言で通り過ぎる。
「あ、あれ?」
その後を追ってきたフェリオたちが、トラムに頭を下げる。
「すみませんっス! どうもあいつ、様子が変で……」
「様子が? ……まさか彼も、神経を?」
トラムも加え、三人はエランの後をつける。
やがてエランは、タイル張りの壁の前で立ち止まった。
「エラン、どうしたんだ?」
フェリオが尋ねるが、エランは依然応えようとしない。その代わりに、エランは壁をそっと押した。
「……!?」
タイルの一つが音も無く壁の中に沈み、その下のタイル数枚がまとめて傾いた。
「隠し扉……?」
「……フェリオさん! トラムさん! エランを止めて!」
そこでフォルナが、慌ててエランの体を羽交い絞めにした。
「え? えっ?」
二人は戸惑ったが、フォルナの言う通りにする。
「……つ……ね……」
エランの目はうつろになっており、ぶつぶつと何かをつぶやいている。
「エラン! 目を覚ましなさい、エラン!」
「おい、しっかりしろッ!」
フェリオがエランの顔を殴りつけ、無理矢理に動きを止めさせた。
「……きつ……ねが……」
エランはそれだけ言って、そのまま気を失った。
エランが倒れたため、公安チームは病院に集合した。
「エラン君も昏倒してしまうなんて……」
報告を受けたジュリアは、額を押さえて呆れ返っていた。
「にしても、ラーガ邸に隠し扉なんてなぁ」
ベッドに横たわったエランを眺めながら、バートがうなる。
「中は見たのか?」
「はい。どうも、地下に続く階段みたいっス」
「そうか。あの屋敷の下って言うと、丘の内部部分だよな」
「恐らく、そうでしょうね」
成り行きで付いてきていたトラムは、目を白黒させている。
「聞いたことがありません、屋敷の地下に何かがあると言うのは……」
「……あ」
そこで、フォルナが昔この島で聞いた話を思い出した。
「そう言えば、ホーランド教授と言う方がこの島の丘は、人工的に造られたものだと仰っておりましたわね。もっとも、中に何か埋めたとは聞いておりませんけれども」
「ホーランド教授? ……あれ?」
トラムもその名前を聞き、何かを思い出したらしい。
「昔、屋敷内に不法侵入した兎獣人の老人が、そう名乗っていたような……。いや、待てよ」
トラムは病室を抜け出し、しばらくしてから戻ってきた。
「その方、最初に昏倒した方でもありますね。まだ、入院されていました」
「ホーランド教授が、この病院に?」
思いもよらない話に、フォルナは目を丸くした。
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今日の旅岡さん

~ Comment ~
NoTitle
リーダー格がこういう何かに取りつかれたような発言をするとショックはひときわですよね。。。ということを今回の話で思いますね。
人の重みというものを感じますね。
人の重みというものを感じますね。
- #1865 LandM
- URL
- 2014.04/05 20:18
- ▲EntryTop
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NoTitle
まあ、それはともかく。
リーダーでなくとも、知人や友人がいきなり変調をきたすと言うのは恐ろしいですね。