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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    公安チームの挑戦 3

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    スピンオフ、第3話。
    奮起。




    3.
     と、フォルナが顔を上げ、こう提案した。
    「……では、実績を挙げればよろしいのでしょう?」
    「お?」
     その言葉に、バートも顔を挙げる。
    「監査局の出した条件は、『半年以内に成果を挙げなければ解散』でしょう? それならば、挙げてしまえばよろしいのでしょう?
     逆に考えれば、まだ半年も猶予があり、名誉挽回のチャンスがあると言うことですわ」
    「……そう、だな」
    「やりましょうよ」
     エランも、胸の前に握り拳を作って応える。
    「やらなきゃ母さまが危ないんですから、全力で頑張ります!」
    「オレもやりますよ!」
     フェリオも目に輝きを取り戻す。
    「今チームから外れて、変なトコに飛ばされたら、嫁から文句言われちまいますもん!」
    「……そうね。私も、このまま『駄目チーム』の烙印を押されて終わり、なんて納得できないわ。
     見せてやりましょう、私たちチームの実力を」
    「おう!」「ええ!」「はい!」「うっす!」
     ジュリアチームは一致団結し、この危機を乗り越えることを誓った。

     とは言え――。
    「何に手を付けましょうか?」
    「……うーん」
     今現在、チームの抱えている案件はどれも緊急性が低く、危険性も無い。到底大事件ではなく、評価に値するとは思えない。
    「そうね……、過去の大事件で、まだ未解決のものを当たってみるのはどうかしら」
    「なるほど。……ま、今抱えてるのは放っておいても全然問題なさそうだしな」
    「駄目よ。そっちはそっちで、ちゃんと解決しなきゃ」
     ジュリアにたしなめられ、バートは「だな」と応え、恥ずかしそうに頭をかいた。
    「とりあえず、バートとフェリオ君は抱えてる案件の処理。フォルナさんとエラン君は、過去の未解決事件の中から規模の大きなものをピックアップしてちょうだい。
     私は、バートとフェリオ君を手伝うわ」
    「了解です」
     チームに指示を与え、ジュリアはデスクに座った。
    「……ふう」
     話が一段落し、ジュリアは煙草に火を点ける。
    (うまく行けばいいけれど……。いいえ、うまく行かせなくちゃ。
     ヘレン総帥が事実上失脚するなんて、そんなの容認できないわ。昔から……、あの人は私の『お姉さん』だったんだもの)

     ジュリアとヘレンの関係は深く、長い。
     元々、若い頃のヘレンが今のエランのように、公安局で社会勉強を努めていた頃、彼女の上司だったのがジュリアの祖父なのである。その関係でジュリアは公安に入局したし、現在の「総帥直属の調査チーム」のリーダーに就いているのもその縁があったからである。
     幼い頃からの付き合いがあり、ジュリアにとっては本当に姉のような存在だった。

    (総帥には一杯、恩があるし、一番尊敬している人でもある。
     足を引っ張るなんて、ましてや私たちのせいで失脚するだなんて……、そんなこと、絶対駄目。絶対、させないわ)
     ジュリアは吸いかけの煙草をペール缶に捨て、バートたちの机に向かった。



     一方、フォルナとエランは資料室で調べものをしていた。
    「規模の大きい未解決事件……、ちゅうてもなぁ」
     そうこぼすエランに対し、フォルナは黙々とファイルを読み進めていく。
    (516年、ボルソイ一家強盗事件……、犯人一味が逃走し、未解決。でも、強奪品は戻ってきてる。
     511年、猛獣使いのカトラ事件……、アジトを機動部に囲まれた犯人が自殺し、その強奪品は行方不明。これもぱっとしないわ。
     507年、ゴールドコースト沖で起きた海賊事件、……は無理ね。公安の、少なくとも調査部の手がける事件じゃないわ。
     うーん……、まだ未解決で、私たちが扱えそうな大事件なんて、そうそう無いわよね)
     フォルナも隣のエラン同様、頭を抱えてうなる。
    「ああ……、全然ピンと来ませんわね」
    「そうですねぇ。……どないしよ」
     二人は揃って天井を仰ぎ、ため息をついた。
    「……わ、わわっ」
     と、エランがそのまま、椅子ごとひっくり返る。
    「何してらっしゃるの、もう……」
     仰向けに倒れたエランを見て、フォルナはまたため息をついた。

     と――。
    「君たち、いいかな?」
     背後から、恐る恐る声がかけられた。
    「……?」
     振り向いたフォルナの目に、ひょろひょろとした眼鏡の短耳が映る。
    「まあ!」
     その人物を確認した途端に、フォルナと、ひっくり返っていたエランの二人は直立・敬礼した。
    「あ、そんな、かしこまらなくていい。いや、そのね」
     眼鏡の短耳――公安局局長、ブルースは人目を気にしつつ、小声で話し始めた。
    「君たちに頼みたい仕事があるんだ。義姉さんの助けに、と思って」
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    ~ Comment ~

     

    このスピンオフの前身とも言える短編「KCN」が妙に好評だったので、もう一作作ってみようかとw
    こちらの話も楽しんでいただければ幸い。

    CSI観てないので、そこら辺については何とも言えないですが、
    刑事モノで刑事さんたちがワイワイ話してるのは、
    どの刑事ドラマに関わらず、共通して好きなシーンですね。
    ポンと手がかりがつかめることもあれば、他愛の無いおしゃべりに終始したりと、
    ドラマの中では一番人間味と、その作品のエッセンスにあふれるシーンだと思ってます。

     

    スピンオフと云っても主を食う勢いになりそうな・・・。
    例えて云うなら科学捜査班のマイアミ版みたいな。
    私はグリッソムよりホレイショの人間味溢れるとこが好きだなぁ。
    ジュリアはそんな感じがするし、脇の人物達がまたカワイイ、ドジな感じもあり、でも一生懸命でもある。
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