「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第8部
蒼天剣・騒心録 7
晴奈の話、第497話。
真ん中がはっきりしないシーソー。
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7.
小鈴は晴奈たちと離れた後、トマスを訪ねていた。
「どうしたの、コスズさん?」
宿で本を読んでいたトマスに、小鈴は単刀直入に尋ねた。
「率直に聞くわよ。アンタ、晴奈のコト好き?」
「へ」
ストレートな質問に、トマスは面食らった。
「え、それはどう言う意味……」「どーもこーも、そのまんま。恋人にしたいと思うかって言う、好きの意味で」
トマスは黙り込み、顔を赤くする。
「それは……、その……、どっちかと言えば」「ゴチャゴチャごまかしてる場合じゃないわよ」
小鈴はトマスに顔を近づけ、真剣な表情を作って伝えた。
「エルスさんが、告ったらしーわよ」
「え、……え?」
トマスの顔から、さっと赤が引く。
「しかも彼女、まんざらでもなさそーにしてるし。このまんまボーっとしてたら、取られるわよ」
「いや、セイナはまだ、僕のものってわけじゃ」「ま、だ?」
小鈴はキッと、トマスをにらむ。
「あ、……いや、他意は無いんだ、その」
「ハッキリしなさいよ、トマス。アンタは好きなの、嫌いなの?」
「……そりゃ、……好きだよ。……でも、セイナがリロイを選ぶって言うなら」
「何言ってんのよ」
小鈴はグイグイと、トマスにプレッシャーをかける。
「アンタそれでいいの? 何にもせず、好きな子が自分の手の届かないトコに行っちゃって、それで『良かった』と思うの?
あたしの友達にもいたわ、そーゆータイプ。どうしても勇気出なくて、好きな人にどーしても告白できなくてウジウジしてる間に逃しちゃったのよ、その人を。その時のヘコみようったら、そりゃもう……」
「でも、セイナはリロイを選んだんだろう、もう。まんざらでもないって言うなら……」
「だったらあたしはこっちに来てないわよ。もうまとまった話を引っかき回すほど、シュミ悪くないし。
迷ってんのよ、晴奈は。『エルスさんはいい人だが、恋人として好きかと言われると、ピンと来ない。本当に、相手はエルスさんでいいのか』ってね」
「……」
「まだチャンスがあんのよ、アンタには。それを、ウジウジして逃すなんてバカな真似、絶対させないからね」
まくしたてる小鈴に、トマスはぽつりと質問をぶつけた。
「……何で僕に、そこまで」
「あたしはね、アンタや雪乃、……さっき言ってた子みたいなタイプを応援したくなるタチなのよ。……頑張ってみなさいって」
それだけ言って、小鈴はその場を離れた。
一方、晴奈はまだ悩んでいた。
「うーむ……」
崖の端に座り込み、湖を眺めながらうなっている晴奈に、妹たちは小声で意見を交し合う。
「確かに、コスズさんの言う通りかも知れませんわね。お姉さまも、いい歳ですし」
「そうですね。わたしとお姉さまの母も、結婚したのが25の時だったと聞きますから」
「あら、そうなのですか」
「あ、そう言えば父も、その時30歳だったそうです。そう考えると、案外お似合いかも」
「エルスさんが、ですか? 今、おいくつでしたかしら?」
「32ですね」
「と言うことは、27と32。……なるほど、お似合いかも知れませんわね」
「でしょう? ……うん、考えれば考えるほど、いい縁組かも」
「そうですわね。では、今からお祝いの準備しておいた方がよろしいかも」
「それはまだ、……ああ、でも案外すっぱり決まってしまうかも知れませんね。準備しておいて損は……」「二人とも」
晴奈が憮然とした顔で、二人を呼んだ。
「もう集合の時間だ。行こう」
「あ、はい」
晴奈はラーガ邸へと歩きかけ、くる、と振り向いた。
「……言っておくが。まだ早い。私はまだ、うんともいやとも答えてない」
「はい、はい」「分かっておりますわ、クスクス」
明奈とフォルナは、晴奈の顔を見てニヤニヤしていた。
皆がラーガ邸の隠し扉の前に集合したところで、エルスが口を開いた。
「それじゃ、調査を始めようか」
それに、晴奈が答える。
「ああ」
晴奈とエルスが先に階段を下り、続けて公安チームが進む。
「気をつけて行きましょう」
「了解」
続いて、明奈と小鈴、トマス。
「気ぃ抜いたらホントに危ないし、ここは気を引き締めて行きましょ」
「わ、分かってるよ」
最後に、ネロとジーナ。
「うーむ」
「どしたの?」
「何と言うか、……混沌としておるな」
「そうだね。……向こうも、僕らも」
「察しておったか」
「うん。……大丈夫かなぁ、みんな」
晴奈の心がざわついたまま、任務は始まった。
蒼天剣・騒心録 終
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真ん中がはっきりしないシーソー。
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7.
小鈴は晴奈たちと離れた後、トマスを訪ねていた。
「どうしたの、コスズさん?」
宿で本を読んでいたトマスに、小鈴は単刀直入に尋ねた。
「率直に聞くわよ。アンタ、晴奈のコト好き?」
「へ」
ストレートな質問に、トマスは面食らった。
「え、それはどう言う意味……」「どーもこーも、そのまんま。恋人にしたいと思うかって言う、好きの意味で」
トマスは黙り込み、顔を赤くする。
「それは……、その……、どっちかと言えば」「ゴチャゴチャごまかしてる場合じゃないわよ」
小鈴はトマスに顔を近づけ、真剣な表情を作って伝えた。
「エルスさんが、告ったらしーわよ」
「え、……え?」
トマスの顔から、さっと赤が引く。
「しかも彼女、まんざらでもなさそーにしてるし。このまんまボーっとしてたら、取られるわよ」
「いや、セイナはまだ、僕のものってわけじゃ」「ま、だ?」
小鈴はキッと、トマスをにらむ。
「あ、……いや、他意は無いんだ、その」
「ハッキリしなさいよ、トマス。アンタは好きなの、嫌いなの?」
「……そりゃ、……好きだよ。……でも、セイナがリロイを選ぶって言うなら」
「何言ってんのよ」
小鈴はグイグイと、トマスにプレッシャーをかける。
「アンタそれでいいの? 何にもせず、好きな子が自分の手の届かないトコに行っちゃって、それで『良かった』と思うの?
あたしの友達にもいたわ、そーゆータイプ。どうしても勇気出なくて、好きな人にどーしても告白できなくてウジウジしてる間に逃しちゃったのよ、その人を。その時のヘコみようったら、そりゃもう……」
「でも、セイナはリロイを選んだんだろう、もう。まんざらでもないって言うなら……」
「だったらあたしはこっちに来てないわよ。もうまとまった話を引っかき回すほど、シュミ悪くないし。
迷ってんのよ、晴奈は。『エルスさんはいい人だが、恋人として好きかと言われると、ピンと来ない。本当に、相手はエルスさんでいいのか』ってね」
「……」
「まだチャンスがあんのよ、アンタには。それを、ウジウジして逃すなんてバカな真似、絶対させないからね」
まくしたてる小鈴に、トマスはぽつりと質問をぶつけた。
「……何で僕に、そこまで」
「あたしはね、アンタや雪乃、……さっき言ってた子みたいなタイプを応援したくなるタチなのよ。……頑張ってみなさいって」
それだけ言って、小鈴はその場を離れた。
一方、晴奈はまだ悩んでいた。
「うーむ……」
崖の端に座り込み、湖を眺めながらうなっている晴奈に、妹たちは小声で意見を交し合う。
「確かに、コスズさんの言う通りかも知れませんわね。お姉さまも、いい歳ですし」
「そうですね。わたしとお姉さまの母も、結婚したのが25の時だったと聞きますから」
「あら、そうなのですか」
「あ、そう言えば父も、その時30歳だったそうです。そう考えると、案外お似合いかも」
「エルスさんが、ですか? 今、おいくつでしたかしら?」
「32ですね」
「と言うことは、27と32。……なるほど、お似合いかも知れませんわね」
「でしょう? ……うん、考えれば考えるほど、いい縁組かも」
「そうですわね。では、今からお祝いの準備しておいた方がよろしいかも」
「それはまだ、……ああ、でも案外すっぱり決まってしまうかも知れませんね。準備しておいて損は……」「二人とも」
晴奈が憮然とした顔で、二人を呼んだ。
「もう集合の時間だ。行こう」
「あ、はい」
晴奈はラーガ邸へと歩きかけ、くる、と振り向いた。
「……言っておくが。まだ早い。私はまだ、うんともいやとも答えてない」
「はい、はい」「分かっておりますわ、クスクス」
明奈とフォルナは、晴奈の顔を見てニヤニヤしていた。
皆がラーガ邸の隠し扉の前に集合したところで、エルスが口を開いた。
「それじゃ、調査を始めようか」
それに、晴奈が答える。
「ああ」
晴奈とエルスが先に階段を下り、続けて公安チームが進む。
「気をつけて行きましょう」
「了解」
続いて、明奈と小鈴、トマス。
「気ぃ抜いたらホントに危ないし、ここは気を引き締めて行きましょ」
「わ、分かってるよ」
最後に、ネロとジーナ。
「うーむ」
「どしたの?」
「何と言うか、……混沌としておるな」
「そうだね。……向こうも、僕らも」
「察しておったか」
「うん。……大丈夫かなぁ、みんな」
晴奈の心がざわついたまま、任務は始まった。
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~ Comment ~
NoTitle
友達から恋人に入るのか。
あるいは恋人から入るのか。
その辺は関係性の違いからなるものですが。
友達から入る方が別れてからも関係性が続く可能性もありますから長くなりそうですよね。
あるいは恋人から入るのか。
その辺は関係性の違いからなるものですが。
友達から入る方が別れてからも関係性が続く可能性もありますから長くなりそうですよね。
- #1886 LandM
- URL
- 2014.05/03 18:10
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NoTitle
一目惚れと言うような話もありますし、いきなり恋人関係になることもままあります。
人それぞれ、と言ってしまえばそれまでですが。