「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
双月千年世界 短編・掌編
公安チームの挑戦 8
スピンオフ、第8話。
狂気を生む金。
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狂気を生む金。
8.
下水の中を歩いていたバートたち三人は、地図に無い側道を発見した。とは言え――。
「どうします?」
「とりあえず印だけ付けて、明日調べようぜ。もうだりーわ」
「そっスね」
こうした側道は既に10本以上見つけており、そのすべてを一度に調べきれないのが現状だった。
「空気が悪すぎて頭おかしくなりそうだっつの。もう限界だ、限界!」
「そっスね」
「本当に、肺の中が腐りそうな臭いしてますよね。こんなところに隠したら、流石の金も錆びちゃうんじゃないかって思っちゃいますよ」
「そっスね」
バートは顔をしかめつつ、煙草をくわえて火を点けようとする。
「……チッ、しけってやがる。……もう何時間くらい回った?」
「そっスね」
「……フェリオさん?」
「そっスね」
バートとエランはフェリオに振り返り、目を丸くした。
「……おいおい、顔真っ青っつーか、土気色じゃねーか」
「そっスね」
「そっスね、じゃないですよ! 大丈夫ですか!?」
「……」
フェリオはばたん、とうつ伏せに倒れこんだ。
「まーったく、世話焼かせるぜ」
フェリオが参ってしまったので、バートたちは地上に戻った。
「ひぃ……ひぃ……」
公園のベンチに寝かされたフェリオの息は細く、下水道の空気にあてられているのは明らかだった。
「エラン、なんか飲み物買って来い。俺も結構辛い」
「そうですね。でも……、売ってくれるかなぁ」
下水道を散々回った三人はすさまじい異臭を放っており、公園にいた人間はおろか、鳩でさえも寄ってこようとしない。
「……仕方ねえな。局に戻るまで我慢すっか」
「はい……」
フェリオが目を覚ますまで、バートとエランは下水道地図を見直すことにした。
「にしても、多いな。今日、4~5時間回っただけでも、こんなに見つけるとは思ってなかったぜ」
「ですね……。こんなに皆が勝手なつなぎ方してたら、そのうちこの街、沈んじゃうんじゃないかって不安になりますよ」
「水道部の奴らも不安がってたな、それは。できるなら多めに予算もらって、改修工事したいって言ってたんだが、市政局の他セクションとの予算の取り合いで、うまく行かないらしい。
かと言って、俺たちが総帥にそんなこと進言するのも、筋が違うしなぁ」
「そうですね。下手にそんなことしたら、他のとこからも『話を通してくれ』って殺到するかも知れませんしね」
「だな。……やれやれ、金はいくらあっても足りないもんだな」
スポルト氏の友人を訪ねてから数日後、ジュリアとフォルナの二人は、別の人物を訪ねていた。
「今さら、私に何の御用です」
訪ねたのは、金火狐銀行の前頭取。更迭された後は凋落(ちょうらく)の一途を辿り、旧い商業地区と裏通りの境――最貧層が多く住む場所で、細々と飲食店を営んでいた。
「お伺いしたいことがありまして。6年前の事件のことで」
「でしょうな。それ以外に、私なんかを訪ねるわけが無い。それで何ですか、聞きたいこととは? 事件発覚後の、金庫の惨状でも?」
「いいえ。お聞きしたいことは2点です。
まず、あなたには頭取時代、かなりの額の借金があったと記録にありました。それも、個人的な。退職金にて弁済されているようですが、もしその退職金が無かったら、どうやって支払うおつもりでしたか?」
「なぜそんなことを!?」
元頭取は顔を真っ赤にし、包丁に手をかけた。
「そんなことは私の個人的事情だ! 事件に関係なんか無い!」
「いいえ、あるはずです」
そう断言され、元頭取の顔色がさっと変わった。
「……っ」
「なぜならあなたは、その職権を濫用して借金を支払おうとしていたから。そうですよね?」
「何を、馬鹿な……!」
「そうでなければ、金庫から金塊50キロを持ちだす理由が無いからです」
「……!」
元頭取の手から、カランと音を立てて包丁が落ちる。
「2つ目の質問、と言うよりも確認ですが――あなたはスポルト氏の友人を抱きこみましたね?」
下水の中を歩いていたバートたち三人は、地図に無い側道を発見した。とは言え――。
「どうします?」
「とりあえず印だけ付けて、明日調べようぜ。もうだりーわ」
「そっスね」
こうした側道は既に10本以上見つけており、そのすべてを一度に調べきれないのが現状だった。
「空気が悪すぎて頭おかしくなりそうだっつの。もう限界だ、限界!」
「そっスね」
「本当に、肺の中が腐りそうな臭いしてますよね。こんなところに隠したら、流石の金も錆びちゃうんじゃないかって思っちゃいますよ」
「そっスね」
バートは顔をしかめつつ、煙草をくわえて火を点けようとする。
「……チッ、しけってやがる。……もう何時間くらい回った?」
「そっスね」
「……フェリオさん?」
「そっスね」
バートとエランはフェリオに振り返り、目を丸くした。
「……おいおい、顔真っ青っつーか、土気色じゃねーか」
「そっスね」
「そっスね、じゃないですよ! 大丈夫ですか!?」
「……」
フェリオはばたん、とうつ伏せに倒れこんだ。
「まーったく、世話焼かせるぜ」
フェリオが参ってしまったので、バートたちは地上に戻った。
「ひぃ……ひぃ……」
公園のベンチに寝かされたフェリオの息は細く、下水道の空気にあてられているのは明らかだった。
「エラン、なんか飲み物買って来い。俺も結構辛い」
「そうですね。でも……、売ってくれるかなぁ」
下水道を散々回った三人はすさまじい異臭を放っており、公園にいた人間はおろか、鳩でさえも寄ってこようとしない。
「……仕方ねえな。局に戻るまで我慢すっか」
「はい……」
フェリオが目を覚ますまで、バートとエランは下水道地図を見直すことにした。
「にしても、多いな。今日、4~5時間回っただけでも、こんなに見つけるとは思ってなかったぜ」
「ですね……。こんなに皆が勝手なつなぎ方してたら、そのうちこの街、沈んじゃうんじゃないかって不安になりますよ」
「水道部の奴らも不安がってたな、それは。できるなら多めに予算もらって、改修工事したいって言ってたんだが、市政局の他セクションとの予算の取り合いで、うまく行かないらしい。
かと言って、俺たちが総帥にそんなこと進言するのも、筋が違うしなぁ」
「そうですね。下手にそんなことしたら、他のとこからも『話を通してくれ』って殺到するかも知れませんしね」
「だな。……やれやれ、金はいくらあっても足りないもんだな」
スポルト氏の友人を訪ねてから数日後、ジュリアとフォルナの二人は、別の人物を訪ねていた。
「今さら、私に何の御用です」
訪ねたのは、金火狐銀行の前頭取。更迭された後は凋落(ちょうらく)の一途を辿り、旧い商業地区と裏通りの境――最貧層が多く住む場所で、細々と飲食店を営んでいた。
「お伺いしたいことがありまして。6年前の事件のことで」
「でしょうな。それ以外に、私なんかを訪ねるわけが無い。それで何ですか、聞きたいこととは? 事件発覚後の、金庫の惨状でも?」
「いいえ。お聞きしたいことは2点です。
まず、あなたには頭取時代、かなりの額の借金があったと記録にありました。それも、個人的な。退職金にて弁済されているようですが、もしその退職金が無かったら、どうやって支払うおつもりでしたか?」
「なぜそんなことを!?」
元頭取は顔を真っ赤にし、包丁に手をかけた。
「そんなことは私の個人的事情だ! 事件に関係なんか無い!」
「いいえ、あるはずです」
そう断言され、元頭取の顔色がさっと変わった。
「……っ」
「なぜならあなたは、その職権を濫用して借金を支払おうとしていたから。そうですよね?」
「何を、馬鹿な……!」
「そうでなければ、金庫から金塊50キロを持ちだす理由が無いからです」
「……!」
元頭取の手から、カランと音を立てて包丁が落ちる。
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