「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第1部
火紅狐・望世記 1
フォコの話、13話目。
ネール家の秘蔵っ子。
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ネール家の秘蔵っ子。
1.
その日も、フォコとランニャは仲良く遊んでいた。
「ねーねー、今日はどうする?」
「そやねぇ……、ちょっと森の方、行ってみいひん?」
「森に? うん、行こ行こっ」
ランニャは尻尾をパタパタと震わせ、フォコの腕を取って歩き出そうとした。
と、そこにネール家の主、ルピアが声をかけた。
「いや、ランニャ。今日はあまり、遠出をしないでほしい」
「えっ?」
「ほら、今日は……」
「……あーあー!」
ランニャはポンと手を叩き、ブンブンと首を振った。
「お兄ちゃんが帰ってくる日だったよね」
「そう言うことだ。折角帰ってきたのにお前がいないんじゃ、ランドも寂しがる」
「ランド?」
「お兄ちゃんの名前」
ランニャはくるりとフォコに向き直り、説明してくれた。
「ランド・ファスタって言うの」
「ファスタ? 何で苗字……」
尋ねようとしたところで、ランニャの説明をルピアが継いだ。
「すごく頭の良い子でな、今は央北の学校に通わせている。今日は久々に、家に帰ってくる予定なんだ」
「へぇ……、そうなんですか」
ほんの少し、複雑そうな家庭の事情を感じたが、ネール母娘はそんな風に捉えていないようだ。
「久々に顔を見られるからな。今日は腕によりをかけないと」
「あ、もしかして今日の晩御飯……」
「ああ、鶏肉と卵と玉葱のピタだ」
それを聞いたランニャが、ピコピコと狼耳を揺らす。
「わーいっ」
「ふふふ、それだけじゃないぞー」
「えっ? なになに、他には?」
「塩漬けイワシとトマトとアボカドのピザも付けるっ」
「おぉ~! 今日はご馳走だね、お母さん!」
嬉しそうに跳ね回るランニャと、得意げに笑うルピアに、フォコは苗字が違うことを尋ねる気をなくした。
(なーんか……、もうええかなぁ)
その、ランドと言う息子が帰ってくるのは昼過ぎとのことだったが、時計はまだ午前の11時を回ったばかりだった。
時間が来るまで、フォコはランニャにランドのことを尋ねて――。
「でね、でねっ、今はナントカ塾って言うすごく難しいところにいるらしいの。
もうお母さんも、『あいつの頭の中は既に、私が考えられる以上のことが飛び交っている』ってさ」
「へぇ」
と言うよりも、ランニャに聞かせられていた。
「その塾なんだけどさ、何て言ったら良いのかな、もう、エリートくんばっかり揃えたとこらしいの。
央北とか央中の賢い子、お金持ちの子たちを集めた学校になってて、そこ卒業したらすぐ、官僚とか大臣候補になれるんだって」
「あ、それ聞いたことあるかも。確か、ノイマン塾?」
「そーそー、それそれ。でね、その中でもお兄ちゃんは、入ってからずーっと主席なんだって」
「ノイマン塾の……、主席ぃ?」
それを聞いて、フォコは目を丸くした。
フォコも、この塾の名は聞いたことがある。フォコの母、イデアがこの塾に在籍していたからだ。
この塾のレベルの高さについては何度も、母から伝え聞いている。ランニャの言う通り、現在中央政府に在籍している官僚の半分以上は、この塾の出身である。(余談だが、イデアはこの塾を卒業後、財政を司る財務院に入り、そこでレオンと出会って結婚した)
それだけに塾で教わる内容も、そこいらの学校とは桁違いに難しい。高い授業料を払って入塾したものの講義に付いていけず、三ヶ月と続かなかった、と言う話もよく起きている。
そんな高難易度の塾でずっと主席の座にいると言うのだから、その頭脳の質の高さは相当なものである。
「……どないしよ。変なこと言うて、笑われたりせえへんやろか」
「大丈夫、だいじょぶ」
ランニャがクスクス笑いながら、心配するフォコにウインクした。
「ちょっと変だけど、いい人だから」
その日も、フォコとランニャは仲良く遊んでいた。
「ねーねー、今日はどうする?」
「そやねぇ……、ちょっと森の方、行ってみいひん?」
「森に? うん、行こ行こっ」
ランニャは尻尾をパタパタと震わせ、フォコの腕を取って歩き出そうとした。
と、そこにネール家の主、ルピアが声をかけた。
「いや、ランニャ。今日はあまり、遠出をしないでほしい」
「えっ?」
「ほら、今日は……」
「……あーあー!」
ランニャはポンと手を叩き、ブンブンと首を振った。
「お兄ちゃんが帰ってくる日だったよね」
「そう言うことだ。折角帰ってきたのにお前がいないんじゃ、ランドも寂しがる」
「ランド?」
「お兄ちゃんの名前」
ランニャはくるりとフォコに向き直り、説明してくれた。
「ランド・ファスタって言うの」
「ファスタ? 何で苗字……」
尋ねようとしたところで、ランニャの説明をルピアが継いだ。
「すごく頭の良い子でな、今は央北の学校に通わせている。今日は久々に、家に帰ってくる予定なんだ」
「へぇ……、そうなんですか」
ほんの少し、複雑そうな家庭の事情を感じたが、ネール母娘はそんな風に捉えていないようだ。
「久々に顔を見られるからな。今日は腕によりをかけないと」
「あ、もしかして今日の晩御飯……」
「ああ、鶏肉と卵と玉葱のピタだ」
それを聞いたランニャが、ピコピコと狼耳を揺らす。
「わーいっ」
「ふふふ、それだけじゃないぞー」
「えっ? なになに、他には?」
「塩漬けイワシとトマトとアボカドのピザも付けるっ」
「おぉ~! 今日はご馳走だね、お母さん!」
嬉しそうに跳ね回るランニャと、得意げに笑うルピアに、フォコは苗字が違うことを尋ねる気をなくした。
(なーんか……、もうええかなぁ)
その、ランドと言う息子が帰ってくるのは昼過ぎとのことだったが、時計はまだ午前の11時を回ったばかりだった。
時間が来るまで、フォコはランニャにランドのことを尋ねて――。
「でね、でねっ、今はナントカ塾って言うすごく難しいところにいるらしいの。
もうお母さんも、『あいつの頭の中は既に、私が考えられる以上のことが飛び交っている』ってさ」
「へぇ」
と言うよりも、ランニャに聞かせられていた。
「その塾なんだけどさ、何て言ったら良いのかな、もう、エリートくんばっかり揃えたとこらしいの。
央北とか央中の賢い子、お金持ちの子たちを集めた学校になってて、そこ卒業したらすぐ、官僚とか大臣候補になれるんだって」
「あ、それ聞いたことあるかも。確か、ノイマン塾?」
「そーそー、それそれ。でね、その中でもお兄ちゃんは、入ってからずーっと主席なんだって」
「ノイマン塾の……、主席ぃ?」
それを聞いて、フォコは目を丸くした。
フォコも、この塾の名は聞いたことがある。フォコの母、イデアがこの塾に在籍していたからだ。
この塾のレベルの高さについては何度も、母から伝え聞いている。ランニャの言う通り、現在中央政府に在籍している官僚の半分以上は、この塾の出身である。(余談だが、イデアはこの塾を卒業後、財政を司る財務院に入り、そこでレオンと出会って結婚した)
それだけに塾で教わる内容も、そこいらの学校とは桁違いに難しい。高い授業料を払って入塾したものの講義に付いていけず、三ヶ月と続かなかった、と言う話もよく起きている。
そんな高難易度の塾でずっと主席の座にいると言うのだから、その頭脳の質の高さは相当なものである。
「……どないしよ。変なこと言うて、笑われたりせえへんやろか」
「大丈夫、だいじょぶ」
ランニャがクスクス笑いながら、心配するフォコにウインクした。
「ちょっと変だけど、いい人だから」



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