「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第1部
火紅狐・賭罰記 2
フォコの話、8話目。
危険区域。
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危険区域。
2.
「ど、どこ行っちゃったんでしょう?」
「分からん」
フォコとポーロも、ランニャを追いかけて施設の中へ入っていた。
「この暑さ、ボーっとしてたらゆだっちゃいそうですね」
「ああ。実際、ここを歩いてるだけで倒れた奴も多い。ましてや子供なら、なおさら体にくるだろう。
……早く見つけないと、取り返しのつかんことになるかも知れん」
「は、はい」
ポーロはこの高炉のことを熟知しているし、暑さに対する対策もきちんと教えてくれた。
「濡れタオルだ。これを首に巻いておいた方がいい」
「ども」
「施設の何ヶ所かに、吸気口と放熱口がある。吸気口は外の涼しい空気を吸い込むところだから、体が熱くなってきたらそこで涼む。
逆に放熱口は危険だから、絶対に近づいちゃ駄目だ。下手すると、全身に大火傷を負うだけじゃ済まん」
道に迷っている間も、ランニャは熱に当てられ続けていた。
「出口……、どこー……?」
顔は真っ赤に染まり、目もうつろになってきている。明らかに、熱中症の症状を帯びていた。
と、どこからかゴゴゴ……、と音が聞こえてくる。
「なんだろ……? 風の音かな……」
もしかしたら外かも知れないと、ランニャは音のする方向へと歩いて行った。
「あ……、風が後ろから来てる……。ちょっと涼し、……やっぱり熱いや」
これ以上熱風を浴びるのを嫌い、ランニャは道を急ぐ。
「こっち、だよね。……ん?」
なぜか、歩けば歩くほど、背後からの追い風が強くなってくる。
「あ、これ歩くの楽かも。……でもちょっと、息苦しいな」
通路が赤ペンキで塗り潰されているのにも構わず――大人やちょっと勘のいい子供なら、そこが特に危険な場所であると、その赤ペンキで分かるが、残念ながらランニャはそうではない――ランニャは歩くのをやめない。
と、通路の先から外の音が聞こえてきた。
「あ、鳥の声。……じゃやっぱり、こっちが外なんだ」
ようやく外に出られると、ランニャが駆け足になろうとしたその時だった。
「何やってんだ、ランニャ!?」
「え、なに、なに?」
背後からいきなり、首をつかまれた。
「なに、誰? なんでつかむの?」
「当たり前だろ! この先は入っちゃダメだ!」
「なんでよ? あたし、外に行きたいの!」
「出られねーよ! この先は放熱口だ!」
ランニャの首をつかむ男――いや、少年がなだめようとするが、ランニャは聞こうとしない。
「放熱ってことは、外に熱い空気出すんでしょ? じゃ、外じゃない」
「お前、どうやって外に熱を出すか分かってんのか!? この通路よりでかい換気扇で、グイグイ吸い出してんだぞ!
お前みたいなちんちくりんがホイホイ歩いてったら、吸い込まれて細切れにされちまうぞ!」
「……あ、そうだったんだ」
そこまで説明されて、ランニャはようやく追い風の正体と、周囲が赤ペンキで塗り潰されている意味に気付いた。
少年に抱きかかえられたまま外に出たランニャの後ろから、フォコとポーロが追いかけてきた。
「ランニャ、無事だったか!」
「あ、おじさん」
ランニャが少年ごとくるりと振り向いたところで、ポーロは目を丸くした。
「ガルフ! お前が助けてくれたのか?」
「ああ。作業してたら、こいつ見かけたから。……なんでランニャを中に入れたんだよ、親父」
そう問われ、ポーロは苦い顔をした。
「いや、本当は高炉の外観だけ見せるつもりだったんだ。そしたら、ランニャが勝手に……」
「ちゃんと見とけよ、まったく……」
ガルフと呼ばれた少年は、そこでようやくランニャを放した。
「ありがと、ガルフくん」
「君付けすんなよ。俺、15だぞ。お前より全然上なんだからな」
「えへへ」
その様子を眺めていたフォコは、なぜかムカムカしてくる。
「ランニャちゃん、ちょっと?」
「ん、なーに、フォコくん?」
「なーに、ちゃうやろ? どんだけ僕とポーロさんが心配したと思てんの?」
「……あ、ゴメンね」
「ゴメンで済むと……」
フォコが声を荒げかけた、その時。
「済ますと思うか、ランニャ?」
「……ひぃ」
フォコたち4人から少し離れたところに、目を吊り上らせたルピアが立っていた。
帰宅後、ランニャはルピアに散々、叱られた。
元気一杯のランニャも、その時ばかりは流石に落ち込んでしまった。
「ど、どこ行っちゃったんでしょう?」
「分からん」
フォコとポーロも、ランニャを追いかけて施設の中へ入っていた。
「この暑さ、ボーっとしてたらゆだっちゃいそうですね」
「ああ。実際、ここを歩いてるだけで倒れた奴も多い。ましてや子供なら、なおさら体にくるだろう。
……早く見つけないと、取り返しのつかんことになるかも知れん」
「は、はい」
ポーロはこの高炉のことを熟知しているし、暑さに対する対策もきちんと教えてくれた。
「濡れタオルだ。これを首に巻いておいた方がいい」
「ども」
「施設の何ヶ所かに、吸気口と放熱口がある。吸気口は外の涼しい空気を吸い込むところだから、体が熱くなってきたらそこで涼む。
逆に放熱口は危険だから、絶対に近づいちゃ駄目だ。下手すると、全身に大火傷を負うだけじゃ済まん」
道に迷っている間も、ランニャは熱に当てられ続けていた。
「出口……、どこー……?」
顔は真っ赤に染まり、目もうつろになってきている。明らかに、熱中症の症状を帯びていた。
と、どこからかゴゴゴ……、と音が聞こえてくる。
「なんだろ……? 風の音かな……」
もしかしたら外かも知れないと、ランニャは音のする方向へと歩いて行った。
「あ……、風が後ろから来てる……。ちょっと涼し、……やっぱり熱いや」
これ以上熱風を浴びるのを嫌い、ランニャは道を急ぐ。
「こっち、だよね。……ん?」
なぜか、歩けば歩くほど、背後からの追い風が強くなってくる。
「あ、これ歩くの楽かも。……でもちょっと、息苦しいな」
通路が赤ペンキで塗り潰されているのにも構わず――大人やちょっと勘のいい子供なら、そこが特に危険な場所であると、その赤ペンキで分かるが、残念ながらランニャはそうではない――ランニャは歩くのをやめない。
と、通路の先から外の音が聞こえてきた。
「あ、鳥の声。……じゃやっぱり、こっちが外なんだ」
ようやく外に出られると、ランニャが駆け足になろうとしたその時だった。
「何やってんだ、ランニャ!?」
「え、なに、なに?」
背後からいきなり、首をつかまれた。
「なに、誰? なんでつかむの?」
「当たり前だろ! この先は入っちゃダメだ!」
「なんでよ? あたし、外に行きたいの!」
「出られねーよ! この先は放熱口だ!」
ランニャの首をつかむ男――いや、少年がなだめようとするが、ランニャは聞こうとしない。
「放熱ってことは、外に熱い空気出すんでしょ? じゃ、外じゃない」
「お前、どうやって外に熱を出すか分かってんのか!? この通路よりでかい換気扇で、グイグイ吸い出してんだぞ!
お前みたいなちんちくりんがホイホイ歩いてったら、吸い込まれて細切れにされちまうぞ!」
「……あ、そうだったんだ」
そこまで説明されて、ランニャはようやく追い風の正体と、周囲が赤ペンキで塗り潰されている意味に気付いた。
少年に抱きかかえられたまま外に出たランニャの後ろから、フォコとポーロが追いかけてきた。
「ランニャ、無事だったか!」
「あ、おじさん」
ランニャが少年ごとくるりと振り向いたところで、ポーロは目を丸くした。
「ガルフ! お前が助けてくれたのか?」
「ああ。作業してたら、こいつ見かけたから。……なんでランニャを中に入れたんだよ、親父」
そう問われ、ポーロは苦い顔をした。
「いや、本当は高炉の外観だけ見せるつもりだったんだ。そしたら、ランニャが勝手に……」
「ちゃんと見とけよ、まったく……」
ガルフと呼ばれた少年は、そこでようやくランニャを放した。
「ありがと、ガルフくん」
「君付けすんなよ。俺、15だぞ。お前より全然上なんだからな」
「えへへ」
その様子を眺めていたフォコは、なぜかムカムカしてくる。
「ランニャちゃん、ちょっと?」
「ん、なーに、フォコくん?」
「なーに、ちゃうやろ? どんだけ僕とポーロさんが心配したと思てんの?」
「……あ、ゴメンね」
「ゴメンで済むと……」
フォコが声を荒げかけた、その時。
「済ますと思うか、ランニャ?」
「……ひぃ」
フォコたち4人から少し離れたところに、目を吊り上らせたルピアが立っていた。
帰宅後、ランニャはルピアに散々、叱られた。
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