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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    公安チームの挑戦 5

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    スピンオフ、第5話。
    難攻不落の金庫。




    5.
     ジュリアたち三人は、金火狐銀行本店に足を運んだ。
    「ほほう、スポルト事件の調査ですか。……いやいやまったく、大変な事件でした」
     応対した頭取は、当時の混乱を語ってくれた。
    「当時、私は専務の地位にいたのですが、本当に当時は滅茶苦茶な更迭騒ぎで。私の上にいた頭取やら副頭取、理事やら何やらの首が簡単にポンポン飛びましたからね」
    「ええ、うわさには聞いています。それで、我々としてはどのように金塊が奪われたのか、それを捜査したいのですが、金庫の内部や構造などを詳しく教えていただけますか?」
    「はい、ご案内します」
     頭取に案内され、ジュリアたちは銀行地下の金庫前に到着した。
    「かなり深いですね」
    「ええ。ご存知の通り、ゴールドコーストは世界有数の水道網が張り巡らされています。そこから賊が侵入を試みる可能性も少なくないので、それを防ぐため下水道よりも地下に金庫が作られているのです。
     さらに、その地下金庫も壁と天井、床の六面すべてをミスリル化合物で被覆した30ミリの鋼板で、3枚重ねて覆っています。武器、爆薬、魔術、何を使おうと破ることはまず不可能でしょう。仮に破ろうとしても、専門家は優に3日はかかると」
    「なるほど。それだけ時間と手間がかかれば、周囲の人間が気付かないわけは無いですね。この扉もそのように?」
     ジュリアが指し示した分厚い扉を振り返り、頭取は深くうなずく。
    「勿論です。鍵も特殊でして、これを使っています」
     頭取は首から提げていた札を三人に見せる。
    「これは?」
    「魔方陣の一種です。これは代々、頭取と副頭取の2名にしか貸与されていない鍵でして、これが無ければ金庫から引き出すことは不可能です。複製もできません」
     頭取は首から札を外し、扉の鍵穴に差し込んだ。

     鍵を開け、一行は中を覗き見た。扉の奥には、5メートルほどの通路が続いている。
    「……? この床にも、何か細工が?」
    「ええ。ここにも魔方陣があります」
     頭取は床と、通路の先にある扉を指し示す。
    「入ってすぐのところに、魔方陣(①)が。その後に、別に魔方陣(②)があります」
    「別に?」
    「はい。そして②と金庫の間にもう一枚扉があります。ま、それ自体はただの、木の扉ですが。そして金庫の中にも、もう一つ魔方陣(③)があります。
     仕組みはこうです。例えば私が、金塊を持って入ったとしましょう。①を通過し、②に足を乗せたとします。そこで私と金塊の重さの合計が記録されます。
     扉を開け、金庫の中に入ると、そこで③が作動します。私が金庫の中にいる間、金庫内の重さを記録し続けています。
     そして金を収め、金庫から出ると②が入った時と出た時との重さを比べます。ここで②と③が連動し、重さが増していないかを確認します。
     重さが増していなければ、私は無事に①を通過できます」
    「と言うことは、中から金を盗んで出て行こうとすると……」
     エランの言葉の先を、頭取が取る。
    「①が作動します。何でも土の魔術で、賊を封じ込めるとか」
    「石柱で相手を包む『ホールドピラー』か何かですわね、恐らくは」
    「そう聞いています。範囲はこの金庫前、全体。土の術を打ち消す雷の術でも、解除に1、2時間はかかるでしょう」
    「そうしている間に公安が到着して御用、と言うわけね」
    「その通りです」
     うなずいた頭取に、フォルナが質問する。
    「通常の業務で中から物を取り出す場合は、どうされるのでしょうか?」
    「先程の鍵が、魔方陣を打ち消す役割を担っています。この金庫はお得意様が物を収めるのにも使われていますから、預けるだけであれば通常は問題ありません。
     しかし私共の付き添い無く、無断で引き出そうとすれば……」
    「魔方陣が作動、ですね」
    「その通りです」

     頭取から金庫のシステムを聞いた三人は、彼を交えて犯行方法を推理し始めた。
     エランの推理。
    「足が触れれば魔方陣が作動するんなら、例えば風の術で浮いて……、とかどうでしょう?」
    「不可能です。②は魔術の気配を感知する作用もありますから、使った時点で①が作動するようになっています」
     フォルナの推理。
    「それなら、魔方陣を脚の力で飛び越えたらどうなるのでしょう? 世の中には幅跳びで5メートルくらい跳躍できる方もいらっしゃいますし」
    「それも不可能です。扉を開けなければ金庫には入れませんし、当然、着地することになります。飛んだ勢いのまま蹴破ったとしても、②が扉の異常を感知して①を作動させます」
     ジュリアの推理。
    「金と同等の錘を使ってごまかしたら? 重さがプラスにならなければ、作動しないとのことでしたが……?」
    「預け入れで地下に進む前に、私共が綿密にチェックいたします。例えば表面をメッキし、金塊と偽った鉛の塊を持ち込んだとしても、発覚しないわけがありません」
    「……」
     その後も色々と知恵を出し合ったが、正解には一向に辿り着かなかった。
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