「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
双月千年世界 短編・掌編
公安チームの挑戦 2
スピンオフ、第2話。
財団の仕組みと内情。
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財団の仕組みと内情。
2.
金火狐財団――その名の通り、これは一つの団体である。
ゴールドマン家、通称「金火狐(オーロラテイル)」一族を主軸とする、多数の商会や自治体の総称であり、それをまとめ、維持する組織も当然、その中に存在する。
代表的なのが、金火狐財団の本拠地、ゴールドコースト市国を統治する「市政局」、同市の治安を維持する「公安局」、財団で手がける各商業を統括する「商会総局」、他国との渉外活動を担う「国際局」、そしてそれら各局の動向を監視する――。
「監査局から、追及があったのよ。『第1調査室の成果が、芳しくない』と」
「……」
ジュリアから話を聞かされ、チームの全員が顔を青くしている。
「言われてみれば、本当にぐうの音も出ない、って感じね。
クラウン一家事件の時はバートが暴行・監禁されて殺されかけるし。
殺刹峰事件の時はエラン君が捕まって、フェリオ君が戦闘不能になるし。
ミッドランド事件もまた、エラン君とフェリオ君」
「う……」
指摘を受けた3人は、言葉に詰まる。
「この2年、私たちが手がけた事件はどれも民間人の手を借り、なおかつ、私たちの側に何らかの不手際が発生している。追及されても仕方ないわ」
「で、でも」
エランが顔を上げ、こんなことを言った。
「総帥である母さまの直属ですよ、このチーム。それを財団の一セクションである監査局がどうこうできるわけ……」
「エラン。あなた、自分の家の事情くらい理解しておきなさい」
フォルナがため息混じりに、関係を説明した。
「あなたもご存知でしょう、昔、金火狐のとある総帥が独裁行動を執って、一族全体を混乱の渦に巻き込んだことを。
そうした事態の再発を防止するために、総帥と同程度の発言権・免職権を持つ監査局を、あの英雄ニコル3世が、財団の設立の際に設置したと言う歴史があること、存じているでしょう?」
「あ……」
「その監査局が、今回の相手ですのよ?
いくらヘレン総帥でも、財団内の人事において自身と同等の権限を持つ監査局を、無理矢理に黙らせることなどできませんわ。
仮にそんなことをすれば、総帥は金火狐の掟に背くことになり、その結果自身の職を追われることになると、これほど単純明快な理屈が分からないわけでは無いでしょう?」
「……ですね」
フォルナの矢のような説明に、エランはしゅんとするしかなかった。
「フォルナさんの言う通りよ。
監査局は今回、『半年以内に、十分に評価できる実績が無ければ、我々は免職権を行使し、第1調査室を解散・再編成する』と言ってきたの」
「そりゃまずいな……。折角、いいチームができたと思ってたのによ」
そうつぶやくバートに、ジュリアは首を振った。
「そんな問題じゃないの。もう一度言うわよ?
私たちチームを解散させた後、『監査局が』新しいチームを再編成するのよ?」
「……?」
揃って首をかしげるフェリオとエランを見て、ジュリアは顔をしかめた。その様子を見て、フォルナが詳しく説明する。
「お二人とも、よく考えてください。このチームは総帥直属の調査チームですわ。それは言い換えれば、総帥の手となり足となる、総帥の思うがままに動くチームでなければなりません。
ですが『監査局が』チームを編成すると言うことは、総帥の意向を反映できないと言うことになりますわ」
「あっ、そっか」
「じゃ、本気でまずいじゃないっスか!?」
事の本質を理解し、男たち3人は揃って顔を青くした。
「そう。もしこのまま事が進めば、総帥は耳目を潰されたも同然。今後の活動に、大きく影響を及ぼすことになる」
「……あ、まさか、もしかして」
ぼそ、とつぶやいたエランに、バートが反応する。
「何だ?」
「監査局の局長も、ウチの一族の人なんですよ。しかも昔、総帥候補だった人なんです。母さまの方が選ばれたんですけど」
「そりゃ……、きな臭えな」
「ええ。総帥職に就けなくとも、総帥と同等の人事権を持ち、総帥に伝わる情報を、自分たちが選出したチームから聞くことができれば、総帥を簡単に操れるわ。恐らく前々から、その状態になることを狙っていたんでしょうね。
でも……、どんな思惑があろうと結局、私たちの不甲斐なさを突かれたのよ、今回の件は。私たちの至らなさが、総帥の急所を突かれた形になるわ」
「……」
ジュリアのその言葉に、全員が何も言えずに沈黙した。
金火狐財団――その名の通り、これは一つの団体である。
ゴールドマン家、通称「金火狐(オーロラテイル)」一族を主軸とする、多数の商会や自治体の総称であり、それをまとめ、維持する組織も当然、その中に存在する。
代表的なのが、金火狐財団の本拠地、ゴールドコースト市国を統治する「市政局」、同市の治安を維持する「公安局」、財団で手がける各商業を統括する「商会総局」、他国との渉外活動を担う「国際局」、そしてそれら各局の動向を監視する――。
「監査局から、追及があったのよ。『第1調査室の成果が、芳しくない』と」
「……」
ジュリアから話を聞かされ、チームの全員が顔を青くしている。
「言われてみれば、本当にぐうの音も出ない、って感じね。
クラウン一家事件の時はバートが暴行・監禁されて殺されかけるし。
殺刹峰事件の時はエラン君が捕まって、フェリオ君が戦闘不能になるし。
ミッドランド事件もまた、エラン君とフェリオ君」
「う……」
指摘を受けた3人は、言葉に詰まる。
「この2年、私たちが手がけた事件はどれも民間人の手を借り、なおかつ、私たちの側に何らかの不手際が発生している。追及されても仕方ないわ」
「で、でも」
エランが顔を上げ、こんなことを言った。
「総帥である母さまの直属ですよ、このチーム。それを財団の一セクションである監査局がどうこうできるわけ……」
「エラン。あなた、自分の家の事情くらい理解しておきなさい」
フォルナがため息混じりに、関係を説明した。
「あなたもご存知でしょう、昔、金火狐のとある総帥が独裁行動を執って、一族全体を混乱の渦に巻き込んだことを。
そうした事態の再発を防止するために、総帥と同程度の発言権・免職権を持つ監査局を、あの英雄ニコル3世が、財団の設立の際に設置したと言う歴史があること、存じているでしょう?」
「あ……」
「その監査局が、今回の相手ですのよ?
いくらヘレン総帥でも、財団内の人事において自身と同等の権限を持つ監査局を、無理矢理に黙らせることなどできませんわ。
仮にそんなことをすれば、総帥は金火狐の掟に背くことになり、その結果自身の職を追われることになると、これほど単純明快な理屈が分からないわけでは無いでしょう?」
「……ですね」
フォルナの矢のような説明に、エランはしゅんとするしかなかった。
「フォルナさんの言う通りよ。
監査局は今回、『半年以内に、十分に評価できる実績が無ければ、我々は免職権を行使し、第1調査室を解散・再編成する』と言ってきたの」
「そりゃまずいな……。折角、いいチームができたと思ってたのによ」
そうつぶやくバートに、ジュリアは首を振った。
「そんな問題じゃないの。もう一度言うわよ?
私たちチームを解散させた後、『監査局が』新しいチームを再編成するのよ?」
「……?」
揃って首をかしげるフェリオとエランを見て、ジュリアは顔をしかめた。その様子を見て、フォルナが詳しく説明する。
「お二人とも、よく考えてください。このチームは総帥直属の調査チームですわ。それは言い換えれば、総帥の手となり足となる、総帥の思うがままに動くチームでなければなりません。
ですが『監査局が』チームを編成すると言うことは、総帥の意向を反映できないと言うことになりますわ」
「あっ、そっか」
「じゃ、本気でまずいじゃないっスか!?」
事の本質を理解し、男たち3人は揃って顔を青くした。
「そう。もしこのまま事が進めば、総帥は耳目を潰されたも同然。今後の活動に、大きく影響を及ぼすことになる」
「……あ、まさか、もしかして」
ぼそ、とつぶやいたエランに、バートが反応する。
「何だ?」
「監査局の局長も、ウチの一族の人なんですよ。しかも昔、総帥候補だった人なんです。母さまの方が選ばれたんですけど」
「そりゃ……、きな臭えな」
「ええ。総帥職に就けなくとも、総帥と同等の人事権を持ち、総帥に伝わる情報を、自分たちが選出したチームから聞くことができれば、総帥を簡単に操れるわ。恐らく前々から、その状態になることを狙っていたんでしょうね。
でも……、どんな思惑があろうと結局、私たちの不甲斐なさを突かれたのよ、今回の件は。私たちの至らなさが、総帥の急所を突かれた形になるわ」
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