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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第1部

    火紅狐・賭罰記 4

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    フォコの話、10話目。
    対戦開始。




    4.
     カードを配りながら、ルピアは説明を続ける。
    「勝負は私とガルフ、フォコとランニャの二人組で争う。
     一人に10000点。一回の賭けは100点ずつだ。それにさっきの倍付けをしていき、点数をやり取りする。
     二順し、終わったところで対戦終了。点数の多いチームが勝ちだ。
     勿論、持ち点が0を割っても、そこで対戦は終わりだ」
    「あ、質問いいですか?」
     と、ここでフォコが手を挙げる。
    「なんだ?」
    「親の連荘って、何回までいいんですか?」
    「何回でもだ。親がアガり続ける限り、何連荘でもしていい。ああそうそう、連荘の倍付けは『子』にも有効だ。
     例えば三連荘してるところで『子』がアガれば、三連荘の4.5倍掛けはそいつに付く。
     さ、始めるぞ。まずは私が親で、フォコ、ランニャ、ガルフの順に進めていく」
     そこでルピアは余ったカードを引く。フォコとランニャ、ガルフもそれぞれ、配られた自分のカードに目をやった。
    (えっと……、『火・氷・水・雷・土・土』か。……ばらっばらやなぁ)
     と、ルピアがカードを渡してくる。
    「ほれ」
    「あ、ども」
     受け取ったのは、「水」のカードだった。
    (あ、やった。これで対子が2つになった。……何切ろう?)
     少し迷い、やがてフォコは「雷」を切った。
    (対になる『火』も一枚やしな)
     切ったカードをランニャに渡すと、ランニャはあからさまにがっかりした顔をする。
     どうやら、手持ちのカードとつながらなかったらしい。ランニャはそのまま、フォコから受け取ったカードを切った。
    「はい、ルピアさん」
     フォコやランニャにはぶっきらぼうな言葉づかいをしたガルフも、ルピアには丁寧に接している。
    「おう」
     ガルフからカードを受け取ったルピアは、ニヤっと笑う。
    「ありがとう。……そら」
     受け取ったのは「雷」。それを見て、フォコは残念がった。
    (しもたなぁ。持っとけば良かった)
     そう考えつつも、切ってしまったカードなので仕方なくランニャに渡す。ランニャの方も、持っていないのは明らかなのでそのままガルフへ向ける。
     そうして受け取ったカードを見て、ガルフはわずかに口の端を緩ませた。
    (あ……、手、いっこできてしもたみたいやな)
     ルピアにカードが一枚渡される。が、ルピアは肩をすくめ、それをそのままフォコに渡してきた。
    (お……、やった!)
     来たのは「水」である。
    (これでカードは『火・氷・水・水・水・土・土』やな。あと一枚でアガリ、やな。……じゃあ……)
     フォコは「火」のカードをランニャに渡す。ランニャも、うれしそうな顔になる。
    「はいっ、ガルフくん!」
    「おう。……チッ」
     ランニャから渡されたカードは、そのままルピアに渡る。
    「ふむ」
     続いてルピアから渡されたのは、「火」のカードだった。
    (うげっ)
     二回も切ったカードを渡され、フォコはげんなりする。
    (ま、それでもあといっこやし)
     そう思い、ランニャに「火」を渡す。とー―ランニャは困った顔をした。
    「え、……えー、と」
     ランニャは一瞬指先を迷わせ、一枚をそそくさと渡した。
    「はいっ」
    「おっ」
     受け取ったガルフは、またニヤリと笑った。
    (さっきより嬉しそうな……。ああ、あっちもあと一枚でアガリなんやな)
     と、ガルフからカードを受け取ったルピアは、先程のフォコのようなうめき声をあげた。
    「う、……むう」
     そのままカードが流される。
    (ああ……。なるほどなー)
     来たのは「火」のカード――つまり、先程ルピアが切ったカードである。
    (持っとったらアガリやった、って顔やなぁ。……じゃあルピアさんも、揃えとるんやろうな)
     とりあえず自分の待ちを再確認し、フォコは「火」をランニャに渡した。
     と――。
    「……やったぁ!」
     ランニャは嬉しそうに、カードを机に広げた。
    「アガリ! んで、槓子! 三倍付けだねっ!」
     それを見て、フォコも顔をほころばせた。
    「お~! すごいやん、ランニャちゃん!」
    「へっへー」
     反面、ルピアとガルフも、さほどショックを受けた様子はない。
    「はは、やられたな。先制されてしまった」
    「まあ、まだ300点だけですし。これから取り返して行きましょうよ」
    「勿論だ」
     この合間に、フォコはランニャにこそっと尋ねてみた。
    「なんでさっき、困った顔してたん?」
    「実はねー、『天』一枚持ってたの。で、残りは『火』2枚と『風』3枚で。そしたらフォコくん、『火』くれるんだもん。迷っちゃった」
    「『天』2枚で役付くもんなぁ」
     と、ガルフが手放したカードを見て、フォコの狐耳は毛羽立った。
    (うわっ、『天』3枚!? あっちも三倍付けやん。あっぶなぁ……。
     もしかしてガルフさん呼んだのんて、博打強いからやろか。やとしたら、……この後が怖いなぁ)
     危なげな流れに、フォコはゴクリと唾を飲んだ。

     幸先こそ良かったものの、フォコとランニャのペアはじわじわと劣勢に立たされていた。
    「ほい、アガリ。極対子と天刻子も付けて、四倍だな。ああ、連荘だから六倍か」
     前半戦の終わり際、ガルフが段々と調子付いてきた。
    「っと、またアガリだ。槓子と二連荘で、600点払いだな」
     連荘を続け、倍率がどんどん上がっていく。
    「……あ、アガリっ! 極刻子!」
     三連荘目でランニャがようやく止めたが、この時点で点数はわずかながらルピア・ガルフ組が上回っていた。
    「どうしよう、フォコくん。このままじゃあたしたち、丸坊主だよ~……」
     困った顔をするランニャに対し、ルピアが呆れた声をかける。
    「最初から、自分が罰を受けると言ったんだろう? 同じことじゃないか」
    「でも、だって、その……」
    「言い訳をするな。負けても勝っても、それを素直に受け入れろ」
    「うぐぅ~」
     一方、フォコは指折り数え、計算していた。
    (三連荘で4.5倍掛け、か。
     それ無かったら、今のランニャちゃんのアガリって、3倍だけやねんな。今アガったおかげで1350点払い、合計は4050点。それで今、3連敗しとったのんを盛り返せたわけや。
     そんなら、……いくらでもチャンスはある)
     フォコは注意深く、カードの積まれた机を眺めた。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    自分も賭け事には手を出しませんが、「カイジ」とかはよく読みます。
    その中にあった言葉ですが、「ギャンブルこそ本当の会話」だそうで。
    日常ではなかなかしない、「相手をどこまで測れるか」と真剣に考えぬくその行為が、面白みを与えてくれるのかも知れません。

    NoTitle 

    そういえば、私は本格的な賭け事をやったことがないな。。。スリルとかが伝わってきていいですね。。。って、実際には賭け事はしないですけど、賭け事は読むのには浪漫がありますね。

    NoTitle 

    ざわ・・・
         ざわ・・・

    NoTitle 

    フォコは鼻とアゴがだんだんとんがってくるv-506
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