「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第8部
蒼天剣・調伏録 4
晴奈の話、第512話。
魔法陣の「核」。
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4.
天狐の返り血を浴びながらも、晴奈は怯まない。
「まだ生き返るつもりだろう……!?」
その言葉の通り、噴き出ていた血はすぐに止まる。七房あった尻尾も、いつの間にか六房に減っている。
(まだだ! 畳み掛けろッ!)
天狐が立ち直る前に、晴奈はさらに追い打ちをかけようとした。
だが、振り下ろした刀は空を切る。
「……ッ!?」
目の前から敵が消え、晴奈は瞬時に周囲を見渡す。
「手強いな、テメエは……」
天狐は晴奈に向けて、右手をかざしている。
「結構魔力使うから、あんまり撃ちたくなかったが……」
天狐の手から、紫色の光球が発生した。
「形振り構っちゃいられねーよな、……『ナインヘッダーサーペント』!」
光球は九条の稲妻に形を変え、晴奈へと向かっていく。
「く……っ」
晴奈は刀を構え、迫り来る稲妻を斬り付けようと試みる。
だが、何条かは断ち切れたものの、流石にすべてを斬ることはできなかった。
「ぐ、あああ……っ」
稲妻の一つが晴奈に直撃する。晴奈は煙を上げながら、弾き飛ばされた。
まだ真っ黒なままだったが、それでも小鈴は「鈴林」を持って、下層へと降りていった。
「……」
普段は明るく、陽気な小鈴が、一言も発しないでいる。
「……」
空気が重苦しく、誰も声を出せない。
と、廊下の先に物々しい扉が待ち構えていた。
「扉……?」
「今まで、扉のある部屋なんか無かったよね」
トマスの言葉に、明奈とフォルナがうなずく。
「ええ、ございません」
「何か、重要なものがしまわれているのでしょうか」
「可能性は高い。……行ってみよう」
一行は恐る恐る、その扉に手をかけた。
「……鍵がかかってる」
「行き止まり、のようね。……駄目元で撃ってみましょうか」
ジュリアが散弾銃を構え、扉に向けて弾を放つ。だが予想通り、扉はビクともしなかった。
「やっぱり無理、か。……滅茶苦茶怪しいのになぁ」
バートが残念そうに、扉を蹴る。
「仕方ないわね。戻りましょうか」
ジュリアがつぶやいた、その時だった。
「『鈴林』……?」
ボロボロになり、半分以上が弾け飛んではいたが、それでも残っていた鈴が、ちり……、と弱々しく鳴った。
途端に、扉が音も無く開く。
「……!」
「入れ、ってコトなのね」
小鈴は意を決し、中へと進んだ。
「……なに、これ」
部屋は地下2階・3階の吹き抜けになっているらしく、天井が非常に遠く見える。
そして部屋の中央には祭壇らしきものが備えてあり、そこには巨大な黒水晶の柱が立っていた。
「尋常じゃない大きさね……。これが、この魔法陣の『核』部分かしら」
「多分、ね。……ん?」
小鈴は黒水晶の中に、何か影のようなものがあるのに気付いた。
「……『ライトボール』」
光球を作り、その黒水晶を照らす。
「……っ!?」
中には、天狐と同じくらいの少女が入っていた。
「ハァ、ハァ……」
天狐は魔術を放った姿勢のまま、微動だにしない。いや、できないのだ。
「流石に、使いすぎた……」
九尾あった尻尾も、既に五尾となった。
「……これ以上は勘弁だぜ、猫女ぁ……」
そうつぶやき、晴奈の吹っ飛んでいった方向に目をやるが、姿は無い。
「……チッ」
天狐は構えを解き、その場に伏せる。
「コレで決着させてやんよ……、『ナインアイドチャーミング』!」
魔術を発動させた瞬間、天狐の視界は一変した。
(どんなにうまく隠れてよーと無駄だ……。コイツは、目視以外の『センサー』をオレの体に作る。
音波感知……風向感知……振動感知……熱感知……オーラ感知……見つけた)
既にこの時、晴奈は「星剣舞」を放っていた。
敵のあらゆる警戒・知覚をかいくぐり、防ぎようの無い多段攻撃をぶつける「不可視の剣舞」。
天狐もその目では、晴奈を見つけることはできなかった。だが、それを上回る索敵能力が彼女に、「不可視の剣舞」を見ることを可能にした。
「……そこだッ!」
「……っ……」
晴奈自身はこの時、まったくの無意識下にある。攻撃に対する警戒心も、そこには無い。
天狐の攻撃を避けられず、深々と右肩を切り裂かれた。
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魔法陣の「核」。
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4.
天狐の返り血を浴びながらも、晴奈は怯まない。
「まだ生き返るつもりだろう……!?」
その言葉の通り、噴き出ていた血はすぐに止まる。七房あった尻尾も、いつの間にか六房に減っている。
(まだだ! 畳み掛けろッ!)
天狐が立ち直る前に、晴奈はさらに追い打ちをかけようとした。
だが、振り下ろした刀は空を切る。
「……ッ!?」
目の前から敵が消え、晴奈は瞬時に周囲を見渡す。
「手強いな、テメエは……」
天狐は晴奈に向けて、右手をかざしている。
「結構魔力使うから、あんまり撃ちたくなかったが……」
天狐の手から、紫色の光球が発生した。
「形振り構っちゃいられねーよな、……『ナインヘッダーサーペント』!」
光球は九条の稲妻に形を変え、晴奈へと向かっていく。
「く……っ」
晴奈は刀を構え、迫り来る稲妻を斬り付けようと試みる。
だが、何条かは断ち切れたものの、流石にすべてを斬ることはできなかった。
「ぐ、あああ……っ」
稲妻の一つが晴奈に直撃する。晴奈は煙を上げながら、弾き飛ばされた。
まだ真っ黒なままだったが、それでも小鈴は「鈴林」を持って、下層へと降りていった。
「……」
普段は明るく、陽気な小鈴が、一言も発しないでいる。
「……」
空気が重苦しく、誰も声を出せない。
と、廊下の先に物々しい扉が待ち構えていた。
「扉……?」
「今まで、扉のある部屋なんか無かったよね」
トマスの言葉に、明奈とフォルナがうなずく。
「ええ、ございません」
「何か、重要なものがしまわれているのでしょうか」
「可能性は高い。……行ってみよう」
一行は恐る恐る、その扉に手をかけた。
「……鍵がかかってる」
「行き止まり、のようね。……駄目元で撃ってみましょうか」
ジュリアが散弾銃を構え、扉に向けて弾を放つ。だが予想通り、扉はビクともしなかった。
「やっぱり無理、か。……滅茶苦茶怪しいのになぁ」
バートが残念そうに、扉を蹴る。
「仕方ないわね。戻りましょうか」
ジュリアがつぶやいた、その時だった。
「『鈴林』……?」
ボロボロになり、半分以上が弾け飛んではいたが、それでも残っていた鈴が、ちり……、と弱々しく鳴った。
途端に、扉が音も無く開く。
「……!」
「入れ、ってコトなのね」
小鈴は意を決し、中へと進んだ。
「……なに、これ」
部屋は地下2階・3階の吹き抜けになっているらしく、天井が非常に遠く見える。
そして部屋の中央には祭壇らしきものが備えてあり、そこには巨大な黒水晶の柱が立っていた。
「尋常じゃない大きさね……。これが、この魔法陣の『核』部分かしら」
「多分、ね。……ん?」
小鈴は黒水晶の中に、何か影のようなものがあるのに気付いた。
「……『ライトボール』」
光球を作り、その黒水晶を照らす。
「……っ!?」
中には、天狐と同じくらいの少女が入っていた。
「ハァ、ハァ……」
天狐は魔術を放った姿勢のまま、微動だにしない。いや、できないのだ。
「流石に、使いすぎた……」
九尾あった尻尾も、既に五尾となった。
「……これ以上は勘弁だぜ、猫女ぁ……」
そうつぶやき、晴奈の吹っ飛んでいった方向に目をやるが、姿は無い。
「……チッ」
天狐は構えを解き、その場に伏せる。
「コレで決着させてやんよ……、『ナインアイドチャーミング』!」
魔術を発動させた瞬間、天狐の視界は一変した。
(どんなにうまく隠れてよーと無駄だ……。コイツは、目視以外の『センサー』をオレの体に作る。
音波感知……風向感知……振動感知……熱感知……オーラ感知……見つけた)
既にこの時、晴奈は「星剣舞」を放っていた。
敵のあらゆる警戒・知覚をかいくぐり、防ぎようの無い多段攻撃をぶつける「不可視の剣舞」。
天狐もその目では、晴奈を見つけることはできなかった。だが、それを上回る索敵能力が彼女に、「不可視の剣舞」を見ることを可能にした。
「……そこだッ!」
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晴奈自身はこの時、まったくの無意識下にある。攻撃に対する警戒心も、そこには無い。
天狐の攻撃を避けられず、深々と右肩を切り裂かれた。
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今日の旅岡さん

~ Comment ~
NoTitle
ああ、魔方陣の核ですか。
考えたことなかったですね。
そういうことを考えるのも戦闘の妙ですね。
ううむ。
色々学ばせてくれる文章が多い。
考えたことなかったですね。
そういうことを考えるのも戦闘の妙ですね。
ううむ。
色々学ばせてくれる文章が多い。
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ダンジョンめぐりも戦闘の醍醐味かな、と。