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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第8部

    蒼天剣・共振録 2

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    晴奈の話、第518話。
    エルスの本意。

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    2.
     店を出てから15分後、小鈴はエルスを伴って赤虎亭に戻ってきた。
    「誰だ、そいつ」
    「稀代の見合わせ屋のバカ」
    「はは、ひどいな」
     小鈴はエルスをカウンターに座らせ、尋問し始めた。
    「エルスさん、アンタ分かってて晴奈口説いたでしょ」
    「……はは、ご名答」
    「どう言うコトだ?」
     事態を把握できない朱海に、小鈴はミッドランドでの道中でエルスが晴奈を口説いたことを説明した。
    「ほー、ソイツがねー」
    「でもコイツ、本気じゃなかったのよ。……トマスが晴奈に惚れてるコト分かってて、わざとやったのよ。
     恋愛事に疎い晴奈なら、あたしに相談するもんね。んであたしならきっと、トマスの気持ちも理解してるだろうって、そうよね?」
     詰問する小鈴に、エルスはあっさりうなずいた。
    「そうだよ」
    「それって、どう言う……?」
     きょとんとする朱海に、小鈴がエルスの額をペチペチ叩きながら説明した。
    「よーするにトマスを焚き付けたのよ、間接的に。確かにトマス、オクテもオクテ、大オクテだもんねー。んでもって、そーゆー奴を放っとくあたしでもないし。
     まんまと引っかかったわ、ホントに」
     苦笑する小鈴に、エルスも笑ってこう返した。
    「まあ、効果はちょっとくらい、あったんじゃないかな。意識したと思うよ、セイナも」



    「ね、ねえ?」
    「うん?」
     手を引かれるままに歩いていたトマスが、晴奈に声をかけた。
    「どこ行くの?」
    「ん……、いや、特にどこ、とは考えていないが」
    「え」
     トマスが変な返事を返したので、晴奈は立ち止まる。
    「どうした?」
    「じゃあセイナ、なんで君、僕の手を引いてるの?」
    「ん? ……あ」
     ようやくそのことに気付き、晴奈は手を離した。
    「すまぬ。ついうっかり」
    「あ、いや……、別にいいけど」
    「あの地下神殿で、ずっとお主の手を引いていたからな。どうも癖になってしまったようだ」
    「癖、って……」
     トマスは顔を赤くし、握られていた左手を右手で撫でた。
    「喜んでいいのかなぁ……?」
    「喜ぶ?」
     今度は、晴奈が首をかしげた。
    「いや、えっと、何て言ったらいいのかな、えーと」
    「分からないな……」
     晴奈はもう一度、手を握ってみた。
    「こんなことが、そんなに嬉しいのか? 子供ではあるまいし」
    「そりゃ、その、君だから」
     トマスの言葉に、晴奈はもう一度首をかしげた。
    「私だから?」
    「いや、何でもないよ」
     トマスは晴奈の手を振り払い、フラフラと歩き出す。
    「おい、待て」
    「そ、その、えっと、結局さ、どこに行く?」
     トマスが足を止めないので、晴奈は仕方なく付いていく。
    「そうだな……、とりあえず、小腹が空いた。もう昼だしな」
    「あ、そうだね。じゃ、どこかに食べに行こうか」
    「ああ。……そうだ、トマス」
     晴奈は三度、トマスの手を引く。
    「な、何?」
    「私の恩人がやっている店がある。そこに行ってみないか?」
    「え? あ、いいね」
     トマスはコクコクとうなずき、晴奈の手を握り返した。



    「ま、メシ屋に来させといてご飯食べさせずにハイさよなら、ってのも何だし」
     エルスから思惑を聞き終えた小鈴は、折角の機会なのでエルスに飯をおごっていた。
    「ココのご飯は美味しいわよ、ホント」
    「おいおい、おだてても大したモン出さないって」
     素直にほめられ、カウンター越しに経っていた朱海はわずかに顔を赤くした。
    「さ、何頼む、エルスさん?」
    「んー」
     エルスは品書きを眺めながら、小鈴に尋ねる。
    「お勧めは何かな」
    「そーねぇ……、揚げ物系は特に美味しいかな。今の季節なら、サンマの唐揚げなんかいいんじゃない?」
    「ああ、それならすぐ作れるよ。どうする、御大さん?」
     朱海も同意したので、エルスはそれを頼むことにした。
    「じゃあ、それで。……と、アケミさんだっけ」
    「ん?」
     エルスは苦笑しつつ、自分の呼ばれ方を訂正した。
    「あんまり親しい人や歳の近い人に、いかめしい呼ばれ方をされたくないんだ。良ければ僕のことは、普通に呼んでほしい」
    「ん? 歳近い……、って、アンタいくつなんだ? 見た感じ、40近そうに見えたけど」
    「40、かぁ」
     そう言われ、エルスは頬をポリポリとかきながら、また苦笑する。
    「はは……、僕、まだ32なんだけどなぁ」
    「へぇ? ……とすると、かなり苦労してんだなぁ。流石に央南の大将さんだからかな」
    「それだけじゃないわよ。ほら、5年くらい前に北方でうさわになった兵器強奪事件ってあったじゃん?」
    「ああ、何か聞いた覚えあるな」
    「ソレやったの、この人だし」
    「マジで?」
     エルスは肩をすくめ、肯定する。
    「うん、確かに。色々、やむにやまれぬ事情があったもんで」
    「……とすると、北方でスパイやってて、央南に亡命して、大将さんになって戦争を動かして、んで今、中央政府並みにデカい同盟を作ろうとしてる、……ってワケか。
     そりゃ歳以上に老けもするわな、アンタ」
     朱海に繰り返し老けたと言われて、エルスは苦笑するしかなかった。
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