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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第8部

    蒼天剣・調伏録 3

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    晴奈の話、第511話。
    天狐の接近戦。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
     晴奈と天狐の戦いは、激戦の様相を呈していた。
     天狐の魔術と言う強力なアドバンテージは「魔術を斬る刀」――「蒼天」によって封じられたが、それでも剣術の達人でもある大火の弟子である。どこからか取り出した神器の鉄扇、「傾国」を手に、晴奈と互角に渡り合っていた。
    「オラあッ!」
    「……っ!」
     鉄扇を構成する、30センチほどの金属製の短冊一枚一枚が鋭利な短刀になっており、扇を閉じて振り回せばまるで、大型獣の爪に引っかかれたような傷跡ができる。
     晴奈も紙一重でかわしてはいたが、それでも何度か肩や腕、脇腹をかすっている。
    (魔術を封じてもなお、強敵か……! 一筋縄では行かぬな)
     また、扇を開いて用いれば頑丈な盾にもなる。晴奈の打突を開いて受け、払いを閉じて受け、隙を突いて引っかき、叩いて反撃に移る。
     鉄扇の間合いが刀のそれより短く、応用性に富んでいるため、晴奈は有効打を与えることができず、翻弄されていた。
    「くそ……!」
     だが、刀の本領を発揮しようと間合いを離そうとしても、天狐の動きが非常に素早く、簡単に間合いを詰め返されてしまう。
    「逃げてんじゃねーよ、さっきの威勢はどうしたあぁ!?」
    「チッ……」
     晴奈は改めて、克大火とその一門の持つ、戦闘能力の高さと手数の多さに舌を巻いていた。



     ネロたちの応急処置を終えた小鈴は、ボロボロになった「鈴林」を手に取り、眺めていた。
    (こんなになっちゃうなんて……)
     36個付けられていた鈴は3分の1ほどに減り、毎日丁寧に磨いていた金属面は、まるで温泉に落としてしまった銀製品のように、赤黒く沈んだ色をしていた。
    (元に、戻せるのかしら……?
     難しいかも知れない。前に別の魔杖を使ってたけど、一度折れたらそれっきりだった。どんなに繕っても、元のように魔力が蓄積できないだろう、って言われて、処分したのよね。
     それからずっと、『鈴林』を使ってきた。ホントに神器って言われるだけあって、どんだけラフな使い方しても傷一つ付かなかった。……のに)
     小鈴は懐から布を取り出し、杖を磨き出した。だがやはり、その黒ずんだ汚れは落ちそうに無かった。

     小鈴の様子を離れて眺めていたフォルナは、心配そうにつぶやいた。
    「コスズさん、大丈夫かしら……」
     フォルナもレイリンに助けられた覚えがあるし、一緒に旅をしていて、小鈴が本当に「鈴林」を大切にしていたことも、良く知っている。それだけに、小鈴の落胆は痛いほど伝わっていた。
    「あの、コスズさん……」
     フォルナは居ても立ってもいられなくなり、小鈴に声をかけた。
    「……ん、どしたの?」
     小鈴が顔を向ける。普段のあっけらかんとした様子は、まったく見られなかった。
    「……いえ、……その」
    「心配してくれてんのね」
     小鈴は力なく笑い、顔を伏せた。
    「ありがと。……でもゴメン、ちょっと一人にさせて」
    「……はい」
     フォルナは素直に、小鈴から離れた。



     晴奈は執拗に迫り、攻撃を重ねてくる天狐に辟易しながらも、一つの打開策を思いついていた。
    (以前に闘技場で、楢崎殿を初めて見かけた際。楢崎殿も丁度、今と同じように張り付いてくる敵と闘っていた。
     私では多少体重が心もとないが、やってみるか)
     晴奈はもう一度、距離を離そうと足を退く。それを見て、天狐が苛立たしげに叫び、詰めてきた。
    「一々面倒くせえ! 逃げんじゃ……」
     晴奈は天狐が間合いを詰めてきた瞬間、自分からも距離を詰めた。
    「だーッ!」
     体勢を低くし、天狐の鳩尾に丁度当たるように右肘を曲げ、勢い良く踏み込む。迫る天狐の勢いと相まって、その肘鉄は強力な打撃力を与えた。
    「ぐえ、……ッ」
     急所を突かれ、天狐の目が一瞬ひっくり返る。
     すかさず晴奈は右腕を回し、天狐の顔面に裏拳を叩きつけた。
    「がっ、は……」
     二度の急所攻撃で、天狐は大きくのけぞる。
    「はあああッ!」
     のけぞった天狐の喉元を狙い、晴奈は左手に持っていた刀を突き入れた。
    「ひゅ、……ゴ、ゴボ、ボッ」
     ぱっくりと裂かれた天狐の喉から、わずかな空気とおびただしい血が噴き上がった。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    晴奈も場数を踏んできてますから、
    こう言う搦手も使えるようになってきています。
    ただ、天狐も負けてません。克一門ですから。

    NoTitle 

    流石はセイナですね。
    実力的には上ですかね。
    いや、修練とかそういった意味では。

    NoTitle 

    ハンマーを持った晴奈……、本作の雰囲気が変わっちゃいます(;´∀`)

    NoTitle 

    晴奈の神器が防具の上から相手にダメージを与えるハンマーだったらこんな苦労も……いえなんでもありません(笑)
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