「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第9部
蒼天剣・氷景録 4
晴奈の話、第555話。
賞金稼ぎと人間武器庫。
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4.
晴奈たちが気付くと同時に、敵兵たちはこちらに向かって駆け出してきた。
「来るぞ! 迎え撃てッ!」
晴奈の号令に従い、剣士隊も走り出す。互いの分隊が衝突し、場は瞬く間に騒がしくなった。
「行くぞ、小鈴!」
「ええ!」
指揮していた晴奈たちも、その喧騒の中へと飛び込んでいった。
「りゃあッ!」「ぐあッ!?」
30人以上の敵兵たちに、晴奈は小鈴の助けを借りて立ち向かう。晴奈の率いる兵士たちも果敢に攻め込み、倍以上いる敵を押し返していく。
「だ、ダメだ!」「進めない!」
数の上で有利なはずの敵兵の士気が、みるみる下がっていく。それを感じ取った晴奈は、一気に追い払おうと大技を見せ付けた。
「これ以上寄れば命は無いぞ、雑兵どもッ! この炎の餌食になりたいかッ!?」
晴奈の剣術、「火閃」で空気が燃え上がり、けたたましい音を立てて爆ぜる。
「う……」「ひ、いっ」
同盟軍の猛攻と晴奈の威嚇で、敵のほとんどは後退し、攻めを止めた。
「さあ……! どうする、お前らッ!?」
ここでダメ押しとばかりに、晴奈は凄んで見せた。
ところが――。
「ならば吾輩が相手だ、セイナ・コウ!」
敵兵たちの後ろから、槍を抱えたヒゲ面の短耳が姿を表した。
「貴様は……、見覚えがあるな」
「忘れたとは言わせんぞ、猫侍。そして背後の紅白女もだ」
紅白女、と呼ばれて小鈴が相手を指差す。
「晴奈、アイツよアイツ。グリーンプールで叩きのめしたヤツ」
「ああ。……何と言ったかな」
「さあ? わめいてた以外に印象薄いし」
「ハインツ、だ! ハインツ・シュトルム! ちなみに昇進して大尉になったぞ!」
名前を忘れられたハインツは、顔を真っ赤にして怒る。
「あの時は不覚を取ったが、今度はそうは行かんぞ! 今度は容赦せん、3対1の布陣でねじ伏せてやるぞ!」
「1?」
小鈴が口をとがらせたが、反論する間も与えられず、ハインツの背後にいた2人が前に進んだ。
「アンタが『縛返し』とか『央南の猫侍』とか言われてる、コウっておねーさん?」
「む……?」
「んー……、聞いた以上に、んー……、強そう」
ハインツの横に並び立ったのは、大剣を持った銀髪の狼獣人と、口元をストールで覆い隠した茶髪の短耳だった。
「シュトルム大尉が自己紹介したし、俺たちもさせてもらうぜ。俺はデニス・キャンバー。央北じゃちょこっと有名だ」
「んー……、ミール・ノヴァ。んー……、相棒、んー……、デニスの」
二人の自己紹介が終わったところで、再びハインツが胸を張って語る。
「今回、このトモエ作戦を円滑に遂行するため、お前やグラッド元大尉に対抗しうる人材を募ったのだ。
前回のようには行かんぞ、コウ!」
「……アンタらねー」
散々無視された小鈴が、苦虫を噛み潰したような顔で口を開いた。
「あたしが見えないのかっての、ったく。このコスズ・タチバナさまを無視するなんて、いー度胸してんじゃないの。
んで晴奈、あの二人確かに有名人よ。『銀旋風』つって、央北と南海を行き来する、賞金稼ぎコンビ。今までに極悪人とか海賊とかを倒して得た賞金額は、130万クラムとか140万クラムとか」
小鈴の説明に、デニスが付け加えた。
「157万クラムだ。で、コウを倒せば、それが倍になる」
「と言うことは、私の首には150万の値が付いているわけか」
これを聞いた晴奈は、鼻をフンと鳴らした。
「安い。私の首は、もっと価値がある」
「んー……、自信家」
「だなぁ。ま、高いか安いか……」
デニスは剣を構え、晴奈に斬りかかった。
「一戦交えて、試してみるかっ」
晴奈がデニスの初太刀をかわしたところで、ハインツがナイフを投げてきた。
「お、っと」
晴奈はこれもかわし、「火射」をハインツに向けて放つ。
「おうっ!?」
燃える剣閃が伸び、ハインツはうろたえる。
と、彼の前面に薄い魔術の盾が張られ、それを防ぐ。敵の魔術師、ミールが前もって防御術を仕掛けていたのだ。
「んー……、『マジックシールド』」
「……こしゃくな」
舌打ちした晴奈に、デニスが襲い掛かる。
「オラ、ぼーっとしてんなよ!」
「しているように見えるか?」
が、晴奈はデニスの方を振り向きもせず、それをかわす。
「あ、れっ?」
「お主の腕前は分かった」
晴奈はひょいと一歩退き、刀を納めた。
「え? 何で刀、しまう……?」
きょとんとしたミールに対し、デニスはごくりと唾を飲んだ。
「……居合い抜きってヤツだな。喰らった覚えがある」
「ほう、知っているか」
「いいねぇ、サムライ。あこがれるぜ、ホント!」
デニスも剣を構え直し、晴奈と対峙した。
「何て言うんだっけ、こう言う時って」
「『いざ、尋常に……』か?」「あ、そうそう、そんなだったな」
両者はにらみ合い、同時に叫んだ。
「いざ、尋常に勝負ッ!」
叫びきり、駆け出し、両者は衝突した。
「……ッ」「……ぅ」
晴奈が肩を押さえ、小さくうめく。
「晴奈!?」
「……心配無用」
晴奈は二の腕を押さえたまま、立ち上がる。
「……やっぱ、サムライ、すげえ」
倒れたのは、デニスの方だった。
「あ、あ……、デニス……」
相棒を倒されたミールは青ざめ、その場に立ち尽くす。
「……さあどうする?」
晴奈は左腕から手を離し、ハインツに向かって刀を構える。
「やるしかなかろう。……容赦せん!」
「してもらっては困る」
晴奈はニヤリと笑い、飛び掛った。
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賞金稼ぎと人間武器庫。
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晴奈たちが気付くと同時に、敵兵たちはこちらに向かって駆け出してきた。
「来るぞ! 迎え撃てッ!」
晴奈の号令に従い、剣士隊も走り出す。互いの分隊が衝突し、場は瞬く間に騒がしくなった。
「行くぞ、小鈴!」
「ええ!」
指揮していた晴奈たちも、その喧騒の中へと飛び込んでいった。
「りゃあッ!」「ぐあッ!?」
30人以上の敵兵たちに、晴奈は小鈴の助けを借りて立ち向かう。晴奈の率いる兵士たちも果敢に攻め込み、倍以上いる敵を押し返していく。
「だ、ダメだ!」「進めない!」
数の上で有利なはずの敵兵の士気が、みるみる下がっていく。それを感じ取った晴奈は、一気に追い払おうと大技を見せ付けた。
「これ以上寄れば命は無いぞ、雑兵どもッ! この炎の餌食になりたいかッ!?」
晴奈の剣術、「火閃」で空気が燃え上がり、けたたましい音を立てて爆ぜる。
「う……」「ひ、いっ」
同盟軍の猛攻と晴奈の威嚇で、敵のほとんどは後退し、攻めを止めた。
「さあ……! どうする、お前らッ!?」
ここでダメ押しとばかりに、晴奈は凄んで見せた。
ところが――。
「ならば吾輩が相手だ、セイナ・コウ!」
敵兵たちの後ろから、槍を抱えたヒゲ面の短耳が姿を表した。
「貴様は……、見覚えがあるな」
「忘れたとは言わせんぞ、猫侍。そして背後の紅白女もだ」
紅白女、と呼ばれて小鈴が相手を指差す。
「晴奈、アイツよアイツ。グリーンプールで叩きのめしたヤツ」
「ああ。……何と言ったかな」
「さあ? わめいてた以外に印象薄いし」
「ハインツ、だ! ハインツ・シュトルム! ちなみに昇進して大尉になったぞ!」
名前を忘れられたハインツは、顔を真っ赤にして怒る。
「あの時は不覚を取ったが、今度はそうは行かんぞ! 今度は容赦せん、3対1の布陣でねじ伏せてやるぞ!」
「1?」
小鈴が口をとがらせたが、反論する間も与えられず、ハインツの背後にいた2人が前に進んだ。
「アンタが『縛返し』とか『央南の猫侍』とか言われてる、コウっておねーさん?」
「む……?」
「んー……、聞いた以上に、んー……、強そう」
ハインツの横に並び立ったのは、大剣を持った銀髪の狼獣人と、口元をストールで覆い隠した茶髪の短耳だった。
「シュトルム大尉が自己紹介したし、俺たちもさせてもらうぜ。俺はデニス・キャンバー。央北じゃちょこっと有名だ」
「んー……、ミール・ノヴァ。んー……、相棒、んー……、デニスの」
二人の自己紹介が終わったところで、再びハインツが胸を張って語る。
「今回、このトモエ作戦を円滑に遂行するため、お前やグラッド元大尉に対抗しうる人材を募ったのだ。
前回のようには行かんぞ、コウ!」
「……アンタらねー」
散々無視された小鈴が、苦虫を噛み潰したような顔で口を開いた。
「あたしが見えないのかっての、ったく。このコスズ・タチバナさまを無視するなんて、いー度胸してんじゃないの。
んで晴奈、あの二人確かに有名人よ。『銀旋風』つって、央北と南海を行き来する、賞金稼ぎコンビ。今までに極悪人とか海賊とかを倒して得た賞金額は、130万クラムとか140万クラムとか」
小鈴の説明に、デニスが付け加えた。
「157万クラムだ。で、コウを倒せば、それが倍になる」
「と言うことは、私の首には150万の値が付いているわけか」
これを聞いた晴奈は、鼻をフンと鳴らした。
「安い。私の首は、もっと価値がある」
「んー……、自信家」
「だなぁ。ま、高いか安いか……」
デニスは剣を構え、晴奈に斬りかかった。
「一戦交えて、試してみるかっ」
晴奈がデニスの初太刀をかわしたところで、ハインツがナイフを投げてきた。
「お、っと」
晴奈はこれもかわし、「火射」をハインツに向けて放つ。
「おうっ!?」
燃える剣閃が伸び、ハインツはうろたえる。
と、彼の前面に薄い魔術の盾が張られ、それを防ぐ。敵の魔術師、ミールが前もって防御術を仕掛けていたのだ。
「んー……、『マジックシールド』」
「……こしゃくな」
舌打ちした晴奈に、デニスが襲い掛かる。
「オラ、ぼーっとしてんなよ!」
「しているように見えるか?」
が、晴奈はデニスの方を振り向きもせず、それをかわす。
「あ、れっ?」
「お主の腕前は分かった」
晴奈はひょいと一歩退き、刀を納めた。
「え? 何で刀、しまう……?」
きょとんとしたミールに対し、デニスはごくりと唾を飲んだ。
「……居合い抜きってヤツだな。喰らった覚えがある」
「ほう、知っているか」
「いいねぇ、サムライ。あこがれるぜ、ホント!」
デニスも剣を構え直し、晴奈と対峙した。
「何て言うんだっけ、こう言う時って」
「『いざ、尋常に……』か?」「あ、そうそう、そんなだったな」
両者はにらみ合い、同時に叫んだ。
「いざ、尋常に勝負ッ!」
叫びきり、駆け出し、両者は衝突した。
「……ッ」「……ぅ」
晴奈が肩を押さえ、小さくうめく。
「晴奈!?」
「……心配無用」
晴奈は二の腕を押さえたまま、立ち上がる。
「……やっぱ、サムライ、すげえ」
倒れたのは、デニスの方だった。
「あ、あ……、デニス……」
相棒を倒されたミールは青ざめ、その場に立ち尽くす。
「……さあどうする?」
晴奈は左腕から手を離し、ハインツに向かって刀を構える。
「やるしかなかろう。……容赦せん!」
「してもらっては困る」
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心身共に、この今が最も戦える状態にあります。