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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第9部

    蒼天剣・孤王録 1

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    晴奈の話、第525話。
    傀儡のフー。

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    1.
    「号外! 号外!」
     街中に、新聞とビラが飛び交っている。
    「戦争だ! また戦争が始まったぞ!」
     ビラを見た者たちは皆、一様にビラを握りつぶして嘆く。
    「またなの……?」
    「もう終わったって言ったじゃないか」
     新聞を読み終えた者たちは皆、一様に新聞を地面に叩きつけて憤る。
    「何を考えているんだ!」
    「これ以上なお、我々を苦しめると言うのか!?」
     やがてその怒りは熱に換わる。
    「もう放っては置けない!」
    「『ヘブン』の横暴、許すまじ!」
     熱気が街中に伝播し、狂気を帯びていく。
    「『ヘブン』打倒だ! 今こそ、この央北を正すのだ!」
    「おうッ!」
     クロスセントラルの市民たちは手に武器を取り、「ヘブン」の居城、ドミニオン城へとなだれ込んだ。
    「ヒノカミ陛下を倒せーッ!」
    「倒せーッ!」
     だが、その怒号は突然かき消された。
    「ぎゃッ!?」
     突然、暴徒の一人が、胸から血を噴き出して倒れたのだ。
    「な、なん……、ごはッ!?」
     別の暴徒の頭が、粉々になる。
    「ひ、ひい……、ぎゃあああーっ!?」
     また別の暴徒が、突然燃え上がる。
    「に、逃げろ! 殺される!」
     勢いづいていた暴徒たちはあっと言う間に、城の前から消えた。

    「……片付けとけ」
    「はっ……」
     城の窓から様子を見ていたフーは、短く命じてその場を歩き去った。
    (くそ、くそ、くそ……)
     フーは内心、毒づいていた。
     無理矢理に戦争を始めさせたアランに。
    (俺の……俺のことを……何だと……)
     それに追従していった側近たちに。
    (俺は……お前らにとって……王じゃないってのかよ……)
     戦争が始まると知った途端、暴徒と化した民衆に。
    (俺は……何なんだよ……)
     そしてそれを、止められなかった自分に。
    (俺は……道化か? 道化だって言うのか?
     悪魔を倒したのは俺だ。軍を率いたのも俺だ。『ヘブン』を築いたのも俺なんだ!
     それがどうだ! 俺は今、バカみてーなマント羽織って、バカみてーな王冠載せて、バカみてーに『片付けろ』なんて命令してやがる!
     バカだ、バカなんだよ俺は……ッ! 何にも決定権の無い、何も動かすことのできない、ろくでなしの大バカ大王だッ!)
     フーは万物に対し、底知れぬ怒りを覚えていた。
    「アランッ!」
    「どうした」
     呼べばすぐ、アランはやってくる。それだけが、以前と変わらないものだった。
    「兵の数は!」
    「およそ13万だ」
    「13だと!? 以前の調べでは、15万を超えると言っていただろうが!」
    「ここ数日、各地で起きた暴動により、死傷者が出ている。さらに、その事態の収拾に当たらせているため、手の空いている兵士は13万程度になっている」
     それを聞いて、フーの怒りはさらに燃え上がる。
    「はぁ!? 何寝言吹かしてんだ!? そもそもお前が、お前、が! 戦争やるぞっつったんだろうが! こうなるって分からなかったのかよ!?」
    「想定の範囲内だ。13万でも、十分に用は成す」
    「……チッ。じゃあ、戦艦の数は」
    「旗艦6隻に、巡洋艦24隻。駆逐艦10隻。その他諸々を合わせれば、50隻程度の戦力となる」
    「じゃあ、……ああ、もういい。下がれ」
    「分かった」
     アランはすっと、フーの側を離れた。
     と、アランが廊下の角を曲がろうとしたところで、フーはもう一つ尋ねた。
    「アラン」
    「何だ」
    「……俺は何者だ?」
    「王だ。この世界の、頂点に立つ王者だ」
    「本当かよ」
    「それ以外に何だと言うのだ?」
    「偉そうにしてりゃ、それだけで王様か?
     じゃ、お前の方が王様だろ。俺より偉そうにしやがって」
     フーはブチブチと文句を言いながら、自分の部屋へと足を向けた。

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    お待たせしました。
    最終編、開始です。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    ここまでの読了とコメント、誠にありがとうございます。
    今後とも、よろしくお願いします。

    NoTitle 

    ポールさんのコメントではないですが。
    私もここまでコメントをつづけながら読めましたね。。。
    これからも頑張って読みます。
    ( ;∀;)

    NoTitle 

    おお……ここまで来られましたか……。
    ありがとうございます、お疲れ様です。

    NoTitle 

    ついにここまで来たか……長い道のりであった……。

    とりあえずご報告まで(^^)
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