「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第1部
火紅狐・賭罰記 3
フォコの話、9話目。
罰を賭ける。
現実世界の文化を双月世界に入れる、というのをこれまで堅く自重してきましたが、
これだけはどうしても入れたくなってしまいまして。
……好きなもんで、麻雀。
勿論、ルールなどは全く違うものですが、作中の「対子」とか「連荘」とか、モロに麻雀用語を使用しています。
なんだかすみません。
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罰を賭ける。
現実世界の文化を双月世界に入れる、というのをこれまで堅く自重してきましたが、
これだけはどうしても入れたくなってしまいまして。
……好きなもんで、麻雀。
勿論、ルールなどは全く違うものですが、作中の「対子」とか「連荘」とか、モロに麻雀用語を使用しています。
なんだかすみません。
3.
「まったくお前が付いていながら……」
「……悪かった」
「もしランニャに何かあったら、どうするつもりだったんだ」
自分の愛娘を危険にさらされ、ルピアはポーロに対して怒りをぶつけていた。
「本当に、すまない」
「今度同じことをしたら、『それ』だけじゃ済まないと思えよ」
今回の失態の罰として、ポーロは頭と狼耳、尻尾を丸めさせられた。
その裸の耳と尻尾、そして叱責されしょんぼりしている姿を見て、フォコはいたたまれなくなる。
「る、ルピアさん!」
「なんだ、フォコ」
「僕も悪いんです! 僕が目、離してしもたから……」
「君は悪くないさ。まだ子供なんだからな」
「……いえ! ランニャちゃんを連れて行ったのんは、僕です。せやから僕も……」
「……そうか」
ルピアはポーロから離れ、フォコの前に屈み込んだ。
「君はつまり、責任を取りたいと。そう言うんだな」
「はい」
「責任って、分かるか?」
ルピアはきっと、フォコをにらみつける。
「君は一人の人間を危険にさらしたその罪を、負うと言うんだな?」
「……はい」
「もう一度聞くぞ。責任が、分かるか?」
「分かってる、つもりです」
「そうか」
そう言うとルピアは、机からバリカンを取り出した。
「じゃあ君も、丸刈りにするぞ」
「は、い」
ルピアはきつい顔を向けたまま、フォコの頭にバリカンを当てた。
と、その時だった。
「やめて、お母さん!」
「ランニャ」
隠れて様子をうかがっていたらしいランニャが、ルピアに飛びついてきた。
「フォコくんだましたの、あたしだもん! だまさなきゃ絶対、フォコくんはあたし見失わなかったよ!」
「……」
かばい合う子供たちを見て、ルピアは黙る。
「ルピアさん!」
「……まあ、なんだ。うん。そんなに言うなら」
ルピアはバリカンをフォコの頭から離し、もう一度机に寄る。
「チャンスをやろう」
「チャンス?」
「ポーロ、ガルフを呼んで来い」
「は、はい」
ポーロはバタバタと足音を立て、自分の息子を呼びに行く。
と、その間にルピアは机の周りに椅子を立て、机の上にカードの束を置いた。
「フォコ。『7オブ7』は知っているか?」
「へ?」
「ゲームだよ。あのカードでやるの」
ランニャが助け舟を出す。
「ゲーム? するんですか?」
「ああ。ま、賭けと言うやつだ。
私と勝負して、勝ったら今回の件は、ポーロの丸刈りだけで許してやろう。だが負けたら……」
ルピアはもう一度バリカンを手に取り、シャキシャキと鳴らした。
「フォコ。ランニャ。二人で丸刈りになってもらうからな」
ポーロが「なんで俺が親父の代わりにしなきゃなんねーんだよ……」とぼやくガルフを連れてきたところで、勝負が始まった。
「基本、こう言うカードは占いに使うやつだ。だが、どっかの賢者だか魔術師だかが、大の博打好きでな。弟子と一緒に、ゲームを考案したんだ」
机の上には、28枚のカードが並んでいる。
「カードは7種類。曜日と同じ、天・火・氷・水・雷・土・風だ。で、それがそれぞれ4枚ずつ。
これを一人につき6枚配る。で、『親』がさらに1枚引き、その7枚がこんな感じで揃っていれば、アガリだ」
ルピアはカードを引き、「火・火・火・水・水・風・風」と揃える。
「同じ種類のカードが3枚(刻子)、そして2枚組(対子)が2種類。これを揃えればアガリだ。分かるな」
「はい」
「で、アガリ方によって役が付く。それによって賭け金が倍付け、三倍付けになっていく。最大で八倍付けだ。
まず、アガれば一倍。対子が火と雷、氷と土、水と風みたいに、魔術で言う『極』になっていれば『極対子』。さっきのアガリで付いた一倍にプラス一倍され、合計二倍付けになる。
あと、こんな風に……」
ルピアはカードを並べ直し、「火・火・火・風・風・風・風」と見せる。
「同じカードが4種類並べば、『槓子』。対子2個扱いだな。これは二倍役。アガリと合わせれば三倍。
基本、『アガリの一倍付けと役の~倍付け』で、賭け金の授受を行う」
「分かりました」
「後、対子と刻子とで『極』ができていれば『極刻子』の二倍役。槓子と刻子で『極』なら、『極槓子』で三倍役。ちなみにこれは『槓子』と複合しない。
そして重要な要素がもう一つ。これだ」
ルピアは「天」と書かれたカードを引く。
「このカードが対子なら『天対子』の一倍役。刻子なら『天刻子』の二倍役。槓子なら『天槓子』でなんと三倍役だ。
で、ゲームがどう進むかだが、まず『親』番の人間が、余った4枚のカードから一枚引く。そこで手を揃え直して、一枚を隣の奴に渡す。
で、渡された奴も手を揃え直し、また隣の奴に。そうして一枚ずつ交換していって、さっき言ってた『一刻子・二対子』の形になればアガリ。
ここでもし、親が一枚引いた時点でアガリ成立なら『天和』、いきなり三倍役だ。で、一巡目の間に『子』がアガれば『地和』の二倍役。
そしてさらに」
ルピアはカードを一種類ずつ並べる。
「こうして7種類全部集まれば、『一刻子・二対子』に関係なくアガリ。『七種七枚(7オブ7)』の最高役、四倍役だ。
アガリ・天和・七種七枚と重なれば……」
「八倍付け、ってことですね」
「そう言うことだ。
そして親には『天和』の他に、もう一つ特権がある。親が上がると、『連荘』発生。その回は連荘した数の1.5倍、アガリの倍付けが変化し、引き続き同じ人間が親を受け持つ。
例えばフォコが親でアガった次の回は、もう一度フォコが親になってカードを引く。で、アガって極対子が付けば、『(アガリの一倍+極対子の一倍)×(一連荘×1.5=1.5倍)』で、合計三倍付けになる。そこでまたアガって連荘すれば、次の回は二連荘で3倍掛けになる」
「そこでまた僕が同じようにアガったら、六倍付けになる。……っちゅうことですか?」
「そう言うことだ。さ、始めようか」
ルピアはそう言うと、カードをフォコたちに配り始めた。
「まったくお前が付いていながら……」
「……悪かった」
「もしランニャに何かあったら、どうするつもりだったんだ」
自分の愛娘を危険にさらされ、ルピアはポーロに対して怒りをぶつけていた。
「本当に、すまない」
「今度同じことをしたら、『それ』だけじゃ済まないと思えよ」
今回の失態の罰として、ポーロは頭と狼耳、尻尾を丸めさせられた。
その裸の耳と尻尾、そして叱責されしょんぼりしている姿を見て、フォコはいたたまれなくなる。
「る、ルピアさん!」
「なんだ、フォコ」
「僕も悪いんです! 僕が目、離してしもたから……」
「君は悪くないさ。まだ子供なんだからな」
「……いえ! ランニャちゃんを連れて行ったのんは、僕です。せやから僕も……」
「……そうか」
ルピアはポーロから離れ、フォコの前に屈み込んだ。
「君はつまり、責任を取りたいと。そう言うんだな」
「はい」
「責任って、分かるか?」
ルピアはきっと、フォコをにらみつける。
「君は一人の人間を危険にさらしたその罪を、負うと言うんだな?」
「……はい」
「もう一度聞くぞ。責任が、分かるか?」
「分かってる、つもりです」
「そうか」
そう言うとルピアは、机からバリカンを取り出した。
「じゃあ君も、丸刈りにするぞ」
「は、い」
ルピアはきつい顔を向けたまま、フォコの頭にバリカンを当てた。
と、その時だった。
「やめて、お母さん!」
「ランニャ」
隠れて様子をうかがっていたらしいランニャが、ルピアに飛びついてきた。
「フォコくんだましたの、あたしだもん! だまさなきゃ絶対、フォコくんはあたし見失わなかったよ!」
「……」
かばい合う子供たちを見て、ルピアは黙る。
「ルピアさん!」
「……まあ、なんだ。うん。そんなに言うなら」
ルピアはバリカンをフォコの頭から離し、もう一度机に寄る。
「チャンスをやろう」
「チャンス?」
「ポーロ、ガルフを呼んで来い」
「は、はい」
ポーロはバタバタと足音を立て、自分の息子を呼びに行く。
と、その間にルピアは机の周りに椅子を立て、机の上にカードの束を置いた。
「フォコ。『7オブ7』は知っているか?」
「へ?」
「ゲームだよ。あのカードでやるの」
ランニャが助け舟を出す。
「ゲーム? するんですか?」
「ああ。ま、賭けと言うやつだ。
私と勝負して、勝ったら今回の件は、ポーロの丸刈りだけで許してやろう。だが負けたら……」
ルピアはもう一度バリカンを手に取り、シャキシャキと鳴らした。
「フォコ。ランニャ。二人で丸刈りになってもらうからな」
ポーロが「なんで俺が親父の代わりにしなきゃなんねーんだよ……」とぼやくガルフを連れてきたところで、勝負が始まった。
「基本、こう言うカードは占いに使うやつだ。だが、どっかの賢者だか魔術師だかが、大の博打好きでな。弟子と一緒に、ゲームを考案したんだ」
机の上には、28枚のカードが並んでいる。
「カードは7種類。曜日と同じ、天・火・氷・水・雷・土・風だ。で、それがそれぞれ4枚ずつ。
これを一人につき6枚配る。で、『親』がさらに1枚引き、その7枚がこんな感じで揃っていれば、アガリだ」
ルピアはカードを引き、「火・火・火・水・水・風・風」と揃える。
「同じ種類のカードが3枚(刻子)、そして2枚組(対子)が2種類。これを揃えればアガリだ。分かるな」
「はい」
「で、アガリ方によって役が付く。それによって賭け金が倍付け、三倍付けになっていく。最大で八倍付けだ。
まず、アガれば一倍。対子が火と雷、氷と土、水と風みたいに、魔術で言う『極』になっていれば『極対子』。さっきのアガリで付いた一倍にプラス一倍され、合計二倍付けになる。
あと、こんな風に……」
ルピアはカードを並べ直し、「火・火・火・風・風・風・風」と見せる。
「同じカードが4種類並べば、『槓子』。対子2個扱いだな。これは二倍役。アガリと合わせれば三倍。
基本、『アガリの一倍付けと役の~倍付け』で、賭け金の授受を行う」
「分かりました」
「後、対子と刻子とで『極』ができていれば『極刻子』の二倍役。槓子と刻子で『極』なら、『極槓子』で三倍役。ちなみにこれは『槓子』と複合しない。
そして重要な要素がもう一つ。これだ」
ルピアは「天」と書かれたカードを引く。
「このカードが対子なら『天対子』の一倍役。刻子なら『天刻子』の二倍役。槓子なら『天槓子』でなんと三倍役だ。
で、ゲームがどう進むかだが、まず『親』番の人間が、余った4枚のカードから一枚引く。そこで手を揃え直して、一枚を隣の奴に渡す。
で、渡された奴も手を揃え直し、また隣の奴に。そうして一枚ずつ交換していって、さっき言ってた『一刻子・二対子』の形になればアガリ。
ここでもし、親が一枚引いた時点でアガリ成立なら『天和』、いきなり三倍役だ。で、一巡目の間に『子』がアガれば『地和』の二倍役。
そしてさらに」
ルピアはカードを一種類ずつ並べる。
「こうして7種類全部集まれば、『一刻子・二対子』に関係なくアガリ。『七種七枚(7オブ7)』の最高役、四倍役だ。
アガリ・天和・七種七枚と重なれば……」
「八倍付け、ってことですね」
「そう言うことだ。
そして親には『天和』の他に、もう一つ特権がある。親が上がると、『連荘』発生。その回は連荘した数の1.5倍、アガリの倍付けが変化し、引き続き同じ人間が親を受け持つ。
例えばフォコが親でアガった次の回は、もう一度フォコが親になってカードを引く。で、アガって極対子が付けば、『(アガリの一倍+極対子の一倍)×(一連荘×1.5=1.5倍)』で、合計三倍付けになる。そこでまたアガって連荘すれば、次の回は二連荘で3倍掛けになる」
「そこでまた僕が同じようにアガったら、六倍付けになる。……っちゅうことですか?」
「そう言うことだ。さ、始めようか」
ルピアはそう言うと、カードをフォコたちに配り始めた。



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総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

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双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
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総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

~ Comment ~
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・・・・そういえば。
私の作品には博打要素はないですね。
作風とでもいうのかな。
それはそれで面白いと思っているのでアレですが。
こうして博打要素の作品を読むのは楽しいですね。私の作品にはない感覚で。(*^-^*)
私の作品には博打要素はないですね。
作風とでもいうのかな。
それはそれで面白いと思っているのでアレですが。
こうして博打要素の作品を読むのは楽しいですね。私の作品にはない感覚で。(*^-^*)
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それもまた、フォコくんの宿命です。