fc2ブログ

黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第1部

    火紅狐・神代記 6

     ←火紅狐・神代記 5 →ドーナツカウンタ
    フォコの話、6話目。
    賢者の占い。




    6.
    「あーあー、なるほど」
     フォコの話を聞き終えた「賢者」は、コクコクとうなずいた。
    「うん、気持ちは分かる。分かる、けどもねぇ。女の子にそーゆー態度はないんじゃないね?」
    「えー……」
     魔術師はフォコの鼻先に人差し指をピンと立て、説教し始めた。
    「女の子の性分だから、そーゆーのはね。可愛いモノと気に入ったモノは、徹底的に構いたくなるもんなのさ。
     考えてご覧ね、君がこの子に嫌われてたら、絶対そんな風にあっちこっち引き回したりなんかしないだろ? 君のコト、気に入ってるんだよ」
     魔術師の言葉に、フォコは黙り込む。そしてチラ、とランニャの方に目を向けてみると――。
    (……あっ)
     ランニャは顔を真っ赤にして、うつむいていた。
    「……その、ランニャちゃん」
    「な、なに?」
    「ゴメンな」
    「えっ」
     フォコはペコリと頭を下げ、素直に謝った。
    「折角色んなところ連れてってくれてんのに、あんな怒鳴ったりなんかして」
    「……ううん、あたしもちょっと、はしゃぎ過ぎだったかも。ゴメンね」
     フォコたちの様子を見ていた魔術師は、うんうんとうなずいた。
    「よしよし、仲直りしたね。……じゃ、仲直りの記念だ。この賢者さんが一つ、占いでもしてあげるかね」
    「占い?」
     魔術師の提案に、ランニャが目を輝かせた。
    「ふっふ、そうノってくれると嬉しいね。……んじゃ、ホイっと」
     魔術師はどこからか、棒が十数本入った筒を取り出した。
    「えーと、名前は?」
    「ランニャ。ランニャ・ネール」
    「ほうほう。……ん、ホイ」
     魔術師はひょいと、筒から棒を取り出した。
    「ランニャ・ネールちゃんの運勢は……、ん、『中堅』に『平穏』、『平和』。まあまあ、穏やかな人生になりそうだね」
    「……微妙」
     口をとがらせるランニャに、魔術師は肩をすくませた。
    「ま、この2、3年はってコトさ。地道に勉強とか運動とかしてりゃ、次占った時は変わるだろうね」
    「ふーん……。じゃ、じゃ、フォコくんも占ってよ」
    「ん、よし。名前は?」
     問われて、フォコは素直に名を名乗る。
    「ニコル・フォコ・ゴールドマンです。フォコと呼ばれてます」
    「ゴールドマン?」
     その名前を聞くなり、魔術師は目を丸くした。
    「……へーぇ」
     魔術師はフォコの耳と尻尾を見て、納得したような声を漏らす。
    「どないしたんですか?」
    「……ああ、いやいや。そっか、……ふーん。ま、いいや。ホイ、っと。
     ……へ? ……っ!」
     占いの結果が出た途端に、魔術師は血相を変え、並べた棒をガシャガシャと慌ただしくしまい込んだ。
     何が出たのか分からず、フォコとランニャは尋ねる。
    「え? あの、結果……」
    「あ、う、えっと、……そうだ! 二人の相性、占ってあげようかっ」
     魔術師は何かを隠すように、突然そう提案した。その提案に、ランニャは目を輝かせる。
    「ホント? 占って占って!」
    「ああ、いいとも」
    「あの、僕の運勢……」
     フォコは尋ねようとしたが、既にランニャの関心は二人の相性に移ってしまっていた。
    「ホイ、ホイ、ホイっと。……ほほぉ」
    「どんな感じ?」
    「なかなかいいね。ま、ケンカもするけど、ランニャちゃんがフォコくんを引っ張っていくのが、一番仲良くなれるかもね」
    「ありがと、……えーと」
     そこで魔術師は、自分の名を名乗っていないことに気付いた。
    「ああ、そうだった。私はモール。モール・リッチだよ」
    「ありがと、モールさん」

     ネール邸に帰る途中、フォコはぽつりとこうつぶやいた。
    「……まあ、その」
    「んっ?」
    「僕は、そのー……、ランニャちゃんのこと、嫌いやないから」
    「あたしも大好きだよ、フォコくんのこと」
     濁したフォコに対して、ランニャは真正直に返す。
    「えっ……」
    「尻尾、キレイだもん。それに優しいし。……ねっ、フォコくん」
    「な、何?」
     ランニャはにっこり笑い、フォコの手を握りしめた。
    「ずっと、仲良くしてね?」
    「……うん」



     露店に戻ってからもずっと、モールは先程出た、フォコの占いの結果が気にかかっていた。
    (何なんだってね、あの結果……。『神童』が出たのはいい。あの子は確かに、光るものがあった。名前からして、『あの子』の子孫だろうしね。
     でもその後だ。出たのは、『艱難』と『辛苦』。滅多に出ない、凶兆の中のド凶兆。あんなもん正直に話したら、折角良い雰囲気になってたのが台無しになるところだったね。
     ……とは言え、だ。あの子は2~3年のうちに、とんでもない目に遭うらしいね。それを正直に言うべきだったかねぇ……?)



     賢者モールの占いは、よく当たる。
     この後、フォコは災いに見舞われることとなる。
     それは彼の血族を、「狐と狼の世界」を、そして世界全体を揺るがす、とてつもない大惨事の幕開けとなった。

    火紅狐・神代記 終
    関連記事


    ブログランキング・にほんブログ村へ





    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    総もくじ 3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    もくじ  3kaku_s_L.png DETECTIVE WESTERN
    もくじ  3kaku_s_L.png 短編・掌編
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png 携帯待受
    もくじ  3kaku_s_L.png 今日の旅岡さん
    総もくじ  3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    • 【火紅狐・神代記 5】へ
    • 【ドーナツカウンタ】へ

    ~ Comment ~

    NoTitle 

    モールの占い、的中率はかなり高いです。悪い予感も然り。
    ただ、フォコくん一人の時だったらズバリ言ってたかも知れません。

    NoTitle 

    確かに占いをそのまんな伝えるかどうかは不安がある。
    その的中率が良ければ良いほど悩む。
    ・・・ということはあるのでしょうね。

    占いも得てして人生相談なところがありますからね。
    否定的なことを言わないのもスキルの一つですね。

    NoTitle 

    NTR的といえばそうと言えるかも知れませんが、規模が違います。

    NoTitle 

    まさかこの年でNTRだなんてv-405

    NoTitle 

    どちらかと言うと、「巌窟王」に近いかも知れません。

    大前提として、ひとつ。
    フォコは善人ではありません。

    NoTitle 

    旧約聖書ヨブ記みたいな話になるんですか?

    ……考えすぎかわたし(^^;)
    管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    トラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【火紅狐・神代記 5】へ
    • 【ドーナツカウンタ】へ