「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第1部
火紅狐・神代記 1
フォコの話、1話目。
金と火の毛並み。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
双月暦287年、央中東部の鉱山都市、カレイドマイン。
「う、産まれました? 産まれました!?」
その街の権力者一族、ゴールドマン家の宗主である狐獣人、レオン・ゴールドマン4世は、慌てて自分の屋敷に戻ってきた。
待望の、自分の子供が産まれたと言う連絡を受けたからである。
「はい、旦那様。かわいい男の子でございますよ」
メイドたち数人が、レオンを妻の休む部屋へと案内しつつ、産まれた子供のことを話してくれた。
「さすが、『金火狐』の血筋と言いますか」
「まるで黄金のような毛並みでございますわ」
「それに毛先はうっとりするくらい、綺麗な赤色をしていらっしゃいます」
その説明に、レオンの顔は上気していく。
「そうですか、そうですかぁ」
「ささ、旦那様。奥様がお子様とお待ちでございますよ」
メイドが部屋の扉を開け、レオンに入るよう促した。
「は、入りますで、イデア」
そっと中を覗き見ると、ベッドに横になっていた妻のイデアと目が合った。
「……クスっ」
あまりに夫の挙動がおかしかったためか、イデアは吹き出した。
「あ、……あは、はは。体の方は、大丈夫ですか?」
「ええ。疲れたけれど、元気よ。赤ちゃんも」
「……そうですかぁ」
レオンは嬉しそうに、部屋の中に入ってきた。
「赤ちゃんは?」
「こっちよ」
イデアは自分のベッドの横に置かれた、乳児用のベッドを指差した。
「……わ、あ」
メイドたちが言っていた通り、その子の耳と尻尾は麦穂のように美しい金色の毛並みをしており、毛先は燃えるように赤い。
「……うん、……僕そっくりですな、耳と尻尾は。顔は、君に似とりますね」
「そうかしら? ……そうかもね」
「名前は……、どうしましょう?」
夫の問いに、イデアはにっこりと笑って答えた。
「ニコル。ご先祖様のお名前を、いただきましょう。それと……」
「それと?」
イデアは子供の真っ赤な毛先をつい、と指先で撫でた。
「火のように赤いから……」
「フォコ?」
「……あ、そうね。こっちの言葉だと、火(fire)はフォコ(fuoco)になるのよね。
じゃあ、ニコル・フォコ・ゴールドマン。そう、名付けましょう」
「……いいですな、うん」
後に「ニコル3世」の名で知られる、英雄にして大商人。
このフォコと呼ばれる子供こそ、そのニコル3世である。
彼の波乱万丈の生涯は、ここから始まった。
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金と火の毛並み。
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1.
双月暦287年、央中東部の鉱山都市、カレイドマイン。
「う、産まれました? 産まれました!?」
その街の権力者一族、ゴールドマン家の宗主である狐獣人、レオン・ゴールドマン4世は、慌てて自分の屋敷に戻ってきた。
待望の、自分の子供が産まれたと言う連絡を受けたからである。
「はい、旦那様。かわいい男の子でございますよ」
メイドたち数人が、レオンを妻の休む部屋へと案内しつつ、産まれた子供のことを話してくれた。
「さすが、『金火狐』の血筋と言いますか」
「まるで黄金のような毛並みでございますわ」
「それに毛先はうっとりするくらい、綺麗な赤色をしていらっしゃいます」
その説明に、レオンの顔は上気していく。
「そうですか、そうですかぁ」
「ささ、旦那様。奥様がお子様とお待ちでございますよ」
メイドが部屋の扉を開け、レオンに入るよう促した。
「は、入りますで、イデア」
そっと中を覗き見ると、ベッドに横になっていた妻のイデアと目が合った。
「……クスっ」
あまりに夫の挙動がおかしかったためか、イデアは吹き出した。
「あ、……あは、はは。体の方は、大丈夫ですか?」
「ええ。疲れたけれど、元気よ。赤ちゃんも」
「……そうですかぁ」
レオンは嬉しそうに、部屋の中に入ってきた。
「赤ちゃんは?」
「こっちよ」
イデアは自分のベッドの横に置かれた、乳児用のベッドを指差した。
「……わ、あ」
メイドたちが言っていた通り、その子の耳と尻尾は麦穂のように美しい金色の毛並みをしており、毛先は燃えるように赤い。
「……うん、……僕そっくりですな、耳と尻尾は。顔は、君に似とりますね」
「そうかしら? ……そうかもね」
「名前は……、どうしましょう?」
夫の問いに、イデアはにっこりと笑って答えた。
「ニコル。ご先祖様のお名前を、いただきましょう。それと……」
「それと?」
イデアは子供の真っ赤な毛先をつい、と指先で撫でた。
「火のように赤いから……」
「フォコ?」
「……あ、そうね。こっちの言葉だと、火(fire)はフォコ(fuoco)になるのよね。
じゃあ、ニコル・フォコ・ゴールドマン。そう、名付けましょう」
「……いいですな、うん」
後に「ニコル3世」の名で知られる、英雄にして大商人。
このフォコと呼ばれる子供こそ、そのニコル3世である。
彼の波乱万丈の生涯は、ここから始まった。
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皆様お待たせしました。
新連載、スタートです。
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今日の旅岡さん

~ Comment ~
NoTitle
フォコが主人公となるのですね。
また物語を読ませていただきます。
のんびり亀ペースですけど。
よろしくお願いします。
また物語を読ませていただきます。
のんびり亀ペースですけど。
よろしくお願いします。
NoTitle
うーん、いつかメイプル関係の人から、
そう突っ込まれるんじゃないかと思っていました。
元ネタは違います。
単純にお金持ちそうな名前から取っています。
と言うか、元々この小説の原型を考えたのは、
僕がメイプル始めるずっと前からなので、単純に被っただけですね。
多分、向こうも「お金持ちっぽい」ってだけの理由で付けていると思われます。
そう突っ込まれるんじゃないかと思っていました。
元ネタは違います。
単純にお金持ちそうな名前から取っています。
と言うか、元々この小説の原型を考えたのは、
僕がメイプル始めるずっと前からなので、単純に被っただけですね。
多分、向こうも「お金持ちっぽい」ってだけの理由で付けていると思われます。
NoTitle
引き続き、ありがとうございます。
これからも、よろしくお願いします。
ホームズパロディ、毎回楽しみに読んでいます。
いつか機が来たら、ショートショートもw
これからも、よろしくお願いします。
ホームズパロディ、毎回楽しみに読んでいます。
いつか機が来たら、ショートショートもw
NoTitle
読み始めたであります。どうなるかこれから楽しみであります。
20000ヒットにたどり着くまでは、ショートショートはちょっと待っていてください(^^;) ホームズパロディに専念することにしましたので……。
20000ヒットにたどり着くまでは、ショートショートはちょっと待っていてください(^^;) ホームズパロディに専念することにしましたので……。
NoTitle
コメントありがとうございます。
お察しの通り、この子、フォコが主人公です。
いわゆる御曹司ですね。
お察しの通り、この子、フォコが主人公です。
いわゆる御曹司ですね。
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NoTitle
フォコの話もなかなかいい出来、……と思います。