「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第9部
蒼天剣・回帰録 4
晴奈の話、第592話。
原点。
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4.
「へぇー……、ここがコウカイなんやー」
到着したシルキスとウィルはまた、目を丸くしていた。
「でけーなぁ」
「ホンマ、ウチらの街と同じくらいとちゃうん?」
「いや、そこまでは無いと思うけど、……まあ、活気はあるよ」
秋也ははにかみつつ、自分の家へと案内した。
「ここだ」
案内された黄屋敷を見て、ウィルたちは目を丸くした。
「ココ? マジで?」
「でっかぁ」
その反応に、秋也はまたはにかみつつ肩をすくめた。
「でっかいだけだよ。中はボロだ。さ、中入って、入って」
秋也に促され、ウィルたちは屋敷の玄関を通り抜けた。
「あら?」
と、中に入ってすぐの大広間に、深い緑色をした髪のエルフが立っているのに気が付いた。
「お客さん? わたしもだけど」
エルフはウィルたちを見て、軽く頭を下げて会釈した。
「え、ああ、はい」
「どもっス」
つられて、ウィルたちも頭を下げる。
「あ、……大先生!?」
一方、二人の後ろにいた秋也はエルフを見て、慌てて前に出た。
「ご、ご無沙汰しておりましたっ!」
深々と頭を下げた秋也を見て、エルフはクスクスと笑った。
「そんな、大げさな。もっと気楽にしていいのよ、……って」
そう言って、エルフはまた笑う。
「わたし何年、同じこと言ってるのかしら。お母さんの代からずーっと言ってるのに」
「す、すみません」
「なあなあシュウヤ、この人誰なん?」
と、空気を読まずにシルキスが尋ねてくる。ウィルはくいくいとシルキスの袖を引っ張り、自重させようとする。
「静かにしてろって、シルキス」
「なんで?」
「なんでって、雰囲気違うだろが」
「そーなん?」
「……クスっ」
二人のやり取りを見ていたエルフが、また笑った。
「自己紹介させてもらうわね。わたしは焔雪乃。秋也君の先生の、先生」
「そーなんやー」
その紹介に、シルキスはふんふんと鼻を鳴らすだけだったが、ウィルの方は思い当たったらしい。
「シュウヤの先生の先生ってコトは、……コウ先生の、先生?」
「そうなるわね」
にこりと笑った雪乃に、ウィルは驚いた声を挙げた。
「ってコトは、元祖『瞬殺の女神』さんですよね!? うわあぁ……、すっげー!」
「へ? ……えーっ!? 『瞬殺の女神』!? ウソ、ホンマに!?」
「あら。闘技場のこと、知ってるの?」
「ええ! オレたち、闘技場の歴史なら何でも知ってます! うっわー、感激だっ」
興奮するウィルたちを見て、秋也は顔を赤らめた。
「お、おい……。そんな、騒ぐなよ、みっともない……」
「わたしは嬉しいわよ、秋也君。わたしの活躍、知ってくれているんだもの」
にこやかな雪乃の態度に、ウィルたちはますます騒ぎ立てる。
「さっ、サインもらっていいですかっ?」
「あ、あ、ウチもウチもっ」
秋也は恥ずかしさに耐え切れず、両手で顔を覆った。
「勘弁してくれよ……」
四人の目的である晴奈は買い物に出かけており、まだ屋敷に帰っていなかったので、ともかく秋也が代わりにもてなすことになった。
「今日は晴奈に招待されたのよ。実は今日は、ある記念日なの」
客間に通された雪乃は、秋也たち三人に黄海を訪れた経緯を話した。
「記念日?」
「そう。35年前の今日、この街でわたしは、晴奈と出会ったの」
「へぇ……、そうだったんですか」
自分の母親の話になり、秋也は興味深そうな目を雪乃に向けた。
「やっぱ、会った時からすごい剣士になりそうな感じだったんですか?」
「ううん。普通の町娘だったわよ。普通の、お嬢さま」
「お、お嬢、さま?」
自分の知る母親像とは似ても似つかぬその言葉に、秋也は目を丸くした。
「ええ。今だから正直に言うけれど」
そう前置きし、雪乃は当時の晴奈について、こう評した。
「初めはお嬢さまのわがままだと思ったの。
ただ単に、退屈な毎日から現実逃避しようとして、わたしに弟子入りしようとしていた。そう思っていたわ」
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原点。
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「へぇー……、ここがコウカイなんやー」
到着したシルキスとウィルはまた、目を丸くしていた。
「でけーなぁ」
「ホンマ、ウチらの街と同じくらいとちゃうん?」
「いや、そこまでは無いと思うけど、……まあ、活気はあるよ」
秋也ははにかみつつ、自分の家へと案内した。
「ここだ」
案内された黄屋敷を見て、ウィルたちは目を丸くした。
「ココ? マジで?」
「でっかぁ」
その反応に、秋也はまたはにかみつつ肩をすくめた。
「でっかいだけだよ。中はボロだ。さ、中入って、入って」
秋也に促され、ウィルたちは屋敷の玄関を通り抜けた。
「あら?」
と、中に入ってすぐの大広間に、深い緑色をした髪のエルフが立っているのに気が付いた。
「お客さん? わたしもだけど」
エルフはウィルたちを見て、軽く頭を下げて会釈した。
「え、ああ、はい」
「どもっス」
つられて、ウィルたちも頭を下げる。
「あ、……大先生!?」
一方、二人の後ろにいた秋也はエルフを見て、慌てて前に出た。
「ご、ご無沙汰しておりましたっ!」
深々と頭を下げた秋也を見て、エルフはクスクスと笑った。
「そんな、大げさな。もっと気楽にしていいのよ、……って」
そう言って、エルフはまた笑う。
「わたし何年、同じこと言ってるのかしら。お母さんの代からずーっと言ってるのに」
「す、すみません」
「なあなあシュウヤ、この人誰なん?」
と、空気を読まずにシルキスが尋ねてくる。ウィルはくいくいとシルキスの袖を引っ張り、自重させようとする。
「静かにしてろって、シルキス」
「なんで?」
「なんでって、雰囲気違うだろが」
「そーなん?」
「……クスっ」
二人のやり取りを見ていたエルフが、また笑った。
「自己紹介させてもらうわね。わたしは焔雪乃。秋也君の先生の、先生」
「そーなんやー」
その紹介に、シルキスはふんふんと鼻を鳴らすだけだったが、ウィルの方は思い当たったらしい。
「シュウヤの先生の先生ってコトは、……コウ先生の、先生?」
「そうなるわね」
にこりと笑った雪乃に、ウィルは驚いた声を挙げた。
「ってコトは、元祖『瞬殺の女神』さんですよね!? うわあぁ……、すっげー!」
「へ? ……えーっ!? 『瞬殺の女神』!? ウソ、ホンマに!?」
「あら。闘技場のこと、知ってるの?」
「ええ! オレたち、闘技場の歴史なら何でも知ってます! うっわー、感激だっ」
興奮するウィルたちを見て、秋也は顔を赤らめた。
「お、おい……。そんな、騒ぐなよ、みっともない……」
「わたしは嬉しいわよ、秋也君。わたしの活躍、知ってくれているんだもの」
にこやかな雪乃の態度に、ウィルたちはますます騒ぎ立てる。
「さっ、サインもらっていいですかっ?」
「あ、あ、ウチもウチもっ」
秋也は恥ずかしさに耐え切れず、両手で顔を覆った。
「勘弁してくれよ……」
四人の目的である晴奈は買い物に出かけており、まだ屋敷に帰っていなかったので、ともかく秋也が代わりにもてなすことになった。
「今日は晴奈に招待されたのよ。実は今日は、ある記念日なの」
客間に通された雪乃は、秋也たち三人に黄海を訪れた経緯を話した。
「記念日?」
「そう。35年前の今日、この街でわたしは、晴奈と出会ったの」
「へぇ……、そうだったんですか」
自分の母親の話になり、秋也は興味深そうな目を雪乃に向けた。
「やっぱ、会った時からすごい剣士になりそうな感じだったんですか?」
「ううん。普通の町娘だったわよ。普通の、お嬢さま」
「お、お嬢、さま?」
自分の知る母親像とは似ても似つかぬその言葉に、秋也は目を丸くした。
「ええ。今だから正直に言うけれど」
そう前置きし、雪乃は当時の晴奈について、こう評した。
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