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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第9部

    蒼天剣・獄下録 6

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    晴奈の話、第575話。
    暴走轟風恋愛兎魔術師。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    6.
     地下水脈を抜けた晴奈たち一行は、ひどく蒸し暑い場所に入っていた。
    「何だ、この暑さは……? 蒸気がどこかから、漏れ出ているのか?」
    「それだけじゃない。この煮えたぎる硫黄の臭い……、マグマだよ」
    「まぐま?」
    「超高熱の溶岩流のことさ。どうやら砦の下には、かなり地表に近いところにマグマ溜まりがあったらしい。……よくこんな場所に建てられたなぁ」
     エルスの言葉に、どこからか同意する声が返ってきた。
    「ホントよねぇ。道理で地震が多いと思ったわ」
    「……ドール」
     エルスの前に、ドールがちょこんと立ちはだかった。
    「久しぶり、リロイ。……元気そーね」
    「うん。君も変わらない」
    「変わったわ、色々。アタシじゃなく、アンタの方が。
     ちょっと痩せたし、服のセンスも違ってる。央南で出世したって聞いたし」
     ドールは一旦言葉を切り、チラ、と小鈴を見てこう続けた。
    「何より、ずっと笑うようになった」
     ドールの言葉に、エルス以外の全員が首をかしげた。
    「ずっと、笑うように……?」
    「いつも笑ってんじゃない」
     小鈴が口を挟んだ途端、エルスが困ったように笑った。
    「まあ、そうなんだけど。……彼女は、こうなる前の僕を知っているんだ。その……、昔」「昔、付き合ってたからね」
    「え……」
     それを聞いて、小鈴はエルスとドールを交互に見比べる。
    「心配しないで、コスズ。もうとっくの昔に、別れた」
    「そうね。……感情を表さなくなったアンタは、とっくに恋愛対象から外れてるわ。アタシは、感情的な子が大好きだもの」
     ドールは杖を構え、戦闘体勢を取る。
    「今この先に、ヒノカミ君が――今一番、アタシが大好きな子がいる。アンタはどうあれ、ヒノカミ君を倒そうとしている。それを止めもせず通すアタシじゃない。
     かかってきなさいよ、リロイ! ここは誰も、通させやしないわ!」
     ドールはそう言うなり、風の術を唱える。
     煮えたぎる洞窟内の空気が、轟々とうなり始めた。

    「……すっご。あんなちっちゃい体が、2倍、3倍になって見えるわ」
     息を呑む小鈴に、エルスは小さくうなずいた。
    「ああ。ドールは王国随一の、風の魔術師だった。僕が教わった風の術も、彼女からレクチャーを受けたものだ。単純な魔力勝負じゃ、ここで相手になるのはミラくらいしかいない」
    「え、えぇ? アタシでも無理ですよぅ……。アタシ一度もぉ、訓練でホーランド大尉さんに勝ったコトないんですからぁ」
     そうこうするうちに、ドールが攻撃してくる。
    「仲間内でくっちゃべってるヒマなんて、あると思うの!? 『ツイスター』!」
     洞窟内に、二条の竜巻が発生する。
    「まずい! コスズ、ミラ、防御!」
    「あ、はぁい!」「『ロックガード』!」
     小鈴たちが魔術を唱え、土の壁を築く。直後、発生した二つの竜巻は土の壁にぶつかり、ガリガリと削っていく。
    「……しかし、ミラが勝てなかったって言うのはきついなぁ」
    「そーね。基本、風の術は土の術に対して不利だって言うのに……」
     竜巻は土の壁を削りきったところで消滅する。
    「二人がかりの防御が、こんなあっさり消し飛ぶって」
    「相当の苦戦を強いられるな、これは……」
     また、ドールが風の術を放つ。
    「まだまだこれからよ! 五連『ハルバードウイング』!」
     五本の風の槍が、エルスたちに向かって伸びる。
    「もっかい防御!」「はいっ!」
     小鈴とミラ、二人がかりの土の術で防御に回るが、あっさり相殺される。
    「うーん、どうしようかな」
     小鈴たちが防いでくれている間に、エルスは思案する。
    (セイナ、……は相性が悪い。火の魔術剣と風の術だし。コスズとミラは、防御で精一杯だ。残るは僕とバリー、か。
     じゃ、挟むか)
    「バリー、ちょっと」
     エルスはバリーに耳打ちし、作戦を伝える。
    「はい、……はい、ええ」
    「頼んだ」
     伝え終わると同時に、エルスとバリーはドールに向かって走り出した。
    「来させないッ!」
     ドールはさらに、多くの槍を飛ばす。
    「うお、ッ……」
     飛んでいった槍は、エルスたち二人に向かって飛んで行く。だが、命中したのは一発。それも、バリーにだけだった。
    「……えっ!?」
     エルスの姿が、どこにも無い。
    「ど、ドコ!?」
     ドールは慌てて、風の術で防御する。
    「『サイクロンアーマー』!」
     分厚い空気の壁が、ドールを保護する。
    「……ちょっと、タイミングが遅かったか」
     ドールのすぐ背後に、エルスが立っていた。
    「でも、まあ。これはこれで」
    「どう言う意味……」
     ドールがエルスの方を振り向くとほぼ同時に、小鈴が術を発動する。
    「『ホールドピラー』!」「……ッ!」
     小鈴が発動させた術が、ドールの足元に石の柱を造る。途端に風の壁は、ゴロゴロと鈍い音を発し始めた。
    「く……」
     風の壁は柱と言う障害物にさえぎられ、四散する。
    「魔術師は基本、後方支援が主だからね。こうやって挟み撃ちされることには慣れてない。……前にも、気を付けてねって言ったじゃないか」
     エルスは優しくそう言って、するっとドールの背後に回り、首に腕を回した。
    「きゅ、っ」
    「ゆっくり眠っていて。君はあんまり、傷つけたくない」
     喉を絞められたドールは、一瞬のうちに気絶した。
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