「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第8部
蒼天剣・狐狩録 1
晴奈の話、第498話。
狐を狩るのか、狩られるか。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
晴奈たちは灯りを片手に、階段を下りていく。
「大分、降りていくみたいだね。空気も変わった」
「ああ」
と、追いついてきた公安チームが首をかしげる。
「おかしいわね……?」
「え?」
「こんなにこの階段、長かったっスかね?」
「わたくしの記憶では、すぐに到着したはずですけれど」
「ええ、私もそう思うわ」
さらに、後方の明奈と小鈴がつぶやく。
「何だか、肌が粟立つような……」
「ええ。とてつもなく、静かで殺気を満ちた空気――まるで、どっかからじーっとにらまれてるよーな、そんな気配がするわね」
続いてネロとジーナが――何も言わない。
いや、それどころか彼らの衣擦れや靴の音すら、聞こえてこない。
「ネロ?」
小鈴が振り返り、声をかける。
しかし、そこには誰もいなかった。
「……おかしい。空気があまりにも違う」
「うん、そうだね。……ワープさせられた」
ネロの言葉に、ジーナはネロの袖をぎゅっと握りしめた。
「わ、ワープ?」
「うん。階段を下りていたはずなのに、いつの間にか、どこかの部屋にいる。それに、みんなの姿も無い」
「なんじゃと……」
ジーナの袖を握る力が、一段強くなる。
「……ジーナ。すまないけど、モンスターが出た時は頼む」
「……分かった。ネロ、お主も注意して見ておいてくれ」
「うん」
ジーナがネロの腕に抱きついたところで、後ろから申し訳無さそうな声が飛んできた。
「……すんません、俺もいます」
「え? えーと、……公安の、フェリオさん、だっけ」
「はい、フェリオっス。……よろしく、です」
「ネロさんたちが、……消えたって?」
階段の途中でエルスが振り返り、後方の皆に聞き返す。
「ええ。さっきまで、後ろにいたはずなのに」
「穏やかじゃないな、どうも」
バートが黒眼鏡越しに、苦い顔をする。
「引き返す、ってわけにも行かないよな」
バートがジュリアに声をかけたが、返事は無い。
「……ジュリア?」
「……何なのよ、もう」
ジュリアはぽつんと、広い部屋の中央に立っていた。
(下手に声を出すと、モンスターが寄ってくるかも知れない。警戒して進もう)
ジュリアはそっと銃を握り、いつでも発砲できる体勢になる。
と、背後からコツ、と音がした。
「……ッ!」
ジュリアは振り返り、銃を構えた。
「ま、待った待った、あたしあたし!」
「あら? ……コスズじゃない」
ジュリアは銃を下ろし、ため息をつく。
「……ふう、ビックリした」
「そりゃこっちのセリフよ。……んで、他には誰が?」
「……明奈とフォルナも消えたか」
晴奈はゴクリと、生唾を飲んだ。
「マジかよ……」
「手をつなぐか何かした方がいいかも知れない。これ以上はぐれると、生還できる可能性が非常に低くなる」
トマスの言葉に、エルスも同意する。
「ああ。特に……」
ところが、その声が突然途切れた。
「特にトマスなんかだ、……と、……参ったな」
突然目の前の景色が変わり、エルスは苦笑した。
(僕一人、かな?)
周囲を見渡すと、目を丸くして突っ立っている明奈とフォルナの姿がある。
「あ、君たち」
「……え、エルスさん?」
「ここは、一体……」
エルスは肩をすくめ、辺りを見回す。
「僕も君たちも、飛ばされちゃったみたいだね」
「エルスもいなくなっちゃったか……」
トマスの顔色が、段々と青くなってきた。
「参ったな、どうも。これで残るは……」
晴奈は階段を見上げ、ため息をついた。
「僕とセイナ、それから公安のバートさんの3人だね」
「……いいや、2人だな」
「……まあ、とりあえず進むしかないわね」
「そーね」
ジュリアたちが歩き出そうとしたその時、パタパタと駆けて来る音がする。
「おいおい、待てって。俺もいるぜ」
「あら、バート。あんたもいたの?」
「いたの、はひでーなぁ……」
「……」
「……」
晴奈とトマスは、無言で見つめ合っていた。
「……進むしかないな」
「そう、だね」
晴奈はトマスに、ひょいと左手を差し出した。
「私の側から離れるなよ、トマス」
「う、うん」
二人は手をつなぎ、階段を下りていった。
《ククク……、よーやく来たぜ、活きのいいヤツらが。
中でもあの猫女とヘラヘラ野郎は、……なかなかイケそうだ。……っと、よくよく見れば、いーもん持ってるヤツがいるな。しまったな、もうちょい見極めてから飛ばしても良かったか。
ま、いいや。こいつらを取り込めば、オレの完全復活も近そうだ。ケケ、ケケケケ……ッ》
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狐を狩るのか、狩られるか。
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晴奈たちは灯りを片手に、階段を下りていく。
「大分、降りていくみたいだね。空気も変わった」
「ああ」
と、追いついてきた公安チームが首をかしげる。
「おかしいわね……?」
「え?」
「こんなにこの階段、長かったっスかね?」
「わたくしの記憶では、すぐに到着したはずですけれど」
「ええ、私もそう思うわ」
さらに、後方の明奈と小鈴がつぶやく。
「何だか、肌が粟立つような……」
「ええ。とてつもなく、静かで殺気を満ちた空気――まるで、どっかからじーっとにらまれてるよーな、そんな気配がするわね」
続いてネロとジーナが――何も言わない。
いや、それどころか彼らの衣擦れや靴の音すら、聞こえてこない。
「ネロ?」
小鈴が振り返り、声をかける。
しかし、そこには誰もいなかった。
「……おかしい。空気があまりにも違う」
「うん、そうだね。……ワープさせられた」
ネロの言葉に、ジーナはネロの袖をぎゅっと握りしめた。
「わ、ワープ?」
「うん。階段を下りていたはずなのに、いつの間にか、どこかの部屋にいる。それに、みんなの姿も無い」
「なんじゃと……」
ジーナの袖を握る力が、一段強くなる。
「……ジーナ。すまないけど、モンスターが出た時は頼む」
「……分かった。ネロ、お主も注意して見ておいてくれ」
「うん」
ジーナがネロの腕に抱きついたところで、後ろから申し訳無さそうな声が飛んできた。
「……すんません、俺もいます」
「え? えーと、……公安の、フェリオさん、だっけ」
「はい、フェリオっス。……よろしく、です」
「ネロさんたちが、……消えたって?」
階段の途中でエルスが振り返り、後方の皆に聞き返す。
「ええ。さっきまで、後ろにいたはずなのに」
「穏やかじゃないな、どうも」
バートが黒眼鏡越しに、苦い顔をする。
「引き返す、ってわけにも行かないよな」
バートがジュリアに声をかけたが、返事は無い。
「……ジュリア?」
「……何なのよ、もう」
ジュリアはぽつんと、広い部屋の中央に立っていた。
(下手に声を出すと、モンスターが寄ってくるかも知れない。警戒して進もう)
ジュリアはそっと銃を握り、いつでも発砲できる体勢になる。
と、背後からコツ、と音がした。
「……ッ!」
ジュリアは振り返り、銃を構えた。
「ま、待った待った、あたしあたし!」
「あら? ……コスズじゃない」
ジュリアは銃を下ろし、ため息をつく。
「……ふう、ビックリした」
「そりゃこっちのセリフよ。……んで、他には誰が?」
「……明奈とフォルナも消えたか」
晴奈はゴクリと、生唾を飲んだ。
「マジかよ……」
「手をつなぐか何かした方がいいかも知れない。これ以上はぐれると、生還できる可能性が非常に低くなる」
トマスの言葉に、エルスも同意する。
「ああ。特に……」
ところが、その声が突然途切れた。
「特にトマスなんかだ、……と、……参ったな」
突然目の前の景色が変わり、エルスは苦笑した。
(僕一人、かな?)
周囲を見渡すと、目を丸くして突っ立っている明奈とフォルナの姿がある。
「あ、君たち」
「……え、エルスさん?」
「ここは、一体……」
エルスは肩をすくめ、辺りを見回す。
「僕も君たちも、飛ばされちゃったみたいだね」
「エルスもいなくなっちゃったか……」
トマスの顔色が、段々と青くなってきた。
「参ったな、どうも。これで残るは……」
晴奈は階段を見上げ、ため息をついた。
「僕とセイナ、それから公安のバートさんの3人だね」
「……いいや、2人だな」
「……まあ、とりあえず進むしかないわね」
「そーね」
ジュリアたちが歩き出そうとしたその時、パタパタと駆けて来る音がする。
「おいおい、待てって。俺もいるぜ」
「あら、バート。あんたもいたの?」
「いたの、はひでーなぁ……」
「……」
「……」
晴奈とトマスは、無言で見つめ合っていた。
「……進むしかないな」
「そう、だね」
晴奈はトマスに、ひょいと左手を差し出した。
「私の側から離れるなよ、トマス」
「う、うん」
二人は手をつなぎ、階段を下りていった。
《ククク……、よーやく来たぜ、活きのいいヤツらが。
中でもあの猫女とヘラヘラ野郎は、……なかなかイケそうだ。……っと、よくよく見れば、いーもん持ってるヤツがいるな。しまったな、もうちょい見極めてから飛ばしても良かったか。
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「どくいりきけん たべたらしぬで かい人21面相」
残念ながらテンコがこの二人につけられたこの貼り紙を見ることはなかったのである(笑)
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ただし、天狐ちゃんが狙っているのは晴奈ではなかったり。