「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第1部
火紅狐・望世記 3
フォコの話、15話目。
ルピアのロマンス。
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ルピアのロマンス。
3.
話をしているうちに、ランドは自分の理想を語り始めた。
「僕はね、憂いているんだ。今の中央政府は、乱暴者そのものだからね」
「乱暴者、ですか」
ランドは深くうなずき、熱く語る。
「考えてもみなよ。今の政治は神の名の元に、世界中の利権を好きなように操り、在野の人々に無理難題を押し付けるような形だ。
これがいいことだと、思う?」
「いや……、思わない、です」
「だろう? 僕はそれを変えて行きたいんだ」
熱っぽく語り出すランドに、フォコは辟易した表情を浮かべる。
(うわぁ……、ホンマにこの人、変わり者なんやな。変な熱の入り方しよる)
が、自分の世界に入り始めたランドは気付かない。
「まずは、政務院での地位を確立する。そこから発言力を強め、いずれは大臣に意見できるよう、立場を築いていくつもりなんだ。
それでね、君が家を継いだら、僕と君とで力を合わせて、政治・経済ともに改革を進めていこう。僕の頭脳とゴールドマン家の財力となら、それは十二分に可能なはずさ。
僕たちが変えていくんだ、この世界を」
「はあ、はい」
フォコにはそう応えるのがやっとだった。
と、そこにようやく「助け」が帰ってきた。
「ランド、その辺でいいだろう」
「え? あ、ルピアさん」
ルピアが苦笑しつつ、ランドの頭をクシャクシャとかき混ぜる。
「フォコ君が硬直している。もっと12歳の子にも分かりやすい話をしてやれよ、まったく」
「あ、うん。……ゴメンね、一人で盛り上がっちゃって」
「いえ……」
夕食が済んだところで、フォコはどうしても気になっていたことを、ランニャに尋ねてみた。
「なあ、ランニャちゃん。なんでお兄さん、苗字違うん?」
「あー、それはね。お父さんの連れ子なんだよ」
「へぇ? ほんなら、ランニャちゃんのお父さん、再婚ちゅうこと?」
「そ、そ。だからお兄ちゃんとは、半分血がつながってるの」
「そうなんや……。あ、それやったらルピアさんとは」
フォコは一瞬、台所に立っているルピアの後姿を確認し、声をひそめて尋ねた。
「血、つながってへんっちゅうこと……、やんな?」
「そだよ。ギリってやつ」
フォコが気を遣ったにもかかわらず、ランニャはあっけらかんと返した。
「……そうなんや」
まるで気に留めていない様子なので、フォコは面食らう。
(うーん……、あんまり気にせん方がええみたいやな)
と、ここでフォコはもう一つ気になっていたことを尋ねてみた。
「そう言や、ランニャちゃんのお父さんも、見たことあらへんなぁ。どうしてはるん?」
この問いにも、ランニャはさらりと答えてくれた。
「今ね、西方に行ってるらしいの。向こうの人たちと一緒に、色んなモノ造ってるんだって」
「へぇ」
「シロッコのことか?」
と、ルピアが手を拭きながら、話の輪に入ってきた。
「うんうん」
「そう言えばあいつも、長いこと帰ってきてないな。一体、どうしているやら」
そうつぶやいたルピアは、少しだけ寂しそうな表情を浮かべる。
それを見て、フォコは触れてはいけないことだったかと思い、口を抑えた。
「あ、……と」
「うん?」
フォコの表情に、ルピアは内心を悟ったらしい。
「……はは、気にするな。そのうちまた、ひょっこり戻ってくる。そう言う奴なんだ、シロッコは。
そう言う奴なのに、とっても頼りになる。……ふふ、それがまた、な」
そう言ってルピアはまた表情を変える。今度は、とても楽しそうな顔をしていた。
ルピアはニコニコと微笑みながら、シロッコと会った時の話をしてくれた。
「元々、あいつはこの街出身の職人だったんだ。物をピカピカに磨くのが何よりうまい奴で、あいつが作った鏡はかなりの高値で売れるんだ。
ま、その腕に惚れさせられたんだな。ほら」
ルピアは胸元から銀細工のブローチを取り出し、フォコたちに見せた。
「私の横顔をモチーフにしたらしいんだが、もらった瞬間に、……コロッと落ちた。
でももらった後、私が告白するより先に、旅に出てしまったんだ」
にへらにへらと笑っていたルピアが、ここで拗ねたような顔になる。
「それで何年かして、ふっと戻って来た時にはランドを連れて来た。……その上であいつから、結婚してくれと言ってきた。ふざけた話だろう?
……それでもうなずいてしまったのは、本当にあいつに惚れ込んでしまってたからなんだろうなぁ。ま、結婚して良かったと思ってるけどな」
「……顔、でれっでれしてるー」
ランニャに突っ込まれ、ルピアは「うへへ……」としまりの無い笑い方をしながら、顔を手で覆った。
話をしているうちに、ランドは自分の理想を語り始めた。
「僕はね、憂いているんだ。今の中央政府は、乱暴者そのものだからね」
「乱暴者、ですか」
ランドは深くうなずき、熱く語る。
「考えてもみなよ。今の政治は神の名の元に、世界中の利権を好きなように操り、在野の人々に無理難題を押し付けるような形だ。
これがいいことだと、思う?」
「いや……、思わない、です」
「だろう? 僕はそれを変えて行きたいんだ」
熱っぽく語り出すランドに、フォコは辟易した表情を浮かべる。
(うわぁ……、ホンマにこの人、変わり者なんやな。変な熱の入り方しよる)
が、自分の世界に入り始めたランドは気付かない。
「まずは、政務院での地位を確立する。そこから発言力を強め、いずれは大臣に意見できるよう、立場を築いていくつもりなんだ。
それでね、君が家を継いだら、僕と君とで力を合わせて、政治・経済ともに改革を進めていこう。僕の頭脳とゴールドマン家の財力となら、それは十二分に可能なはずさ。
僕たちが変えていくんだ、この世界を」
「はあ、はい」
フォコにはそう応えるのがやっとだった。
と、そこにようやく「助け」が帰ってきた。
「ランド、その辺でいいだろう」
「え? あ、ルピアさん」
ルピアが苦笑しつつ、ランドの頭をクシャクシャとかき混ぜる。
「フォコ君が硬直している。もっと12歳の子にも分かりやすい話をしてやれよ、まったく」
「あ、うん。……ゴメンね、一人で盛り上がっちゃって」
「いえ……」
夕食が済んだところで、フォコはどうしても気になっていたことを、ランニャに尋ねてみた。
「なあ、ランニャちゃん。なんでお兄さん、苗字違うん?」
「あー、それはね。お父さんの連れ子なんだよ」
「へぇ? ほんなら、ランニャちゃんのお父さん、再婚ちゅうこと?」
「そ、そ。だからお兄ちゃんとは、半分血がつながってるの」
「そうなんや……。あ、それやったらルピアさんとは」
フォコは一瞬、台所に立っているルピアの後姿を確認し、声をひそめて尋ねた。
「血、つながってへんっちゅうこと……、やんな?」
「そだよ。ギリってやつ」
フォコが気を遣ったにもかかわらず、ランニャはあっけらかんと返した。
「……そうなんや」
まるで気に留めていない様子なので、フォコは面食らう。
(うーん……、あんまり気にせん方がええみたいやな)
と、ここでフォコはもう一つ気になっていたことを尋ねてみた。
「そう言や、ランニャちゃんのお父さんも、見たことあらへんなぁ。どうしてはるん?」
この問いにも、ランニャはさらりと答えてくれた。
「今ね、西方に行ってるらしいの。向こうの人たちと一緒に、色んなモノ造ってるんだって」
「へぇ」
「シロッコのことか?」
と、ルピアが手を拭きながら、話の輪に入ってきた。
「うんうん」
「そう言えばあいつも、長いこと帰ってきてないな。一体、どうしているやら」
そうつぶやいたルピアは、少しだけ寂しそうな表情を浮かべる。
それを見て、フォコは触れてはいけないことだったかと思い、口を抑えた。
「あ、……と」
「うん?」
フォコの表情に、ルピアは内心を悟ったらしい。
「……はは、気にするな。そのうちまた、ひょっこり戻ってくる。そう言う奴なんだ、シロッコは。
そう言う奴なのに、とっても頼りになる。……ふふ、それがまた、な」
そう言ってルピアはまた表情を変える。今度は、とても楽しそうな顔をしていた。
ルピアはニコニコと微笑みながら、シロッコと会った時の話をしてくれた。
「元々、あいつはこの街出身の職人だったんだ。物をピカピカに磨くのが何よりうまい奴で、あいつが作った鏡はかなりの高値で売れるんだ。
ま、その腕に惚れさせられたんだな。ほら」
ルピアは胸元から銀細工のブローチを取り出し、フォコたちに見せた。
「私の横顔をモチーフにしたらしいんだが、もらった瞬間に、……コロッと落ちた。
でももらった後、私が告白するより先に、旅に出てしまったんだ」
にへらにへらと笑っていたルピアが、ここで拗ねたような顔になる。
「それで何年かして、ふっと戻って来た時にはランドを連れて来た。……その上であいつから、結婚してくれと言ってきた。ふざけた話だろう?
……それでもうなずいてしまったのは、本当にあいつに惚れ込んでしまってたからなんだろうなぁ。ま、結婚して良かったと思ってるけどな」
「……顔、でれっでれしてるー」
ランニャに突っ込まれ、ルピアは「うへへ……」としまりの無い笑い方をしながら、顔を手で覆った。



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