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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    公安チームの挑戦 7

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    スピンオフ、第7話。
    街と人の裏側。




    7.
     前調査チームの資料によれば、既に港湾地区と裏通りを周り、金塊の行方は入念に捜査されていたのだが結局、発見できなかったのだと言う。
    「となれば、残るは下水道、……ですね」
    「そうなるわね」
     ジュリアはため息をつき、意を決して命令した。
    「下水道、探してみましょう」
     が、財団市政局の水道部からもらってきた、下水道の配管図を見て、一同は絶句した。
    「でけ……」
     地図によれば、人が通れる大きさの配管だけでも、優に20キロ近くは張り巡らされているのだと言う。
    「これは……、手のつけようが無いんじゃないっスか」
    「それでもやってみなくちゃ。他に目ぼしいところは探し終えたそうだし」

     相談の結果、エランとバート、そしてフェリオの三人が下水道へ潜ることになった。
    「まあ、流石にこんな臭せー中を女の子に歩き回らせるってのは気が咎めるしな」
    「そりゃ、そうですけども……、うえぇ」
     エランは吐き気を抑えつつ、灯りを掲げて周囲を照らす。
    「汚いなあ」
    「当たり前だろ。下水なんだから」
    「分かってますけども」
    「でも、事件当時もココ探したんでしょ? しかも30人くらいで」
     尋ねてきたフェリオに、バートは肩をすくめる。
    「ああ。だが結果は散々、下水まみれになったにも関わらず、見つからずじまいだ。とは言っても、あの地図には本線しか描かれてないからな」
    「って言うと?」
    「後々必要になって継ぎ足した側道は、ほとんど描かれてない。いや、描き切れなかったってのが本当のところだけどな。
     他にも個人が掘った道ってのが、いくつかある。だもんで、ここに入られたら、普通はまず犯人も窃盗物も見つからない。この前のはまだ発覚してから日が浅かったから、運が良かったんだ」
    「……はぁ」
     三人はため息とも、吐き気を抑える声とも取れない音を喉から漏らし、下水道を奥に進んだ。



     一方、フォルナとジュリアは、スポルト氏を犯人と断定した証言が真実かどうか、調べ直していた。
    「6年前の話を? また?」
     二人はスポルトの友人だった近所の男性を訪ね、証言を確認しに来ていた。
    「ええ、すみませんがもう一度、お聞かせ願えますか?」
    「まあ、いいけどさ。
     6年前の夏の夜、俺はあいつの工場を訪ねたんだ。その頃あいつ、奥さんと子供に逃げられて、仕事も手に付かない状態だったからさ、工場もほとんど休みっぱなしだったんだ。
     でもその夜、灯りが点いてたから、久々にやる気を取り戻したのかなって、そう思って覗いてみたんだよ。そしたらあいつ、キンキラした金塊の上に座って、ボーっとしてたんだ。
     その感じが異様でさ、俺はそのまんま自分の家に帰って、翌日、公安に通報したんだ」
    「なるほど。あなたが直接、本人に問いただしたりなどは?」
    「してないよ。今言ったろ? そのまんま帰ったって」
     男性はむっとした表情を浮かべるが、ジュリアは構わず質問を続ける。
    「事件の直前、例えば前日や当日昼間などに、スポルトさんに変わった様子はありませんでしたか?」
    「無かったよ。前日も、ぼんやりした様子だった。つっても、1年くらいずっとふさぎこんでたからな。さっきも言ったけど、奥さんと子供に逃げられたからな」
    「ふむ。事件の前後、工場の中には入りましたか?」
    「いや。事件前は訪ねる理由が無かったし、事件が起こってしばらくは、あんたら公安が立ち入り禁止にしてた。それが終わってからも、入ってない。理由が無いしな」
     続いてもう一つ、ジュリアは質問を続ける。
    「スポルトさんに借金など、何か金策に困っている様子は?」
    「そりゃあるさ。ずっと工場動かしてなかったんだから、あちこちから借金してたっぽいぞ。俺からも大分借金してたしな」
    「なるほど。……そうですね、今日のところはこの辺で失礼します」

     ジュリアとフォルナは公安局へと戻りつつ、証言について検討していた。
    「6年前のこととは言え、矛盾がございますわね」
    「そうね。あの男性、発言に妙な食い違いがあるわね」
     二人は声をそろえて、断言した。
    「嘘があるわね」
    「貸しのある友人が、金塊の上に座ると言う、いかにもお金を持っている様子を見て、声をかけないわけがないでしょう。増して、普段の様子を知っていて、心配しているくらいの付き合いなら、なおさら声をかけるはず」
    「そうね。それに50キロの金塊を、誰にも気付かれずひょいひょいと持ち込めるわけが無いわ。それなのに近所に住む彼が、夜までずっと気付かないなんてことは、有り得ない。
     嘘をついているのは明らか。じゃあ次の疑問――何故そんな嘘を? その嘘をついて得をするのは、一体誰?」
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    ~ Comment ~

     

    おほめいただき、ありがとうございます(*´∀`)
    面白いと言っていただけて、嬉しい限りです。

    誰か一人だけが「主人公」である話、と言うのは、
    「演劇」になってしまうことが度々あります。
    その人のためだけに話が進むような感じがあり、
    周りの登場人物が不憫だな、と。
    皆頑張ってくれているわけですし、
    できる限り脚光を浴びせたいなと思ってます。
    僕の場合、そう言う思いが創作意欲の原動力なのかも知れません。

     

    やっぱ、面白い。
    スピンオフとするのはもったいないなぁ。
    キャラの絡みが面白い。
    セイナの場合は主人公が絶対の存在だから、どうしても主対従と云う関係はくずせないし、読者も望んでいる。
    でもこれにはそう云う縛りがないのがいい感じ、肩のこらない作品。変な言い方ですみませんが、セイナの場合は戦う事が多いいので、力を入れて読んでしまうのです。
    だけど、黄輪さんの創作意欲は素晴らしいですよ。
    そして何よりも続ける力には、とても感心して、見習いたい。
    とにかく、文がうまい。楽しい。
    長々とすみません。
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