「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
双月千年世界 短編・掌編
蒼天剣番外編 その4
晴奈の話、……から少し外れて。
天狐と大火の関係。
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蒼天剣番外編 その4
「テンコちゃん、いいかな」
ミッドランド異変が解決し、周辺地域のモンスター退治が始まって間もない頃。
ミッドランドの街を歩いていた克天狐を、ネロが呼び止めた。
「ん? ああ、お前か」
「少し、聞きたいことがあるんだ。時間、ちょっと取れるかい?」
「いいぜ」
場所をラーガ邸近くの丘に移し、ネロは話を切り出した。
「タイカのことなんだけどさ」
「あぁ? 勘弁してくれよ」
ネロの予想通り、天狐は嫌そうに振舞った。
「ま、ま」
ネロは天狐の狐耳に、そっとあることをささやいた。
「……!?」
途端に、天狐の目が点になる。
「何で……、お前がそれを」
「当たりか。薄々そうじゃないかな、とは思ってたんだ」
「か、カマかけやがったなっ」
顔を赤くして慌てふためく天狐を見て、ネロはクスクスと笑う。
「ああ、ゴメンね。
でもさ、それで一つ、合点が行くことがあるんだ。それを聞いたら、君のタイカに対する感情も変わるかも知れない」
「んなコトあってたまっかよ」
「ま、ま」
ネロは真面目な顔になり、こう言った。
「ジーナもね、君と同じだったんだ。同じように、組み込まれていた」
「へえ……?」
「でもさ、見てみただろ? 彼女はそのことによって、傷一つ負っていない――失明してはいるけど、それは言わば、彼女の自業自得になってしまうんだけど、ま、それは置いといて――それがどう言うことか、分かるかい?」
「大事にしときたかったってコトだろ? 大事な『核』なんだしよ」
「そう言うことさ。
タイカは君を、傷一つ負わせることなく、大事にしておきたかったんだ。
『システム』に閉じ込めたのは、二次的、副次的な理由でしかなかったと思う」
「へっ、何バカなコト……」
「君は昔から、タイカに反抗的だったんだろう? 多分封印の間際でさえも、彼の言うことを聞こうとしなかったんじゃないかい?」
「……それは、まあ」
天狐の狐耳と尻尾が、一斉にしなだれる。
「だから、そうするしかなかったんだと思うよ。彼にしてみれば、自分の仲間や味方だったものを、これ以上傷つけたくは無かっただろうし。
一度聞いたことがあるんだ、彼から。自分を裏切り、命を狙った弟子たちと戦ったと。……だからタイカは、契約をどこまでも重んじるのかも知れない。
せめて、自分から裏切ることはないように、って」
「……んなコト、あるかよ……」
天狐が反論する。だが、その口ぶりは最初に比べて、ひどく弱々しかった。
「……だってオレ……散々アイツに……ひどいコト……」
「ま、僕の推測でしか無いから。……それじゃね、テンコちゃん」
「あ、ちょっ、待てよ!」
天狐の方から、ネロを引き止めてきた。
「お前、誰なんだ?」
「僕?」
ネロはにっこり笑い、こう言った。
「歴史に隠れた、ただの隠者(ハーミット)だよ」
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天狐と大火の関係。
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「テンコちゃん、いいかな」
ミッドランド異変が解決し、周辺地域のモンスター退治が始まって間もない頃。
ミッドランドの街を歩いていた克天狐を、ネロが呼び止めた。
「ん? ああ、お前か」
「少し、聞きたいことがあるんだ。時間、ちょっと取れるかい?」
「いいぜ」
場所をラーガ邸近くの丘に移し、ネロは話を切り出した。
「タイカのことなんだけどさ」
「あぁ? 勘弁してくれよ」
ネロの予想通り、天狐は嫌そうに振舞った。
「ま、ま」
ネロは天狐の狐耳に、そっとあることをささやいた。
「……!?」
途端に、天狐の目が点になる。
「何で……、お前がそれを」
「当たりか。薄々そうじゃないかな、とは思ってたんだ」
「か、カマかけやがったなっ」
顔を赤くして慌てふためく天狐を見て、ネロはクスクスと笑う。
「ああ、ゴメンね。
でもさ、それで一つ、合点が行くことがあるんだ。それを聞いたら、君のタイカに対する感情も変わるかも知れない」
「んなコトあってたまっかよ」
「ま、ま」
ネロは真面目な顔になり、こう言った。
「ジーナもね、君と同じだったんだ。同じように、組み込まれていた」
「へえ……?」
「でもさ、見てみただろ? 彼女はそのことによって、傷一つ負っていない――失明してはいるけど、それは言わば、彼女の自業自得になってしまうんだけど、ま、それは置いといて――それがどう言うことか、分かるかい?」
「大事にしときたかったってコトだろ? 大事な『核』なんだしよ」
「そう言うことさ。
タイカは君を、傷一つ負わせることなく、大事にしておきたかったんだ。
『システム』に閉じ込めたのは、二次的、副次的な理由でしかなかったと思う」
「へっ、何バカなコト……」
「君は昔から、タイカに反抗的だったんだろう? 多分封印の間際でさえも、彼の言うことを聞こうとしなかったんじゃないかい?」
「……それは、まあ」
天狐の狐耳と尻尾が、一斉にしなだれる。
「だから、そうするしかなかったんだと思うよ。彼にしてみれば、自分の仲間や味方だったものを、これ以上傷つけたくは無かっただろうし。
一度聞いたことがあるんだ、彼から。自分を裏切り、命を狙った弟子たちと戦ったと。……だからタイカは、契約をどこまでも重んじるのかも知れない。
せめて、自分から裏切ることはないように、って」
「……んなコト、あるかよ……」
天狐が反論する。だが、その口ぶりは最初に比べて、ひどく弱々しかった。
「……だってオレ……散々アイツに……ひどいコト……」
「ま、僕の推測でしか無いから。……それじゃね、テンコちゃん」
「あ、ちょっ、待てよ!」
天狐の方から、ネロを引き止めてきた。
「お前、誰なんだ?」
「僕?」
ネロはにっこり笑い、こう言った。
「歴史に隠れた、ただの隠者(ハーミット)だよ」
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2015.06.01 タイトル表記と体裁を修正
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