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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第8部

    蒼天剣・調伏録 7

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    晴奈の話、第515話。
    妖狐調伏、完了。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    7.
     天狐の頭に、大量の疑問符が飛ぶ。
    (え? え? え?
     斬られた? 首? え? なんで? オレ? オレ斬られた? 首を?
     え? オレの首? 誰が? 猫女? え? 死んだだろ? 死んでない?
     え? なんで?)
     が、天狐は瞬時に術を使い、飛んだ首を元に戻す。
    (治った。やべー、首いった。斬れた? オレ死んだ? 大丈夫?
     あ、尻尾消えた。くそ、なんで? 猫女? 蒸発しなかった?
     なんで? え? なんでよ?)
     慌てて立ち上がり、もう一度「傾国」を手の中に召還する。
    (どこだ? いつ斬った? 今? さっき?
     斬れてた? いや斬れてねーし。くそ、何なんだ? 何が起こってた?
     どこにいる? どこにいるんだ、猫女?)
     周囲を見渡したが、晴奈の姿はどこにも見当たらない。
    (くそ、よーやく落ち着いてきた。
     ……またさっきの奇襲か? 同じコトだ、もっかい同じ返し方すりゃいーんだよ)
     天狐は先程晴奈の「星剣舞」を破った索敵魔術を発動させる。
    「『ナインアイドチャーミング』!」
     天狐の視界が変わり、辺りの様子が手に取るように伝わってくる。
    「さあ、どこに……」
     360度、上下、前後、左右すべての情報が、天狐の中に入ってくる。
    「……?」
     だが――。
    (音波感知……ある。風向感知……ある。振動感知……ある。でも意味ねー、動いてるのは分かるが捉えきれねー。熱感知……これも無駄か。
     残るはオーラ感知、……、……、……、……え、っ?)
     他の「センサー」で辛うじて残像を捉えてはいたが、オーラだけが部屋中を見渡しても、どこにも見付けることができない。
    (んな馬鹿な……!? 生きてる限り、その人間の生体反応を可視化したオーラは捉えられるはずだ!
     じゃあやっぱ、死んでるってのか!? ……いや、それなら他の『センサー』で反応するワケがねえ!
     じゃあお前は一体、どこにいるんだよ……!?)
     目を一杯に見開くが、まったく確認できない。
    (どこだ? どこだ? どこ……ッ!?)
     と、胸に痛みを感じる。
    「げ、……ぼ」
     口から大量の血が吹き出す。尻尾を一房消費し、すぐに治癒する。
    「がっ……」
     背中が灼けるよな痛みを覚える。これもすぐ治す。
    「畜生、どこだ……!」
     術に最大限の魔力を込め、オーラを読み取ろうとあがく。
    (いねえ)
     ザクザクと、自分の体が斬れる音が絶え間なく続く。その一撃、一撃が、恐ろしく鋭く、激しい。
    (やべえ……やべえよコレ……!)
     尻尾が次々に消費され、消えていく。
    「やっ……やめろ……」
     尻尾はとうとう、残り三尾となった。
    「やめろ……やめて……」
     さらにざくりと、右肩を裂かれる。
     見えない敵からの、絶え間なく続く攻撃に、天狐の心はついに折れた。
    「やめて……やめて……やめてえ……」
     天狐はたまらず、ボタボタと涙を流し始めた。
    「……ごめんなさい……あやまりますから……やめてください……っ」
     天狐は見えない晴奈に向かって、土下座した。
    「ごめんなさい……ごべんなざいー……もうじばぜんがら、ごうざんじばずがらあああっ」
     と、天狐への攻撃がやんだ。
    「ひっ……ひっ……」
     天狐は号泣しながら、顔を上げた。
    「本当にもう、降参するか?」
    「はい……じばずうう……」
     天狐の前にいつの間にか立っていた晴奈は、刀の切っ先を天狐の鼻先に突きつけた。
    「ひっ……ぴいいっ」
    「ならば今すぐ、仲間と私、それから街で倒れた者たちの治療をしてもらおうか」
    「は、はいっ。いば、今すぐにっ」
     天狐は再度、晴奈に頭を下げた。



     すっかり大人しくなった天狐を連れ、全快した晴奈は下層へと歩いていた。
    「……そんなにびくつかないでもいい」
    「は、はいっ」
     居丈高に振舞っていた時とは違い、晴奈に下った天狐は素直な少女そのものだった。
    「あ、あの、姉(あね)さん。本当にすみませんで」
    「改心したのならばいい。……それより、首は大丈夫か?」
    「はいっ。オレの術ですからっ」
     コロリと態度を変えた天狐に、晴奈は若干戸惑う。が――。
    (こいつも『姉さん』と。……やれやれ)
     また妹が増えたことに内心、苦笑していた。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    攻めは熾烈でしたが、案外打たれ弱かったようです、天狐。

    場合によっては降参することも重要ですね。
    強敵を負かす→降参して許す→仲良くなる
    という流れもありますし。

    NoTitle 

    意外にあっけなく降参したものですね。。。
    ・・・そういえば、私のキャラで降参のキャラってあんまり・・っていうか、全くいないですね。参考にもできそうですね。

     

    結構な長丁場になりましたが、どうにか決着が付いて僕も一安心です。

    天狐の性格に関しては、何故こうなったのかを後日、
    閑話形式でほんのり触れようかと。
    「蒼天剣」の次の話に、ちょこっと関わってくる内容です。

     

    良かった、良かった!

    天狐は負けると、以外にあっさり降参する処が面白いなぁ。

    セイナも大変だったけど、これで一安心。
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