「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第9部
蒼天剣・獄下録 11
晴奈の話、第580話。
朱雀降臨。
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11.
「巴景……」
頭上を見上げた晴奈の目に、仮面の女剣士の姿が映った。
「久しぶりね、晴奈。随分強くなったみたいじゃない」
「遅かったな」
晴奈は巴景が現れたことに、驚いてはいなかった。何故だか、きっと来るだろうなと言う直感があったからだ。
「あら、まだまだこれから、ってところでしょう?
私もそいつには借りがあるのよ。私にも相手、させなさいよ」
そう言って巴景はひょいと飛び降り、晴奈の横に、すとんと静かに着地した。
「アラン、また会えたわね」
「ギ、ガッ……、トモエ・ホウドウ、カ。オ前モマタ、私ニ牙ヲ剥クツモリカ?」
「なに、そのキーキー声? まるで壊れたラッパね」
悪魔然としたアランを前に、巴景は居丈高に振舞う。
「ちゃっちゃと終わらせましょ。……『地断』!」
巴景は居合い抜きの形で「ファイナル・ビュート」を抜き払う。音速の刃がアランに向かって伸び、弾き飛ばす。
「グ、オ、ガガッ……」
「……あら?」
だが、アランは倒れない。1メートルほどは押されたものの、ダメージを受けたようには見えない。
「無駄ダ……! コンナ風、痛クモカユクモ無イ」
「……ふうん。相性の問題かしら。じゃ、折角の新技も効きそうに無いわね。どっちも風属性だし」
腕を組んでアランを眺めていた巴景は、チラ、と晴奈を見る。
「……癪だけど、まあ、いいわ。
晴奈、私に協力しなさい。あいつ、さっさと倒したいでしょ?」
「何?」
この提案に、晴奈は面食らった。
「するの? しないの? どっち?」
巴景は苛立たしげに、もう一度尋ねてくる。
「……分かった。一太刀だけだぞ」
「ええ、それで十分よ」
巴景はうなずき、右手を「人鬼」で炎に変えた。
「なっ……?」
「晴奈、『炎剣舞』を出しなさい。私がそれに技を加えて、威力を倍加させるわ」
赤く煌く巴景の右腕に面食らうが、晴奈は応じた。
「……よし。行くぞ、巴景!」
「いいわよ!」
晴奈はぐる、と回りながら、「蒼天」に火を灯す。ほぼ同時に、巴景は両腕を炎に換えて「ビュート」を握りしめた。
「ヌッ……!?」
アランが警戒し、両腕を交差させて防御姿勢を取る。だが二人は構わず、さらに強い魔力を自分たちの技に込める。
「はああああッ!」「今よ、晴奈ッ!」
晴奈の炎と、巴景の炎が渾然一体となる。
その瞬間、洞窟の中には大きく、真っ赤な塊が浮かび上がった。
それはまるで、一羽の怪鳥のようだった。
「『炎剣舞』ッ!」「『人鬼・天衝』!」
二人の手を離れ、朱雀の如く飛んでいった炎の塊は、アランの体を易々と貫いた。
「グ、……ガ、ガアア、アアアアッ!?」
貫かれたアランは甲冑のいたるところから粉のような火を噴き出させ、バン、とけたたましい音を立てて爆ぜた。
炎を収め、元の姿に戻った巴景が晴奈の横に立ち、つぶやいた。
「終わり、ね」
爆発によりひび割れた魔法陣のほぼ中央に、飛散したアランの体の「破片」と、まだ胸から上を辛うじて残す、アランがいた。
「え……?」
いつの間にか追いついていた明奈が、驚いた声をあげた。
「あの、破片」
「ええ。……歯車、バネ、後、なんか色々」
「機械の、……部品です、よねぇ?」
飛散したアランの破片は、どう見ても人工物の塊だった。
「人形、だったのか」
「やはり……、か。半人半人形どころではない、完全な人形」
「自律人形、って奴か」
一同は恐る恐る、アランの側へと近付く。
「ガ、ガガッ、ピッ」
アランの頭部は、なお音を立てている。
「……ガ、ガ、……愚カナ、者ドモメ。私ハ、何度殺サレヨウト、死ナヌ。イツカマタ、完全ナル、姿デ、復活スルノダ」
「……だから、カツミと相討ちになった後、平然と現れたのか」
正体を現した自分の側近を見下ろし、フーは歯軋りした。
「お前はまた……、現れる」
「ソウダ、……ガ、ガガ、……ドレダケ私ヲ殺ソウト、私ハオ前ノトコロニ戻ッテクル」
「そしてまた、多くの人間を犠牲にして俺を王にしようとするのか」
「ガ、ガピュ、……ピュルル」
半ば鉄クズとなったアランを前に、フーは黙り込んだ。
「……」
少し間を置いて、フーはエルスに向き直った。
「……エルスさん。こいつを二度と復活させない、いや、復活してもどうにもならなくする方法があります」
「えっ……?」
意を決した表情のフーを見て、聡明なエルスは彼が何を言おうとしているのかを察した。
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朱雀降臨。
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11.
「巴景……」
頭上を見上げた晴奈の目に、仮面の女剣士の姿が映った。
「久しぶりね、晴奈。随分強くなったみたいじゃない」
「遅かったな」
晴奈は巴景が現れたことに、驚いてはいなかった。何故だか、きっと来るだろうなと言う直感があったからだ。
「あら、まだまだこれから、ってところでしょう?
私もそいつには借りがあるのよ。私にも相手、させなさいよ」
そう言って巴景はひょいと飛び降り、晴奈の横に、すとんと静かに着地した。
「アラン、また会えたわね」
「ギ、ガッ……、トモエ・ホウドウ、カ。オ前モマタ、私ニ牙ヲ剥クツモリカ?」
「なに、そのキーキー声? まるで壊れたラッパね」
悪魔然としたアランを前に、巴景は居丈高に振舞う。
「ちゃっちゃと終わらせましょ。……『地断』!」
巴景は居合い抜きの形で「ファイナル・ビュート」を抜き払う。音速の刃がアランに向かって伸び、弾き飛ばす。
「グ、オ、ガガッ……」
「……あら?」
だが、アランは倒れない。1メートルほどは押されたものの、ダメージを受けたようには見えない。
「無駄ダ……! コンナ風、痛クモカユクモ無イ」
「……ふうん。相性の問題かしら。じゃ、折角の新技も効きそうに無いわね。どっちも風属性だし」
腕を組んでアランを眺めていた巴景は、チラ、と晴奈を見る。
「……癪だけど、まあ、いいわ。
晴奈、私に協力しなさい。あいつ、さっさと倒したいでしょ?」
「何?」
この提案に、晴奈は面食らった。
「するの? しないの? どっち?」
巴景は苛立たしげに、もう一度尋ねてくる。
「……分かった。一太刀だけだぞ」
「ええ、それで十分よ」
巴景はうなずき、右手を「人鬼」で炎に変えた。
「なっ……?」
「晴奈、『炎剣舞』を出しなさい。私がそれに技を加えて、威力を倍加させるわ」
赤く煌く巴景の右腕に面食らうが、晴奈は応じた。
「……よし。行くぞ、巴景!」
「いいわよ!」
晴奈はぐる、と回りながら、「蒼天」に火を灯す。ほぼ同時に、巴景は両腕を炎に換えて「ビュート」を握りしめた。
「ヌッ……!?」
アランが警戒し、両腕を交差させて防御姿勢を取る。だが二人は構わず、さらに強い魔力を自分たちの技に込める。
「はああああッ!」「今よ、晴奈ッ!」
晴奈の炎と、巴景の炎が渾然一体となる。
その瞬間、洞窟の中には大きく、真っ赤な塊が浮かび上がった。
それはまるで、一羽の怪鳥のようだった。
「『炎剣舞』ッ!」「『人鬼・天衝』!」
二人の手を離れ、朱雀の如く飛んでいった炎の塊は、アランの体を易々と貫いた。
「グ、……ガ、ガアア、アアアアッ!?」
貫かれたアランは甲冑のいたるところから粉のような火を噴き出させ、バン、とけたたましい音を立てて爆ぜた。
炎を収め、元の姿に戻った巴景が晴奈の横に立ち、つぶやいた。
「終わり、ね」
爆発によりひび割れた魔法陣のほぼ中央に、飛散したアランの体の「破片」と、まだ胸から上を辛うじて残す、アランがいた。
「え……?」
いつの間にか追いついていた明奈が、驚いた声をあげた。
「あの、破片」
「ええ。……歯車、バネ、後、なんか色々」
「機械の、……部品です、よねぇ?」
飛散したアランの破片は、どう見ても人工物の塊だった。
「人形、だったのか」
「やはり……、か。半人半人形どころではない、完全な人形」
「自律人形、って奴か」
一同は恐る恐る、アランの側へと近付く。
「ガ、ガガッ、ピッ」
アランの頭部は、なお音を立てている。
「……ガ、ガ、……愚カナ、者ドモメ。私ハ、何度殺サレヨウト、死ナヌ。イツカマタ、完全ナル、姿デ、復活スルノダ」
「……だから、カツミと相討ちになった後、平然と現れたのか」
正体を現した自分の側近を見下ろし、フーは歯軋りした。
「お前はまた……、現れる」
「ソウダ、……ガ、ガガ、……ドレダケ私ヲ殺ソウト、私ハオ前ノトコロニ戻ッテクル」
「そしてまた、多くの人間を犠牲にして俺を王にしようとするのか」
「ガ、ガピュ、……ピュルル」
半ば鉄クズとなったアランを前に、フーは黙り込んだ。
「……」
少し間を置いて、フーはエルスに向き直った。
「……エルスさん。こいつを二度と復活させない、いや、復活してもどうにもならなくする方法があります」
「えっ……?」
意を決した表情のフーを見て、聡明なエルスは彼が何を言おうとしているのかを察した。
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2016.12.18 修正
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今日の旅岡さん

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敵味方の共演は大好きですね。(*'ω'*)
それが好きで、今でも小説を書いている・・ところがあるのですが。
巴景とセイナ面白い組み合わせです。
それが好きで、今でも小説を書いている・・ところがあるのですが。
巴景とセイナ面白い組み合わせです。
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それが強大な力を持つライバル同士であれば尚更。