「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第1部
火紅狐・神代記 3
フォコの話、3話目。
狼の母娘。
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狼の母娘。
3.
「ほれ、こっちですよー」
双月暦299年、フォコ12歳の年。
その日、レオンはイデアとフォコを連れ、カレイドマインを離れてとある街に来ていた。
「ここが、クラフトランド?」
「ええ、そうです。ネールさんとこは、向こうの方ですわ」
央中は「狐と狼の世界」と呼ばれている。この地域に住む住民の8割以上が、その二種族で構成されているからだ。
その中でも、特に力を持っていると言われるのが、レオンらゴールドマン家(金火狐/オーロラテイル)と、これから会談する狼獣人の一族、ネール家(玉銀狼/プラチナテイル)である。
ネール家はゴールドマン家と同様、古くから中央政府との取引で財を築いている。
とは言えゴールドマン家のように貴金属を供給しているのではなく、城砦や橋梁などの大掛かりな公共工事と、軍隊が使う剣や鎧などの武具発注を請け負っているのだ。
ネール家はあらゆる職人たちの元締であり、ネール家自身も武器職人の家系だった。
「よお、レオン。久しぶりだな」
ネール家の一員、ポーロ・ネールは、額の汗を拭きながら会釈した。
「お盛んですな、ポーロ。今回も剣を?」
「いやぁ、最近はもっぱら短剣造りに熱中してるんだ。どこまで小さく、かつ、切れ味を損なわずにいられるかに挑戦していてな」
「はは、相変わらず熱心なようで。……と、早速商談の話に移りましょか」
「そうだな」
レオンがこの街に来たのは、武具製造に必要な金属を販売するためである。
とは言え、それだけが目的ではない。
「……と、こんなところですな」
「ああ、よろしく頼む。
じゃ、プライベートに移るとするか。もう用意はできてるから、奥さんと子供と一緒に、母屋の方へ。姉さんももう、来てる頃だ」
「はい、どうもー」
武具製造と原料卸売と言う関係から、この頃の両家はそれなりに仲が良かった。今回は両家の親交を深めるため、ネール家の方が食事会に招待したのである。
食事会にやって来たフォコに、同年代くらいの「狼」の女の子が話しかけてきた。
「ねー、きつねさん」
「え? きつねさんて……、僕のことなん?」
普通に返したつもりだったが、女の子はきょとんとする。
「……変な話し方」
「そ、そう?」
と、女の子の頭に、誰かが後ろから手を置く。
「ゴールドマンさんたちの住む、央中東部の訛りだよ。『~やねん』とか、『~ですわ』とか、ちょっと発音が違うんだ」
女の子は、自分の頭をクシャクシャと撫でる狼獣人の女性に振り向いた。
「そうなの?」
「うちだって他の国に行けば、変わった話し方と言われるだろうさ。
……えーと君、名前は何と言うのかな?」
その狼獣人の女性はにこっと笑い、フォコに尋ねてきた。
「あ、ニコルです。ニコル・フォコ・ゴールドマンです。周りからは、フォコと呼ばれてます」
「フォコか。いい名前だな。……ほらランニャ、自己紹介しな」
ランニャと呼ばれた女の子は、ぺこりと頭を下げた。
「ランニャ・ネールです。よろしくね、フォコくん」
「あ、よろしゅう」
「しゅー?」
ランニャはきょとんとした顔で聞き返してきた。
「それも、訛り?」
「そうだよ。……と、私の自己紹介がまだだったな」
女性はフォコの頭をクシャクシャとかき混ぜるように撫でつけ、自分の名を名乗った。
「私はルピア・ネール。この子の母親だよ」
「は、はい、よろしゅう」
「うん、よろしく。さ、もう食事会が始まる。後でまた、一緒に話そう」
「はい」
フォコは家族の元に戻ろうとして、もう一度くる、とランニャの方を見た。
ランニャはルピアに手を引かれ、食卓の向かい側に座ってしまった。その隣にルピアが座ったところで、フォコはイデアにちょいちょいと手を引かれた。
「ほら、フォコ。当主さんを待たせちゃ駄目でしょう?」
「え? 当主さん? ルピアさんが?」
「そう。ルピアさんが、ネール家の当主なの。……私もさっきまで、ポーロさんがそうだと思ってたんだけどね」
フォコたちが席に座ったところで、ルピアがコップを挙げて音頭を取った。
「では、今日の食事会を始めるとしようか。互いによく食べ、よく呑み、親交を深めるとしよう。乾杯!」
「乾杯!」
「ほれ、こっちですよー」
双月暦299年、フォコ12歳の年。
その日、レオンはイデアとフォコを連れ、カレイドマインを離れてとある街に来ていた。
「ここが、クラフトランド?」
「ええ、そうです。ネールさんとこは、向こうの方ですわ」
央中は「狐と狼の世界」と呼ばれている。この地域に住む住民の8割以上が、その二種族で構成されているからだ。
その中でも、特に力を持っていると言われるのが、レオンらゴールドマン家(金火狐/オーロラテイル)と、これから会談する狼獣人の一族、ネール家(玉銀狼/プラチナテイル)である。
ネール家はゴールドマン家と同様、古くから中央政府との取引で財を築いている。
とは言えゴールドマン家のように貴金属を供給しているのではなく、城砦や橋梁などの大掛かりな公共工事と、軍隊が使う剣や鎧などの武具発注を請け負っているのだ。
ネール家はあらゆる職人たちの元締であり、ネール家自身も武器職人の家系だった。
「よお、レオン。久しぶりだな」
ネール家の一員、ポーロ・ネールは、額の汗を拭きながら会釈した。
「お盛んですな、ポーロ。今回も剣を?」
「いやぁ、最近はもっぱら短剣造りに熱中してるんだ。どこまで小さく、かつ、切れ味を損なわずにいられるかに挑戦していてな」
「はは、相変わらず熱心なようで。……と、早速商談の話に移りましょか」
「そうだな」
レオンがこの街に来たのは、武具製造に必要な金属を販売するためである。
とは言え、それだけが目的ではない。
「……と、こんなところですな」
「ああ、よろしく頼む。
じゃ、プライベートに移るとするか。もう用意はできてるから、奥さんと子供と一緒に、母屋の方へ。姉さんももう、来てる頃だ」
「はい、どうもー」
武具製造と原料卸売と言う関係から、この頃の両家はそれなりに仲が良かった。今回は両家の親交を深めるため、ネール家の方が食事会に招待したのである。
食事会にやって来たフォコに、同年代くらいの「狼」の女の子が話しかけてきた。
「ねー、きつねさん」
「え? きつねさんて……、僕のことなん?」
普通に返したつもりだったが、女の子はきょとんとする。
「……変な話し方」
「そ、そう?」
と、女の子の頭に、誰かが後ろから手を置く。
「ゴールドマンさんたちの住む、央中東部の訛りだよ。『~やねん』とか、『~ですわ』とか、ちょっと発音が違うんだ」
女の子は、自分の頭をクシャクシャと撫でる狼獣人の女性に振り向いた。
「そうなの?」
「うちだって他の国に行けば、変わった話し方と言われるだろうさ。
……えーと君、名前は何と言うのかな?」
その狼獣人の女性はにこっと笑い、フォコに尋ねてきた。
「あ、ニコルです。ニコル・フォコ・ゴールドマンです。周りからは、フォコと呼ばれてます」
「フォコか。いい名前だな。……ほらランニャ、自己紹介しな」
ランニャと呼ばれた女の子は、ぺこりと頭を下げた。
「ランニャ・ネールです。よろしくね、フォコくん」
「あ、よろしゅう」
「しゅー?」
ランニャはきょとんとした顔で聞き返してきた。
「それも、訛り?」
「そうだよ。……と、私の自己紹介がまだだったな」
女性はフォコの頭をクシャクシャとかき混ぜるように撫でつけ、自分の名を名乗った。
「私はルピア・ネール。この子の母親だよ」
「は、はい、よろしゅう」
「うん、よろしく。さ、もう食事会が始まる。後でまた、一緒に話そう」
「はい」
フォコは家族の元に戻ろうとして、もう一度くる、とランニャの方を見た。
ランニャはルピアに手を引かれ、食卓の向かい側に座ってしまった。その隣にルピアが座ったところで、フォコはイデアにちょいちょいと手を引かれた。
「ほら、フォコ。当主さんを待たせちゃ駄目でしょう?」
「え? 当主さん? ルピアさんが?」
「そう。ルピアさんが、ネール家の当主なの。……私もさっきまで、ポーロさんがそうだと思ってたんだけどね」
フォコたちが席に座ったところで、ルピアがコップを挙げて音頭を取った。
「では、今日の食事会を始めるとしようか。互いによく食べ、よく呑み、親交を深めるとしよう。乾杯!」
「乾杯!」



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今日の旅岡さん

~ Comment ~
NoTitle
いつの時代も中央政府と財閥の絡み合いはあるものですからね。
全ては金から。
まさにゴールドマン家!!
(´゚д゚`)
全ては金から。
まさにゴールドマン家!!
(´゚д゚`)
NoTitle
12歳の少年に何を求めてるんだしやたんw
多分しやたんがwktkする展開は、第2部あたりです。
それまでは特に、ガタッとなるような展開は無いです。
いや、あるかな。
多分しやたんがwktkする展開は、第2部あたりです。
それまでは特に、ガタッとなるような展開は無いです。
いや、あるかな。
NoTitle
まあ、11歳まで特筆すべきことはなかったと言うことで。
狼と狐、極端に仲が悪いか、いいかのどっちかですね。
この関係については、前作「蒼天剣」にも記述がありますので、機会があれば、是非そちらもご一読を。
次の話で触れますが、関西弁なのは「方言」、「訛り」の表現ですね。
ネール家の皆さんの場合だと、男女ともにラフで、かつ若干堅めな話し方になります。
狼と狐、極端に仲が悪いか、いいかのどっちかですね。
この関係については、前作「蒼天剣」にも記述がありますので、機会があれば、是非そちらもご一読を。
次の話で触れますが、関西弁なのは「方言」、「訛り」の表現ですね。
ネール家の皆さんの場合だと、男女ともにラフで、かつ若干堅めな話し方になります。
狼&狐
もう12歳中学生の年頃か
一気にそこまで行きましたか
狼と狐か仲良しなのかな関係は?
ネール家はどっちかというと鍛冶や大工系で商売をしているのか
武器を作る時は頼みたいものです
営業に来たのかレオンは
関西弁を取り入れてるのか
一気にそこまで行きましたか
狼と狐か仲良しなのかな関係は?
ネール家はどっちかというと鍛冶や大工系で商売をしているのか
武器を作る時は頼みたいものです
営業に来たのかレオンは
関西弁を取り入れてるのか
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いつか書く予定ですが、中央政府との付き合いは非常に古くから続いています。