「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第8部
蒼天剣・調伏録 1
晴奈の話、第509話。
真打登場。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
「よくも散々、けなしてくれたな……! テメエだけは絶対、この場で消し飛ばしてやるッ!」
天狐は語気を荒げ、小鈴へとにじり寄る。
「いや……、いやっ……」
小鈴は顔面蒼白になり、後ずさる。
「くそ……!」
バートが背後から散弾銃を撃ち込もうと構えたが、天狐が振り返ってギロリと睨みつけ、それを止めさせる。
「一々邪魔してくんじゃねえよ……! お前はそこでじっとしていやがれ!」
「うっ……」
その真っ赤な瞳に射抜かれ、バートは立ちすくむ。ジュリアも銃を構えかけていたが、天狐の威圧に気力が潰され、腕が上げられない。
「さあ、死ね……!」
天狐は右手を振り上げ、呪文を唱え始めた。
が、途中で詠唱をやめ、振り返る。
「……ん……?」
天狐はきょろきょろと辺りを見回し、警戒した表情を見せる。
「まだ、オレに刃向かうヤツがいるのか……?」
天狐は小鈴に背を向け、苛立たしげに叫んだ。
「いい加減にしやがれ! いい加減、諦めて大人しくしとけや、あぁ!? オレサマにゃ誰も、勝てやしねえんだよ!
姿を見せやがれ、そこの火ぃ点いてる女!」
火、と聞き、小鈴の困惑を極めた頭に理性が戻ってくる。
「せ、晴奈……?」
「いかにも」
天狐の正面から、静かに晴奈が歩いてきた。
「何だお前、そのバカみてーに暑苦しいオーラは……?」
「オーラ、と言うのが何かは分からぬ。だが、私の心が熱く、熱く燃え盛っているのは確かだ」
晴奈は「蒼天」を構え、天狐と対峙した。
「そして、この刀も」
晴奈の言葉と共に、「蒼天」に火が灯る。それを見て、天狐は舌なめずりをした。
「火の魔術剣か……。つくづく、オレの目も鈍ってたもんだぜ。まだこんな、骨のありそうなヤツが残ってたとはな、ケケケッ」
「天狐とやら、一つ問う。お前は何者だ? 人間か? それとも妖怪変化、怪物の類か?」
「どれもハズレだ。オレは克天狐、伝説の瑞獣の名を冠する、この世で最も強い『悪魔』だ」
「悪魔、か。そして、克姓を名乗ったな。お前は『黒い悪魔』克大火と何か関係があるのか?」
「質問ばっかしてんじゃねーよ。オレからも聞いといてやる。……お前、名前は何て言うんだ?」
晴奈は少し間を置いて、ニヤリと笑った。
「我が名は黄晴奈。焔流の剣士だ。腕には十分、十二分に覚えがある。相手にとって不足は無いぞ、妖(あやかし)。
私が貴様に喰われるか、それとも貴様が私に調伏されるか。試してみるか……?」
晴奈の挑発に、天狐もニヤリと笑って返した。
「いいだろう。テメエも喰らって、オレの血肉にしてやらあ……!」
天狐は八つの尻尾をバシバシと毛羽立たせ、鬨(とき)の声を上げた。
「勝負だ、黄晴奈!」
「望むところだ、克天狐!」
先制したのは、天狐の方だった。
「『スパークウィップ』!」
天狐の掌から何筋もの稲妻がほとばしり、晴奈に向かって伸びていく。
「はッ!」
くい、と走る方向を変え、晴奈は電撃をやり過ごそうとする。
「は、甘いぜッ! 電撃が避けられっかよ!」
天狐の言う通り、避けたはずの電撃は晴奈の握る刀へと向かって曲がってきた。
「……ッ!」
曲がってきた電撃が、晴奈に直撃する。
「が……ッ」
「何だよ、いきなり終わりか? 口ほどにもねー」
天狐は鼻で笑い、晴奈に背を向けた。
「さて、と。さっきの続、き、……え」
天狐の動きがビクリと揺れ、止まる。その腹からは、青白く光る「蒼天」の先端が飛び出していた。
「ご、ごふ……っ」
「甘く見るな……!」
天狐のすぐ背後に、晴奈が立っていた。
「な、何で……。直撃、したはず、だろ……っ」
天狐は口から血をダラダラとこぼしながら、困惑した表情を見せる。
「確かに、した。だが、気を失うほどの痛みではなかった」
晴奈は「蒼天」を天狐の体からずるりと抜く。
「は、う……、あ、っ」
天狐は口と腹・背中の傷口からビチャビチャと血をこぼしながら、膝を着いた。
「……なめ、て、たぜ、っ」
天狐の尻尾がまた一房、弾けて消えた。
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「よくも散々、けなしてくれたな……! テメエだけは絶対、この場で消し飛ばしてやるッ!」
天狐は語気を荒げ、小鈴へとにじり寄る。
「いや……、いやっ……」
小鈴は顔面蒼白になり、後ずさる。
「くそ……!」
バートが背後から散弾銃を撃ち込もうと構えたが、天狐が振り返ってギロリと睨みつけ、それを止めさせる。
「一々邪魔してくんじゃねえよ……! お前はそこでじっとしていやがれ!」
「うっ……」
その真っ赤な瞳に射抜かれ、バートは立ちすくむ。ジュリアも銃を構えかけていたが、天狐の威圧に気力が潰され、腕が上げられない。
「さあ、死ね……!」
天狐は右手を振り上げ、呪文を唱え始めた。
が、途中で詠唱をやめ、振り返る。
「……ん……?」
天狐はきょろきょろと辺りを見回し、警戒した表情を見せる。
「まだ、オレに刃向かうヤツがいるのか……?」
天狐は小鈴に背を向け、苛立たしげに叫んだ。
「いい加減にしやがれ! いい加減、諦めて大人しくしとけや、あぁ!? オレサマにゃ誰も、勝てやしねえんだよ!
姿を見せやがれ、そこの火ぃ点いてる女!」
火、と聞き、小鈴の困惑を極めた頭に理性が戻ってくる。
「せ、晴奈……?」
「いかにも」
天狐の正面から、静かに晴奈が歩いてきた。
「何だお前、そのバカみてーに暑苦しいオーラは……?」
「オーラ、と言うのが何かは分からぬ。だが、私の心が熱く、熱く燃え盛っているのは確かだ」
晴奈は「蒼天」を構え、天狐と対峙した。
「そして、この刀も」
晴奈の言葉と共に、「蒼天」に火が灯る。それを見て、天狐は舌なめずりをした。
「火の魔術剣か……。つくづく、オレの目も鈍ってたもんだぜ。まだこんな、骨のありそうなヤツが残ってたとはな、ケケケッ」
「天狐とやら、一つ問う。お前は何者だ? 人間か? それとも妖怪変化、怪物の類か?」
「どれもハズレだ。オレは克天狐、伝説の瑞獣の名を冠する、この世で最も強い『悪魔』だ」
「悪魔、か。そして、克姓を名乗ったな。お前は『黒い悪魔』克大火と何か関係があるのか?」
「質問ばっかしてんじゃねーよ。オレからも聞いといてやる。……お前、名前は何て言うんだ?」
晴奈は少し間を置いて、ニヤリと笑った。
「我が名は黄晴奈。焔流の剣士だ。腕には十分、十二分に覚えがある。相手にとって不足は無いぞ、妖(あやかし)。
私が貴様に喰われるか、それとも貴様が私に調伏されるか。試してみるか……?」
晴奈の挑発に、天狐もニヤリと笑って返した。
「いいだろう。テメエも喰らって、オレの血肉にしてやらあ……!」
天狐は八つの尻尾をバシバシと毛羽立たせ、鬨(とき)の声を上げた。
「勝負だ、黄晴奈!」
「望むところだ、克天狐!」
先制したのは、天狐の方だった。
「『スパークウィップ』!」
天狐の掌から何筋もの稲妻がほとばしり、晴奈に向かって伸びていく。
「はッ!」
くい、と走る方向を変え、晴奈は電撃をやり過ごそうとする。
「は、甘いぜッ! 電撃が避けられっかよ!」
天狐の言う通り、避けたはずの電撃は晴奈の握る刀へと向かって曲がってきた。
「……ッ!」
曲がってきた電撃が、晴奈に直撃する。
「が……ッ」
「何だよ、いきなり終わりか? 口ほどにもねー」
天狐は鼻で笑い、晴奈に背を向けた。
「さて、と。さっきの続、き、……え」
天狐の動きがビクリと揺れ、止まる。その腹からは、青白く光る「蒼天」の先端が飛び出していた。
「ご、ごふ……っ」
「甘く見るな……!」
天狐のすぐ背後に、晴奈が立っていた。
「な、何で……。直撃、したはず、だろ……っ」
天狐は口から血をダラダラとこぼしながら、困惑した表情を見せる。
「確かに、した。だが、気を失うほどの痛みではなかった」
晴奈は「蒼天」を天狐の体からずるりと抜く。
「は、う……、あ、っ」
天狐は口と腹・背中の傷口からビチャビチャと血をこぼしながら、膝を着いた。
「……なめ、て、たぜ、っ」
天狐の尻尾がまた一房、弾けて消えた。
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~ Comment ~
NoTitle
・・・・ここまで来ると。
戦闘、対決、決闘。
それ以外に言葉はいらない。
そういう世界になりますね。
戦闘、対決、決闘。
それ以外に言葉はいらない。
そういう世界になりますね。
- #1926 LandM
- URL
- 2014.07/02 21:31
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剣士、晴奈の集大成とも言うべき戦いとなります。