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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    公安チームの挑戦 11

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    スピンオフ、第11話。
    事件の終わり、そして変わらないチーム。

    明日クルマのドット絵を掲載し、
    そして明後日からいよいよ、「蒼天剣」の最終部に突入です。
    1年半をかけ、ようやく終わりが近付いてきました。
    皆様、最後までよろしくお付き合いください。




    11.
     事件の全容は、このようになっていた。
     賭博により多額の借金を抱えた元頭取は、己の管理する金庫から金塊50キロを不正に引き出し、その罪を無関係の一市民、ドゥエ・スポルトになすりつけることにした。
     その根回しとして、スポルトの友人にインゴット1枚を渡し、嘘の証言をさせたのだが、この友人はもっと多くの金を欲した。
     そこで彼は、公安に通報する前に、なんとスポルト自身にこの件を暴露したのだ。

    「当然、あいつは面食らってた。そりゃ、いきなり2億エル盗んだ犯人にされる、なんて思いもしなかったろうし」
     公安局の取調室で、バートは犯人からの事情聴取を行っていた。
    「で、共謀して元頭取の家から、金塊を盗んだんだな」
    「そうだ。あいつだって、いきなり犯人にされて捕まって人生おしまい、じゃ納得なんて行きっこねえ。
     俺だって流石に、無実の友達を陥れるなんてことしたくなかったし。と言って、金塊を突っ返す気にもならず。
     じゃあ二人でそっくり盗んじまおう、ってなったわけだ」
    「まあ、50キロを一人で盗んで運んで、なんてのは相当きついしな。複数犯だったってのは大体、見当付いてた。
     まさか、その片棒担いだのが本当に、最初に追ってた容疑者だったとは思ってなかったけどな。今回の件では完璧に、スポルトは濡れ衣着せられた被害者だと思ってた」
    「はは……」「何がおかしいんだ?」
     笑う犯人に、バートは黒眼鏡をずらしてにらみつけた。
    「笑える立場かよ? ふざけてんじゃねーぞ」
    「……」
     犯人をひとしきりにらみつけ、バートは聴取を再開する。
    「で、どうなんだ? スポルトは、事件の後どこに行ったんだ? まさか、殺したか?」
    「殺してない。それは本当だ。
     金塊を盗んで、下水道に隠れたところで、あいつはこのまま街から逃げると言ったんだ。で、餞別にインゴットを10本、2キロ分渡して、そのまま別れた」
    「そうか……。じゃあ、どこへ行ったかは、分からないのか?」
    「ああ。別れて以来ずっと、あいつから連絡は無い。……職員さんの言う通り、死んだかも知れないな」



     犯人が逮捕され、盗まれた金塊のほとんども回収されたことで、事件は一応の解決を見せた。
    「これで一安心、やね」
     そう言って、ヘレンは胸を撫で下ろした。
    「あ、そうそう。後な、バート君らが下水道歩き回って、地図作ってくれてましたやろ? あれな、市政局から使わしてほしいちゅうお願い、来とりますねん」
    「ええ、構いません。財団の助けになるなら」
    「うんうん、ありがとさん。事件解決したことと、この地図作ってくれたこととで、監査局もええ評価してくれますやろ」
     悩みの種が消え、ヘレンは嬉しそうに笑う。一方で、ブルースもほっとした顔をしていた。
    「それにしても、事実を知ってみれば、展開が二転三転した、妙な事件だったわけだ。いや、今後の捜査方法を検討する上で、非常に参考となる事件だった、と言うべきか。
     スピリット君、できれば今回の件、詳細にまとめておいてほしい。今後のお手本にしたいんだけど、いいかな?」
    「ええ。私たちの成果が教科書として使われるなら、喜ばしい限りです。どうぞ、今後の捜査モデルにしてください」
    「そう言ってくれると、こちらも嬉しいよ」
     顔をほころばせるブルースの横で、ヘレンが不意に、表情を曇らせた。
    「……せやけど、スポルトさんやったっけ。その人も不憫ちゅうか、何ちゅうか」
    「そうですね……。妻子に逃げられ、窃盗犯にされた上に、街を追われるなんて。実際に金塊を盗み、その一部を持って逃走したとは言え、やはり、一番の被害者と言えますね」
    「確かに。つくづく、今回の件は局全体に報せるべきものになった。今後、こんなことが起こらないよう、重々反省しなければいけないね」

     報告を終え、オフィスに戻ったジュリアを、チーム全員が出迎えた。
    「お疲れ様っス、ボス」
    「ありがとう」
     ジュリアはデスクに座り、煙草に火を点ける。
    「まあ、これでしばらくは監査局からの追及は無くなるわけだけど」
    「しばらくは?」
     そう尋ねたエランに、フォルナが答える。
    「また失敗したり、成果が上がらなかったら、再び追及されるでしょう?」
    「そう言うことよ。
     ……仕事を続けましょう。私たちチームは存在する限り、事件を解決し続けないと、ね」
     ジュリアは煙草をペール缶に捨て、机の上の書類を手に取った。
    「さ、次の案件よ」

    公安チームの挑戦 終
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