「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第9部
蒼天剣・氷景録 5
晴奈の話、第556話。
男ヤンデレ。
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5.
一方、こちらはミラたちが詰める海港南端。
「やっぱりぃ、寒くなってきましたねぇ」
「そう、だな」
ミラはバリーにくっつき、暖を取っている。
「その、ミラ」
「何でしょぅ?」
「離れて、ほしい」
「そんなコト言わないでくださいよぅ。寒いんですからぁ」
「……はぁ」
バリーは辟易した顔を浮かべながらも、ミラにされるがままになっていた。
と、バリーの丸い熊耳がぴく、と動く。
「……ミラ」
「はい?」
「何か、来る」
「へ?」
言われて、ミラもそれに気付く。
「……強いですけどぉ、でも、にごったような魔力ですねぇ」
ミラはバリーから離れ、その気配を探る。
「まっすぐ歩いてきてるみたいですねぇ。……バリー、頼みましたよぉ」
「ああ」
バリーはグラブをはめた拳を握りしめ、立ち上がった。
と、その巨体がぐら、と揺れる。
「……バリー?」
「ミラ、……癒しの、術を」
バリーは右脇腹を押さえ、うめく。
「撃たれた」
「え、えぇ!?」
ミラが青ざめると同時に、周囲の兵士たちが次々に腕や足、腹を押さえて倒れていく。
「早く」
「は、はいっ」
ミラの術で傷をふさいだバリーは、脂汗を浮かべながらも駆け出す。
「援護を!」
「は、はいっ! 『フィジカルブースト』! 『ロックガード』!」
ミラの術がバリーの身体能力を引き上げ、身に付けている防具の強度を高める。
「突っ込む!」
「分かりましたぁ!」
バリーとミラは、弾丸の飛んできた方へと走っていった。
「突っ込んできた……、か」
離れた場所から膝立ちで狙撃していたルドルフは、淡々と構えていた。
「くそ、風が出てきたな……。弾が逸れる、逸れる。
もう少し近付いてあの二人を仕留めてから、残りを一掃するぞ」
「分かりました……」
「うむ」
ルドルフの背後にいた、首輪を付けられた赤毛の短耳と、体中に鎖を巻いたエルフは小さくうなずき、ルドルフに続いた。
やがてミラたちの視界にも、敵の姿が捉えられた。
「……ブリッツェン准尉さんですねぇ」
「やっぱり、撃ってきたのは、ルドルフか」
「でも風が強くなってきましたしぃ、銃弾は多分撃てないでしょうからぁ、あの人の後ろにいる人たちが来るんでしょうねぇ。
……バリー、止まって!」
ミラは敵の攻撃を察知し、バリーを呼び止める。
素直に従ったバリーのすぐ目の前の氷が、ガリッと言う音を立てて削られた。
「……!」
「風の術ですぅ」
「……かわされたみたいですね」
互いの声が聞こえる程度にまで近付いたところで、相手の短耳が、うつろな目で話しかけてきた。
「あの、少し尋ねても?」
「……何でしょぅ?」
「あなた 方の軍に今、コウと言う央南人の剣士がいると聞きました。こちらにいらっしゃいますか?」
「いいえぇ、セイナさんはぁ、北端の方ですぅ」
「……あの『狐』め。つまらない方に僕を連れてきたな」
ミラの返答に、短耳はうつむいてブツブツとつぶやき始めた。
「セイナさんに会えるって言うからついてきたのに何だよ期待はずれじゃないか折角牢屋から出たって言うのに骨折り損だくそくそくそくそ……」
「あ、あのぅ?」
「何だようざいな話しかけるなようっとうしいよ邪魔だよ邪魔だ邪魔だ邪魔邪魔邪魔……」
短耳はうつむいたまま、手をかざして魔術を放ってきた。
「『ハルバードウイング』」
「……!」
飛んできた風の槍を、ミラは防御術で防ごうとした。
「『マジックシールド』ぉ!」
だが、予想以上に強い魔力が込められており、ミラの防御はやすやすと貫かれた。
「ひっ」「危ない!」
飛んできた槍を、バリーが全身で受ける。
「う、ぐ」
風の槍はバリーの右腕を、ざくりとえぐった。
「バリー!」
「邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔」
依然、短耳は魔術を放ち続ける。
「……あの人、危ない人ですよぅ」
「ああ。……ちょっと離れる」
バリーはそう言って、短耳に突っ込んでいく。
「邪魔邪魔邪魔じゃ……」「うるさい!」「あぐっ……」
短耳は突っ込んできたバリーに、まったく目を向けない。と言うよりも、虚ろに槍をばら撒いていただけらしく、相手はあっさりと、バリーの右ストレートで吹き飛ばされた。
「……マヌケか、あいつ。やっぱ使えねーな、いくらすごい魔術師っつっても頭おかしくなったヤツじゃ」
ルドルフは呆れ、もう一人に声をかけた。
「アンタが頼りだ、『スティングレイ』の御大」
「……」
スティングレイと呼ばれたエルフは無言で、コクリとうなずいた。
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5.
一方、こちらはミラたちが詰める海港南端。
「やっぱりぃ、寒くなってきましたねぇ」
「そう、だな」
ミラはバリーにくっつき、暖を取っている。
「その、ミラ」
「何でしょぅ?」
「離れて、ほしい」
「そんなコト言わないでくださいよぅ。寒いんですからぁ」
「……はぁ」
バリーは辟易した顔を浮かべながらも、ミラにされるがままになっていた。
と、バリーの丸い熊耳がぴく、と動く。
「……ミラ」
「はい?」
「何か、来る」
「へ?」
言われて、ミラもそれに気付く。
「……強いですけどぉ、でも、にごったような魔力ですねぇ」
ミラはバリーから離れ、その気配を探る。
「まっすぐ歩いてきてるみたいですねぇ。……バリー、頼みましたよぉ」
「ああ」
バリーはグラブをはめた拳を握りしめ、立ち上がった。
と、その巨体がぐら、と揺れる。
「……バリー?」
「ミラ、……癒しの、術を」
バリーは右脇腹を押さえ、うめく。
「撃たれた」
「え、えぇ!?」
ミラが青ざめると同時に、周囲の兵士たちが次々に腕や足、腹を押さえて倒れていく。
「早く」
「は、はいっ」
ミラの術で傷をふさいだバリーは、脂汗を浮かべながらも駆け出す。
「援護を!」
「は、はいっ! 『フィジカルブースト』! 『ロックガード』!」
ミラの術がバリーの身体能力を引き上げ、身に付けている防具の強度を高める。
「突っ込む!」
「分かりましたぁ!」
バリーとミラは、弾丸の飛んできた方へと走っていった。
「突っ込んできた……、か」
離れた場所から膝立ちで狙撃していたルドルフは、淡々と構えていた。
「くそ、風が出てきたな……。弾が逸れる、逸れる。
もう少し近付いてあの二人を仕留めてから、残りを一掃するぞ」
「分かりました……」
「うむ」
ルドルフの背後にいた、首輪を付けられた赤毛の短耳と、体中に鎖を巻いたエルフは小さくうなずき、ルドルフに続いた。
やがてミラたちの視界にも、敵の姿が捉えられた。
「……ブリッツェン准尉さんですねぇ」
「やっぱり、撃ってきたのは、ルドルフか」
「でも風が強くなってきましたしぃ、銃弾は多分撃てないでしょうからぁ、あの人の後ろにいる人たちが来るんでしょうねぇ。
……バリー、止まって!」
ミラは敵の攻撃を察知し、バリーを呼び止める。
素直に従ったバリーのすぐ目の前の氷が、ガリッと言う音を立てて削られた。
「……!」
「風の術ですぅ」
「……かわされたみたいですね」
互いの声が聞こえる程度にまで近付いたところで、相手の短耳が、うつろな目で話しかけてきた。
「あの、少し尋ねても?」
「……何でしょぅ?」
「あなた 方の軍に今、コウと言う央南人の剣士がいると聞きました。こちらにいらっしゃいますか?」
「いいえぇ、セイナさんはぁ、北端の方ですぅ」
「……あの『狐』め。つまらない方に僕を連れてきたな」
ミラの返答に、短耳はうつむいてブツブツとつぶやき始めた。
「セイナさんに会えるって言うからついてきたのに何だよ期待はずれじゃないか折角牢屋から出たって言うのに骨折り損だくそくそくそくそ……」
「あ、あのぅ?」
「何だようざいな話しかけるなようっとうしいよ邪魔だよ邪魔だ邪魔だ邪魔邪魔邪魔……」
短耳はうつむいたまま、手をかざして魔術を放ってきた。
「『ハルバードウイング』」
「……!」
飛んできた風の槍を、ミラは防御術で防ごうとした。
「『マジックシールド』ぉ!」
だが、予想以上に強い魔力が込められており、ミラの防御はやすやすと貫かれた。
「ひっ」「危ない!」
飛んできた槍を、バリーが全身で受ける。
「う、ぐ」
風の槍はバリーの右腕を、ざくりとえぐった。
「バリー!」
「邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔」
依然、短耳は魔術を放ち続ける。
「……あの人、危ない人ですよぅ」
「ああ。……ちょっと離れる」
バリーはそう言って、短耳に突っ込んでいく。
「邪魔邪魔邪魔じゃ……」「うるさい!」「あぐっ……」
短耳は突っ込んできたバリーに、まったく目を向けない。と言うよりも、虚ろに槍をばら撒いていただけらしく、相手はあっさりと、バリーの右ストレートで吹き飛ばされた。
「……マヌケか、あいつ。やっぱ使えねーな、いくらすごい魔術師っつっても頭おかしくなったヤツじゃ」
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スティングレイと呼ばれたエルフは無言で、コクリとうなずいた。



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なかなか思い通りにはいかないもので。
会いたい人に会えないことはありますよね。
特にこんな状況だと。
( 一一)
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特にこんな状況だと。
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いくら物語であっても。