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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第1部

    火紅狐・望世記 2

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    フォコの話、14話目。
    未来に燃える青年。




    2.
     昼過ぎになり、ネール邸のドアをノックする音が聞こえてきた。
    「ん、来たかな。……今行く、待っててくれ」
     ルピアは嬉しそうに尻尾を揺らしながら、ドアを開けて迎え入れた。
    「おう、ランド。久しぶりじゃないかっ」
    「わ、ちょ、ちょっと、ルピアさん」
     ドアの前に立っていたエルフの青年は、ルピアと顔を合わせるなりクシャクシャと頭を撫でられ、辟易した声を出した。
    「さ、入れ入れ。昼飯は食べたか?」
    「あ、うん。軽く、だけど」
    「そうか。それじゃ、おやつでも……、と」
     ランドを居間に連れて来たところで、ルピアはランニャと話をしていたフォコに気が付いた。
    「そうだ、ランド。今、ゴールドマンさんのところから一人預かってるんだ。
     ほら、フォコくん。こいつが私の自慢の息子、ランド・ファスタだ」
     ルピアはそう言って、ランドの頭を下げさせた。
    「初めまして、フォコ君。ランドと言います」
    「あ、ども、ご丁寧に、ども」
     フォコも慌てて、ランドに頭を下げ返した。
    「えっと、ニコル・フォコ・ゴールドマンです。よろしゅう」
    「よろ……? ああ、東部の人だったっけ、ゴールドマン家って。
     よろしく、フォコ君」
     ランドはにっこり笑い、フォコの手をやんわりと握った。

     ルピアが持って来た干し棗を食べながら、ランドはフォコとランニャに話をした。
    「1年ぶりだからかな。随分大きくなったね、ランニャ」
    「そう? お兄ちゃんも、……また眼鏡の度、変えたでしょ」
    「ははは、ばれたか」
    「駄目だよ、それ以上悪くなっちゃ。レンズそれ以上分厚くなったら、かけらんなくなっちゃうよ?」
     そう言って、ランニャはひょいとランドの眼鏡を取り、自分の目にかけてみた。
    「……うわぁ、ひどっ」
    「かなり強くなってるからね。ほら、返して」
     ランドはクスクス笑いながら、ランニャから眼鏡を取り上げた。
    「その分だと、学業は順調のようだな」
     丁度そこに、ルピアがやってくる。
    「うん、後半年くらいで卒業。……あ、それでね」
     ランドは眼鏡をかけながら、やや興奮した口調でこう報告した。
    「中央政府の政務院から、卒業後に高級官僚の候補生として働かないかって声がかかったんだ。その……、そっちに就いても、いいかな?」
    「政務院の高級官僚? そりゃまた……、いきなりでかい椅子だな」
     ルピアは驚きつつも、満足げにうなずいた。
    「まあ、そうだな。私は大賛成だ。うちのことは、気にしなくていいからな。私の補佐は、ポーロたちがいれば問題ない。そのうちランニャも、手伝ってくれるだろうし」
    「うんうん」
     ランニャも嬉しそうにうなずき、ランドの出世を喜んだ。
     と、そこでルピアが柱時計に目をやる。
    「……おっと、もう3時か。そろそろ夕食の買出しに行くとしよう。ランニャ、ついといで」
    「はーい。あ、じゃあフォコくんも……」
     ランニャが誘おうとしたところで、なぜかランドがこう言った。
    「あ、二人きりで話、してみてもいい?」
    「え?」
     きょとんとするフォコに、ランドはにっこりと笑いかけた。
    「ちょっと興味があって。ゴールドマン家って央北でも有名な商家だから。どんな人たちなのかな、って」
    「は、あ……?」

     二人きりになったところで、ランドは色々と尋ねてきた。
    「フォコ君はまだ、12歳だっけ」
    「はい」
    「じゃあお家のこと、どれくらい分かるかな」
    「えーと……、すごく手広く商売してる、くらいしか」
     フォコは多少戸惑いつつ、応答する。
    (何を聞かはるつもりなんやろ……?)
    「お父さんは、現当主のレオン・ゴールドマンさんだよね。どんな人なの?」
    「え? えー、と、……うーん、真面目な人やと思います。正義感も強いし人をまとめるのんも上手いし、僕は尊敬しとりますよ」
    「そっか。じゃあ、お母さんのイデア・リンゴットさんは?」
    「優しい人ですよ。頭も良いですし、色んなお話をしてくれます」
    「ふむふむ……」
     ランドの質問は、ゴールドマン家に関することばかりが続く。
    「……あ、そうだ。フォコ君は、家を継ぐつもりなの?」
    「うーん」
     そう問われて、フォコは口ごもる。
    「そうですねぇ……、継ぐかも分かりません。でも僕は、そこまで優秀やとは思えませんし、他の人が継ぐんちゃうんかな、って」
    「まだ、12歳だもんね。でも僕は、継げるんじゃないかと思うよ。その歳にしては、なかなかしっかりしてるし。
     興味があれば、僕が今いる塾にも来てみなよ。きっと付いてけるはずさ」
    「いやいやいや、僕なんか……」
     謙遜するフォコの手を、ランドはぎゅっと握ってきた。
    「ふぇ?」
    「できると思うよ。期待してる」
    「は、ぁ」
     フォコは終始、戸惑いっぱなしだった。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    後述しますが、偉大なのは父親よりもご先祖様ですね。
    もっとも、それどころじゃなくなりますが。

    NoTitle 

    フォコも大変だ。
    偉大なる父親・・・を持つと名前負けをしてしまいますからね。
    父親、あるいはそれ以上の名を上げることを求められるので。

    NoTitle 

    うちのキャラは時々、倒錯的にアブないキャラがいます。
    ランドはほんのちょっと、その気が無くもないですね。
    (第5部のスルー加減ときたら……)

    ただ、彼とは比較にならないくらいイっちゃってる人もいます。
    前作「蒼天剣」に出てきた仮面のあの人が、特にドぎつい。

    NoTitle 

    うほっ、いいお兄さんv-405
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