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    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第9部

    蒼天剣・獄下録 8

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    晴奈の話、第577話。
    英雄たちの対決。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    8.
     晴奈たちの眼下に、フーとアラン、そして巨大な魔法陣が見えてきた。
    「いたぞ……!」
     敵の姿を見つけ、一行は道を駆け下りる。
    「アラン・グレイ! 日上風! 覚悟しろッ!」
     座り込んでいたフーは、ゆらりと立ち上がる。
    「エルスさ……」
     何かを言いかけ、フーは途中で口を閉ざす。
    「……エルス・グラッド! 俺が、相手だ!」
    「フー」
     剣を構えたフーに、エルスは穏やかに声をかけた。
    「久しぶりだね」
    「だまれッ!」
    「何年ぶりだっけ。6年ぶり、かな? 随分、大きくなった」
    「子ども扱いするんじゃねえ!」
    「君はよくやった。誰も成しえない、できそうにも無いことを、次々やってのけた。本当に、英雄だよ」
    「……何が言いたいんだ」
     噛み合わない会話を、エルスはようやくやめた。
    「フー。今ならまだ、何とかしようがある。
     勿論、王国を裏切った罪は償わなきゃならないけど、それでも今は、一国の主だ。僕とトマス、それに央中と央南のバックアップがあれば、君の処分はいくらでも軽くできる。
     投降してくれないか?」
     エルスの言葉を受け、フーは目をそらす。
    「……俺だって……そうできたら……どんなにいいか……」
    「だったら……」
    「……でも、無理だ! 俺にはもう、退く道はないんだッ!」
     そう叫び、フーはエルスに襲い掛かった。
    「エルス!」
     助太刀しようとする晴奈たちの前に、アランが立ちはだかる。
    「お前たちは不要だ。ここで死ね」

     迫ってきたフーを、エルスは軽くいなす。振り下ろした剣を紙一重で避け、フーの後頭部をつかんでそのまま押し込んだ。
    「……ぐあッ!」
     勢いの付いたフーはどうにも動けず、そのまま地面につんのめる。
    「くそっ、このおぉ!」
     フーはくるりと立ち上がり、再び斬りかかる。ブン、ブンと音を立ててうなる剣を、エルスはひらひらとかわしていく。
    「はえ、え……!」
    「フー。君は勝てない」
     エルスは穏やかな笑顔のまま、避け続ける。
    「ふざけたこと……」
     フーは一歩退き、反動をつけて飛び上がった。
    「言ってんじゃねえええッ!」
     勢いよく振り下ろされた剣を、またエルスは避けようとした。
    「……っ」
     だが、エルスの額からぱたた……、と血がこぼれる。
    「……はは、危ない」
     エルスはポケットからバンダナを取り出して止血しつつ、後ろに下がった。
    「……退けよ」
     フーが剣を構え直し、声をかける。
    「退いてくれよ、もう……! この勝負、付けたくないんだよ」
    「僕だってそうさ。君を殺したくない」
    「だったら……!」
    「だけどこの後、どうなる? 君はこのまま、帰れると思うかい? 残ったのは君一人だ。こんな奥底に来て、そのまま戻れるはずがないだろう?」
    「……くっ」
    「僕に投降するしか、道は無い。それともここで何かして、突破するつもりだったのか?」
    「そう、……その、つもりだった。でも」
     口ごもるフーを見て、エルスは畳み掛ける。
    「何をするつもりだったの?」
    「……アンタが、ここに来ること。それこそが、アイツの……、アランの狙いだったんだ」
    「何だって? 僕が、狙い?」
     思いも寄らない話に、エルスはぎょっとした。

     襲い掛かるアランに、まずバリーが立ち向かう。
    「ふぬッ!」
     アランの顔面に、重たい拳がめり込――まない。
    「……う、ぐっ」
     バリーが顔をゆがめ、拳を引く。それを見たミラが、真っ青な顔で叫ぶ。
    「バリー!? 手が……!」
     バリーの拳から、ボタボタと血が垂れている。明らかに、拳の方が折れていた。
    「邪魔だ」「うぐぉ……っ」
     アランがバリーの胸倉をつかみ、右腕一本で投げ飛ばした。
    「この、っ……」
     続いて小鈴とミラが、同時に魔術をかける。
    「『ホールドピラー』!」「『グレイブファング』!」
     アランの四肢を石の柱がつかみ、さらに胸に向かって石の槍が飛んでいく。だが、石の槍はガリガリと削れた音を立てるばかりで、一向に突き刺さらない。
    「何で……っ!?」「う、うそでしょぉ……」
     小鈴たちが唖然としているうちに、アランが石の柱を破壊し、歩き出す。
    「それ以上動くな。うっとうしい」
    「ひ……」
     座り込む二人を尻目に、アランは晴奈に顔を向けた。
    「それで、残るは貴様か」
    「そうだ。ここで遭ったが百年目――今度こそ貴様を、討つ!」

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    2016.12.18 修正
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    終わりはいつか来るものです。
    いよいよクライマックス。

    NoTitle 

    いずれつけないといけない決着もある。
    そういうことを教えてくれる場面ですね。
    フーもエルスも、セイナも。
    成し遂げないといけないことがあるという信念が伝わってきます。
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