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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第9部

    蒼天剣・獄下録 7

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    晴奈の話、第576話。
    悪魔の所業。

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    7.
    「……」
     一人残されたハインツは、右手に握った短剣をじっと見ていた。
    「……」
     やがてすっと、右手を挙げる。
    「……御免!」
     ハインツは意を決し、短剣を己の胸に突き立てようとした。
     が――。
    「やめなさいよ、くだらない」
     短剣が真っ二つに折れる。
    「……な、何っ?」
    「アンタ、いつもいつも騎士道物語にあこがれ過ぎなのよ。たまにはヒロイックな考えから離れて、素面で生きてみなさいよ」
    「……お、お前は」
     目を丸くするハインツの横を、巴景と明奈が通り過ぎていった。

    「……なあ、リスト」
    「何よ」
     ぷいとそっぽを向くリストに、横になったままのルドルフは苦笑する。ちなみにリストが介抱し、銃創の手当てはされている。
    「そう邪険にすんなって。……お前、央南の職捨てて、こっちに来たんだってな」
    「そうよ」
    「多分、ヒノカミの御大は今日死ぬ。……そしたら、戦争も終わりだ」
    「そうね」
    「お前、この後どうすんだ?」
    「……さあ? とりあえず、友達のトコで働かせてもらおうかなって思ってるけど」
    「そっか。……俺、どうすっかなぁ」
    「勝手にすればいいじゃない」
     ツンツンとした態度のリストに、ルドルフは口をとがらせた。
    「もうちょい構ってくれよ、リスト。同じ銃士だろ?」
    「フン」
     と、カツカツと歩く音が聞こえてくる。
    「ん……?」「誰……?」
     リストとルドルフは同時に、音のする方に顔を向ける。
    「あら、ルドルフじゃない」
    「あ、無事だったんですね、リストさん!」
    「……とっ、トモちゃん!?」
    「メイナ!? 何でここに!?」
     リストに駆け寄ろうとする明奈の手を、巴景が引っ張った。
    「いたっ」
    「構ってる暇なんか無いわ。後にして」
    「……はい」
     巴景たちはそのまま、奥へと進んで行った。
    「何でここに……?」「さあ……?」
     リストとルドルフは顔を見合わせ、同時に首をかしげた。

    「……はっ」
     エルスに首を絞められ、気絶させられていたドールが目を覚ました。
    「負けちゃった、か。……オマケにこんな、気遣いまで」
     ドールの体には、エルスが着ていた上着がかけられていた。
    「あーぁ。……やっぱり今でも、ソコはいいオトコなのね」
     ドールは上着を抱きしめ、うなだれる。
    「久しぶりね、ドール」
    「ひゃっ!?」
     突然声をかけられ、ドールは慌てて顔を挙げた。
    「……あ、あら。トモエじゃない」
    「ふふっ。……ねえ見て、ドール」
     そう言って、巴景は仮面を取る。
    「……お化粧したのね。キレイじゃない」
    「ありがと。あなたにそう言ってもらえて、嬉しいわ」
     そう言って巴景はドールの前に屈み込み、口付けした。
    「むぐ……っ!?」
    「……じゃあ、ね」
     巴景はすっと立ち上がり、再び仮面をかぶる。
    「巴景さん、ずるいですよ。わたしには暇なんか無い、と言ったのに」
    「ゴメンね。あれだけはやっておきたかったの」
     そのまま、二人は奥へと進んで行った。
    「……あ、アハハ。ビックリしたぁ」
     残されたドールは顔を真っ赤にし、唇を押さえた。



     洞窟の最下層。
     地面のあちこちに穴が空いており、そこからは赤く輝くマグマが、ずっと底の方に覗いている。
    「もうそろそろ、来る頃か」
     アランのつぶやきに、座り込んでいたフーが立ち上がる。
    「アラン。そろそろ聞かせてくれ。これは一体、何なんだ?」
     フーは足元一面に彫られた、複雑な幾何学模様を指差す。
    「魔法陣だ。お前に見せたものと同じ、モンスターを造るものだ」
    「これを一体、誰に使うんだ? まさか、俺か?」
    「馬鹿な。お前がモンスターになれば、誰が王になる?」
    「じゃあ、誰に使うんだ? これから来るかも知れない、王国軍にか?」
     フーの問いに、アランは首を振る。
    「いいや。我々の頭上にあるものを、そっくりモンスターにするのだ」
    「頭上? ……まさか!?」
    「そう。ウインドフォート砦だ」
     アランの回答に、フーは立ち上がって叫ぶ。
    「何を馬鹿なことを! こんなでかいものを、そのままそっくりモンスターにするって言うのか!?」
    「ああ。ほとんど街の一区画に相当する、巨大なモンスターが誕生する。
     だが残念なことに、このままではモンスターに変化したとしても、活動するための『知能』がまるで足りない。恐らく蒙昧に動き回り、海に沈んでいくだけだ」
    「知能……?」
    「そこで優秀な頭脳自ら、こちらに赴いてもらうのだ。それを組み込むことで、最強最悪のモンスターは完成する」
    「優秀な? ……!」
     そこでフーに、一人の人物が思い当たった。
    「エルスさん……、を?」
    「そうだ。奴ならばこの洞窟への道を見つけ、なおかつ自ら乗り込んでくる。お前との因縁のためにな」
    「それ、で……、俺を選んだのか。いずれ、こうするために……っ」
    「あくまで戦術の一手に過ぎない。お前の側に、利用できる人間がいた。それだけの話だ」
    「……ふざけんな……」
     フーは剣を抜き、アランに向かって構えようとした。
    「そんなこと、俺がさせると思うのかよ」
    「私を倒す気か? やめておけ。お前では敵わない」
    「何だと?」
    「それに、だ。お前も分かっているはずだろう、私が死なぬことを。
     例え今、お前が私を倒したとしても、いずれは復活し、同じことをする。同じような仕掛けは、このウインドフォートだけではなく、他の場所にも造っている。
     果てなくいたちごっこを続けたいと言うのなら、やっても構わないが」
    「……くそっ!」
     フーは地面に膝を着き、悔しがった。
    「てめえ……、てめえ、てめえ! 何で俺を、こんなに苦しめるッ!
     何でこんな、悪魔のようなことばかりするんだ……ッ!」
    「……」
     アランはそれ以上何も言わず、じっとマグマを眺めていた。
     と――洞窟の上方から、足音が聞こえてきた。

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    2016.12.18 修正
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