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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第9部

    蒼天剣・氷景録 3

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    晴奈の話、第554話。
    割れない氷。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
     ぱ、ぱぱ……、と、グリーンプールの沖合いに火薬の炸裂音が響き渡る。
     あっと言う間に、港は硝煙で白く染まった。
    「撃て、撃て、撃てええーッ!」
     リストが喉も潰れんばかりの大声で、叫び続ける。周りの銃士もそれに合わせ、叫びながら銃を乱射する。
     だが、日上軍は盾を用意しており、初めの数発はそれに弾かれてしまった。
    「くそ、効かない!」
     銃士たちの中から、苦々しい声が漏れる。それを聞いたリストが、怒鳴りつける。
    「効く! そのまま撃ち続けなさい!」
    「し、しかし」
    「いくら人が乗れるからって言っても!」
     リストの「ポプラ」が、何発目かの銃弾を吐き出す。
    「氷の上よ! そんなに重たいもの、持ってけるワケない!」
     その言葉を裏付けるように、リストの放った銃弾が敵兵の持っていた盾を貫通した。
    「ぐふっ……」
    「ほら見なさい! 薄いのよ、あの盾は!」
     あちこちからボゴボゴと、盾に穴が空く音が響き始める。そして最前列にいた敵兵たちが、ガタガタと崩れ始めた。
    「さあ、撃って! 銃が灼けつこうが、何しようが、とにかく撃つ! 撃ちまくるのよ!」
     一旦敵が崩れ始めると、銃士たちの士気も上がり始める。
    「うおおおお……ッ!」
     銃士たちは咆哮を上げ、さらに銃を乱射していった。

    「予想通り、であるな」
    「そっスね」
     ハインツとルドルフ、そして2名の傭兵が単眼鏡を使い、離れた場所で第一陣の様子を観察していた。
    「あやつらで押し切るのは、やはり難しいだろうな」
    「まー、無理っしょ。元々、第一陣は敵の弾を消費させるのが目的ですから」
    「ではそろそろ、第二陣と言うわけか」
    「いや、それはまだっス。あのイケイケちゃんなら、目の前の敵をとりあえず殲滅させなきゃ気が済まないでしょーし、このまんま一旦弾が切れるとこまで、持ち込ませときましょ」
    「ふむ。……退却させなくていいのか?」
     ハインツの発言に、ルドルフはコリコリと狐耳をかく。
    「んー、そりゃ得策とは言えないっしょ」
    「何故だ? 犬死にさせる気か?」
    「軽量化重視のせいで、あいつらの防具はせいぜい盾だけっスよ? 後ろ向いて退却したら、蜂の巣じゃないっスか」
    「……あ、なるほど」
    「それよりか、このまんま弾が切れるまでじっとしてた方が、ずっと生き残れる可能性が、……って、おいおい」
     ルドルフの目論見をよそに、第一陣の兵士たちはじわじわと下がり始めた。
    「……あーあ、撃たれちまってる」
     ルドルフはくわえていた煙草を捨て、背中に提げていた銃を手に取った。
    「んじゃ、ま、しゃーない。第二陣、用意させますか」
     ルドルフは空包を銃に込め、空に向けて撃った。
    「じゃ、ハインツの旦那。よろしく頼みましたよ」
    「うむ。……ではお主ら、行こうか」
     ハインツは傭兵たちを引き連れ、敵陣へと向かっていった。



     戦闘が始まってから、あっと言う間に1時間が経過した。
    「どうって?」
    「まだ全然」
    「そっか」
     港の両端にいる術士隊から、「思った以上に氷が分厚く、現状において割れる気配はまったくない」との報告を受け、トマスが不安がっていた。
    「間に合うかな……」
    「間に合わなきゃ困る。間に合わせてくれるさ」
    「そうだけども」
     おろおろとしているトマスに対し、エルスは泰然自若と構えている。
    「落ち着きなよ」
    「そ、そうは言っても」
    「エドさんも言ってたろ? トップが慌ててたら、組織全体もガタガタになる」
    「……そうだね。うん」
     トマスは椅子に座り、コーヒーを手に取った。
    「大丈夫かな」
    「また言ってる」
    「いや、術士隊の方もだけど、それを守るセイナたちもさ」
    「それこそ、心配無用ってもんさ。北端にはセイナとコスズのコンビ、南端にはミラとバリーのコンビを筆頭として防衛線を敷いている。
     何があっても、彼らの敗北は無いさ。ってことは、時間さえかけられればこの作戦は成功するってことになる」
    「……うまくいけばいいけど」

     グリーンプール港、北端。
    「どうだ?」
     晴奈に尋ねられ、術士の一人が答える。
    「術式の方は順調に作動しております。しかし、効果が今ひとつと言うか……」
    「って言うと?」
     今度は小鈴に声をかけられ、術士は困った顔を向ける。
    「想定されていたより、氷が分厚いようです。それに気温が時間を追うごとに段々と下がっているため、厚さがジワジワと増しているようで……」
    「あっちゃー……、そー言やそーよね」
     頭を抱えてうなる小鈴に、術士が説明を継ぎ足す。
    「ただ、それもある程度は想定内と言いますか、半日経てば朝日の昇る時刻が近付き、気温も上がってきます。
     氷の下を流れる海流も温められるので、氷もその時間には割れやすくなるかと」
     報告を受け、晴奈は肩をすくめる。
    「どうあっても、残り11時間はかかると言うわけか。
     まあ、計画に変更は無いのだから、何も悩むことはないか。守りには専念できそうだな」
    「頼んだわよ、晴奈」
    「ああ、任せろ」
     晴奈は小鈴と手をばしっと合わせ、気合を入れ直した。
     と――晴奈の視界の端に、氷海の向こうからぞろぞろと歩いてくる影が映る。
    「……やはり来たか」
    「みたいね」
     二人は迫り来る敵兵たちに向き直り、身構えた。

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    2016.12.11 修正
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    弾薬を使用する、と言う面において、
    銃火器は他の武器と比べて制限を受けるものです。
    ただ、他の武器や戦術にも同じことが言えるので、
    いずれにしても状況に会った運用が求められるでしょうね。

    彼女も自分にとっては非常に大切なキャラです。現在連載中の「白猫夢」の前半部においても、重要な働きをしてくれています。
    十二分にご理解いただけていることは承知していますが、大事に扱っていただけるよう、改めてお願いいたします。

    NoTitle 

    信長の3段銃を思い出しましたね。
    銃の撃ち方も色々と創意工夫がありますからね。
    戦術と言う面では、銃は扱いにくいところもありますからね。

    キャラクターの件誠にありがとうございます。
    語弊があった件、お詫び申し上げます。
    私も小説として掲載させていただく以上はそのキャラクターに真剣に向き合って書くつもりです。
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